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おさななじみ vs. いいなずけ
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「寛道?」
あらら。何でそんな息を切らせてるのかしら。
「人が……大急ぎ、で来て……み、たら……何ぼんやり口開け、て空……見上げて、んだよ」
もう少し呼吸を整えてから話したんでよろしくってよ?
私、もう少し霜降り肉眺めてるから。
と思うのに、じっと見つめられて落ち着かない。
「――えっと……横、座る?」
とりあえず。
ぽんぽん、と自分の横――岩の上を叩きながら声をかけたら「バカか」って言われた。
酷い。
「しんどそうだったから気を遣ってあげたのに」
言ったら「そりゃどうも」って、やけに素っ気ないわね。
それにしても……。
「寛道、手ぶら?」
蓋付き容器は?と続けたら「はぁ!?」と聞き返されて。
「え? だっておばさんが作ってくれたお料理のお裾分け……」
持ってきてくれたんじゃないの?
キョトンとしたら、ムギュッと頬っぺたをつままれてしまった。
「痛い」
寛道の手をペチペチ叩きながら抗議したら、「んなもん、昨日の夜にとっくに食したわ。たわけが!」と妙に古風な口調でののしられてしまった。
きっと、すぐそばの数寄屋門の威力ね。
私も昨日、この屋敷の古式ゆかしい雰囲気に呑まれてキスを接吻って脳内変換させられたから知ってる。
げに恐ろしきかな、御神本邸っ!
「じゃあ……何の用があって来たのよ?」
それ以外に取り立てて用なんてないじゃない。
少なくとも私にはないんだけどな?
なんて思いながらさっきの仕返しに塩対応を意識して聞いたら、「バッ、おまっ……!」とか。
いまの、「バカ、お前!」って解釈で合ってますよね?
ムスッとして寛道を睨みつけたら、「――とりあえず行くぞ」っていきなり手を引っ張られて。
「え? 行くって……」
どこへ?って言おうとした矢先――。
すぐ横に黒のレクサスが停まった。
あ、まずい……。
「花々里、家の前で何をしてるのかね?」
スーッと音もなく窓が開いて、オールバックでよそ行き仕様にバッチリ決めた頼綱が顔を覗かせた。
「ひゃっ」
思わず岩の上に座っているのを咎められた気分になって、慌てて飛び降りたら、折り悪しくリュックの底が岩に引っかかってよろけてしまった。
「危ねっ」
と、すぐさま私の手を掴んでいた寛道が抱きとめてくれて、何とか転ばずに済んだ。
――んだけど……!
その瞬間、場の空気が凍りついたのを感じて。
ひー!
これ、絶対転んだ方がマシだったやつ!
あらら。何でそんな息を切らせてるのかしら。
「人が……大急ぎ、で来て……み、たら……何ぼんやり口開け、て空……見上げて、んだよ」
もう少し呼吸を整えてから話したんでよろしくってよ?
私、もう少し霜降り肉眺めてるから。
と思うのに、じっと見つめられて落ち着かない。
「――えっと……横、座る?」
とりあえず。
ぽんぽん、と自分の横――岩の上を叩きながら声をかけたら「バカか」って言われた。
酷い。
「しんどそうだったから気を遣ってあげたのに」
言ったら「そりゃどうも」って、やけに素っ気ないわね。
それにしても……。
「寛道、手ぶら?」
蓋付き容器は?と続けたら「はぁ!?」と聞き返されて。
「え? だっておばさんが作ってくれたお料理のお裾分け……」
持ってきてくれたんじゃないの?
キョトンとしたら、ムギュッと頬っぺたをつままれてしまった。
「痛い」
寛道の手をペチペチ叩きながら抗議したら、「んなもん、昨日の夜にとっくに食したわ。たわけが!」と妙に古風な口調でののしられてしまった。
きっと、すぐそばの数寄屋門の威力ね。
私も昨日、この屋敷の古式ゆかしい雰囲気に呑まれてキスを接吻って脳内変換させられたから知ってる。
げに恐ろしきかな、御神本邸っ!
「じゃあ……何の用があって来たのよ?」
それ以外に取り立てて用なんてないじゃない。
少なくとも私にはないんだけどな?
なんて思いながらさっきの仕返しに塩対応を意識して聞いたら、「バッ、おまっ……!」とか。
いまの、「バカ、お前!」って解釈で合ってますよね?
ムスッとして寛道を睨みつけたら、「――とりあえず行くぞ」っていきなり手を引っ張られて。
「え? 行くって……」
どこへ?って言おうとした矢先――。
すぐ横に黒のレクサスが停まった。
あ、まずい……。
「花々里、家の前で何をしてるのかね?」
スーッと音もなく窓が開いて、オールバックでよそ行き仕様にバッチリ決めた頼綱が顔を覗かせた。
「ひゃっ」
思わず岩の上に座っているのを咎められた気分になって、慌てて飛び降りたら、折り悪しくリュックの底が岩に引っかかってよろけてしまった。
「危ねっ」
と、すぐさま私の手を掴んでいた寛道が抱きとめてくれて、何とか転ばずに済んだ。
――んだけど……!
その瞬間、場の空気が凍りついたのを感じて。
ひー!
これ、絶対転んだ方がマシだったやつ!
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