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おさななじみ vs. いいなずけ

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 待ってろって言われても……私、家の中に戻らないと……。

 玄関開けっ放しなのよ?


 それを言いたくて折り返してみたけれど、寛道ひろみちのやつ、全然電話に出てくれなくて。

 3回ほど掛け直してみて、これ以上やったら昨日の寛道状態になっちゃう、と思って諦める。


 そっか。
 かけたのに出てもらえないのって結構精神的にくるのね。


 言いたいことがあるなら尚更だ。


 そういえば寛道ひろみち、昨夜はおばさんの手料理をうちに持ってきてくれたって言ってたよね。


 あ。
 待ってろって……。
 もしかしてそれを持ってきてくれる!?

 わーい!

 だとしたら……いい子にしてここを動かないようにしなくちゃ!


 寛道のところのおばさんの手料理、本当に美味しいのよ♪


 一人っ子のうちと違って、寛道ひろみちには彼の下にもうふたり、4つ年の離れた双子の弟がいる。


 5人分の料理を一気に作るというのは、我が家みたいに二人前ほんのちょっとしか作らない家と違って、大人数料理の旨味うまみみたいなものがある気がするの。


 うちで同じ料理を作っても、寛道のところみたいな味にはならないんだもの。


 レシピを聞いておばさんと一緒に作っても鍋を分けて二人前で作った時点で変わっちゃうというか。



 だから、柳川やながわ家からお裾分けがくるの、凄く嬉しい。
 大好き!


 キョロキョロと辺りを見回して、門横に置かれた淡い碧緑あお色の大きな岩に目をつける。

 私の腰の高さぐらいの大きさで、幅広にどーんとしたその岩は、つるんと磨かれたように丸みを帯びたフォルムで、何となく腰掛けるのにちょうど良さそうに見えた。


 門横、岩の上にせり出したように伸びる松の枝ぶりのお陰で、程よく木漏れ日もあって、居心地も良さそうで。


 門前ではあるし、そこに座るのは少し躊躇ためらわれはしたけれど、全く知らない人のやかたじゃない。
 頼綱よりつなの家だから大丈夫かな?と思ってしまった。

 ほら、一応私も家人の一人だし?

 何か言われたら「ごめんなさい」で大丈夫かな?


 岩の上に腰掛けて、足をブラブラさせながらぼんやり空を眺める。

 おぼろ雲の、刷毛はけではいたような筋が〝霜降り肉のサシ〟に見えてきた。

 あーん。

 霜降りでなくてもいいから美味しいお肉、食べたいなぁ~♪とか思っていたら、突然「々里がりっ!」と声を掛けられた。

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