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おさななじみ vs. いいなずけ

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 キョロキョロと棚を見回すと、頼綱よりつなの靴が並べられている棚の下段に、私の靴がちょこんと恥ずかしそうに並べられていた。

 ごめん!
 こんな高級そうな靴たちに囲まれてさぞや肩身が狭かったでしょう!
 ファッションセンターしまむの、一足2千円もコスパ最高マイシューズ!

 思いながら顔なじみの黒のスニーカーを手に取って、早速足を通す。


 今日は白のブラウスに、Vネックになった黒いジャンパースカートを合わせている。

 この服装なら、このスニーカーもきっと浮かないはず。


 それでもやっぱり全体のバランスが気になって、ふと視線を上げると、何この至れり尽くせりな感じ!

 玄関側に抜ける扉が、こちら側から見ると大きな姿身になっていて、全身の様子がチェックできるようになっていた。


 ん、大丈夫。

 そこに映った自分をさっと眺めてそう思って、携帯を手に小さめのリュックサックを背負い直すと、鍵を外して玄関の引き戸を開けた。


 そうして、そこでハッとする。


 あ。
 私が出たら、玄関の鍵、開けっ放しになっちゃう。

 本当はこのまましれっとお出かけして夕方まで雲隠れしてしまおうと思っていたのに、外から施錠できないとなると、それもよくない気がして。


 何だか予め鍵を渡されなかったのって、私の逃亡阻止のためだったんじゃないかと勘ぐってしまう。

 いや、まぁ実際こうやって頼綱よりつなが帰ってくる前に逃げてやろうとしてる時点で、もし本当にそういう思惑があったとしても……それはある意味先見のめいがありますね、って話なんだけど。

 うー。
 これじゃ、トンズラできない……。


 意気消沈はしたものの、まぁでもこの家の付近をちょっと散策してみるぐらいはいいよね?と思い直す。


 一瞬やっぱり八千代さんに声をお掛けしてから、とも思ったけれど、すぐに戻るし……と自分に言い聞かせて玄関を抜けた。


***

 昨夜も思ったけれど、バカみたいに広い庭を、何となくおぼろに残っている記憶を頼りに歩いていく。

 昨日は暗くてよく見えなかったけれど、思った通り。


 庭には池があって、覗いてみると高そうな錦鯉が沢山泳いでいた。
 これが全部うなぎならいいのに、とか思いつつ。


 別にそこは通らなくてもいいのだけれど、何となくやってみたくて、池に掛かったアーチ状の石橋を渡ってみることにした。

 途端、食いしん坊の鯉たちが「そこの人間、何か寄越せよ!」と口をパクパクさせながら私の後を追ってきて。

 何て食い意地の張った子たちかしら!と妙に親近感を覚えてしまった。


 今でも十分丸々と肥え太っているように見えるのに、底なしの食欲に感心しつつ。

 ――食べることしか考えてないのね。

 ふとそう思って、「ん? それって……」と思ったけど気づかないをした。
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