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続いたっていいじゃない!
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「タコみたいで可愛いね、花々里」
それをチラリと横目に見たらしい頼綱が、そんなことを言ってますます私を不機嫌にさせるの。
「頼綱の意地悪っ! ウナギ、続いたっていいじゃない!」
声に出して言ったら、ちょっとだけスッキリした。
「花々里、さすがに2日続けて同じのはね、どうかと思うんだよ。――けど……そうだな。代わりに」
片手でセンターコンソールに置かれていた昨日の残りの飴の袋を手にすると、「2つとも袋ごと花々里にあげよう。欲しがってたよね?」って太ももの上に載せられた。
開封済みの……桃味と、レモン味。
「昨日と同じ飴だけど、構わないだろう?」
さっき私が言った言葉の揚げ足をとるみたいにそんなことを言う頼綱をキッと睨みつけて、
「こっ、こんなんじゃ誤魔化されないんだからね!」
言いながらも、しっかりと両手で袋を抱えた。
ちゃんと持っておかないと、車にブレーキがかかって落っこちちゃったら飴がばら撒かれて大変だもの。
そ、それだけの理由なんだからね!?
私が袋を離さないのを、頼綱がどう解釈したのかは分からない。
でも彼は満足したように口の端に微かな笑みを浮かべると、何でもないことみたいに話題を変えた。
「お昼は天ぷらとかどうかな? 今の季節は菜の花とかフキノトウ、タラの芽なんかが美味いし、おすすめだよ」
言われて、天ぷら……と心の中でつぶやく。
そうして、頼綱がいま挙げたものをひとつひとつ思い浮かべて気がついた。
「野菜ばっかりじゃない!」
本当は今が旬の春野菜の天ぷらだけだって大満足なくせに、鰻の恨みでどうしても素直になれない。
「ヘルシーすぎてイヤ!」
ボソッと唇をとんがらせたまま言ったら、
「そもそも揚げ物な時点でヘルシーじゃないと思うんだけどね」
って小さく笑ってから、
「今の時期はサヨリもなかなかだよ? もちろん定番のエビやイカやホタテなんかもあるけど……魚貝類は嫌いかい?」
とか。
私に嫌いな物なんてないの、知ってそうなくせに。
「揚げたてが、いい……」
小さくポツンとつぶやいたら「保証しよう」って、今度こそ声に出してクスッと笑われた。
それをチラリと横目に見たらしい頼綱が、そんなことを言ってますます私を不機嫌にさせるの。
「頼綱の意地悪っ! ウナギ、続いたっていいじゃない!」
声に出して言ったら、ちょっとだけスッキリした。
「花々里、さすがに2日続けて同じのはね、どうかと思うんだよ。――けど……そうだな。代わりに」
片手でセンターコンソールに置かれていた昨日の残りの飴の袋を手にすると、「2つとも袋ごと花々里にあげよう。欲しがってたよね?」って太ももの上に載せられた。
開封済みの……桃味と、レモン味。
「昨日と同じ飴だけど、構わないだろう?」
さっき私が言った言葉の揚げ足をとるみたいにそんなことを言う頼綱をキッと睨みつけて、
「こっ、こんなんじゃ誤魔化されないんだからね!」
言いながらも、しっかりと両手で袋を抱えた。
ちゃんと持っておかないと、車にブレーキがかかって落っこちちゃったら飴がばら撒かれて大変だもの。
そ、それだけの理由なんだからね!?
私が袋を離さないのを、頼綱がどう解釈したのかは分からない。
でも彼は満足したように口の端に微かな笑みを浮かべると、何でもないことみたいに話題を変えた。
「お昼は天ぷらとかどうかな? 今の季節は菜の花とかフキノトウ、タラの芽なんかが美味いし、おすすめだよ」
言われて、天ぷら……と心の中でつぶやく。
そうして、頼綱がいま挙げたものをひとつひとつ思い浮かべて気がついた。
「野菜ばっかりじゃない!」
本当は今が旬の春野菜の天ぷらだけだって大満足なくせに、鰻の恨みでどうしても素直になれない。
「ヘルシーすぎてイヤ!」
ボソッと唇をとんがらせたまま言ったら、
「そもそも揚げ物な時点でヘルシーじゃないと思うんだけどね」
って小さく笑ってから、
「今の時期はサヨリもなかなかだよ? もちろん定番のエビやイカやホタテなんかもあるけど……魚貝類は嫌いかい?」
とか。
私に嫌いな物なんてないの、知ってそうなくせに。
「揚げたてが、いい……」
小さくポツンとつぶやいたら「保証しよう」って、今度こそ声に出してクスッと笑われた。
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