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湯けむりハプニング?

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「何だい?」

 存外優しい声で返事をされたことに戸惑いながら、「こ、この変な形の黄色い脳みそみたいなの、なんですか?」と、今更な問いかけ。

 スポンジだというのは分かる。でも、我が家にあるのはもっと綺麗にスパッと切られた、シャープなラインの人工的なヒョウタン型や長方形だ。

 でもこれは何だか手でちぎって丸く成型したみたいな、どこか不細工な形で。

 お金持ちのお宅でまさかそんなボロっちいスポンジなんて使っていないと思うし。だとしたら何なの?って思ってしまったの。

 本当は手渡されてすぐに聞くべきだったんだけど、タイミングを逃してしまった。

「脳みそ?」
 私の言葉を繰り返すようにつぶやいてから、頼綱よりつながこちらを振り返ってきてドキッとする。

 ふ、不用意にこっちを向かないで欲しい。
 前髪がおりてるの、見慣れてないんだしっ!

 などと自分から問いかけておきながら理不尽なことを思いつつ、「これです」と視線を彼からそらし気味にして手のふわふわを差し出した。

「ああ、海綿かいめんだよ。知らない?」

 すぐにそう答えがあって、私は海綿なら聞いたことあるんだけどな、と思って……。すぐさま自分が思い浮かべた言葉の意味に気付いて真っ赤になる。

 いや、まさか、ね。
 でも……もし何かの動物のとかだったらどうしよう!?

 さっき私、鼻歌まじりに思いっきりニギニギしまくったよ!?
 はしたないこと極まりないじゃないっ。

 思わずポロリと手から〝カイメン〟とやらを手放したら、頼綱よりつなに苦笑されてしまった。

「キミが何を考えているのか大体分かったけど、海綿と海綿体は全く別のものだからね?」

 言って、私が落としてしまった海綿を拾ってくれて。

海綿これは海の生物を原料に作られた、天然素材のスポンジだよ」

 言われて、「天然素材?」と繰り返したら「我が家のは地中海産のを使っている。まぁ、天然素材だの何だのと格好つけて言ったところで、有りていに言えば海綿という生き物のだよ」とか。

 うそ。これ、死骸なの!?

 〝脳みそ〟評価も、――何なら〝海綿体〟評価もあながち間違ってはいなかったんじゃないかと思ってしまう。

「死体って……。これ、腐ったりしたりしないんですか?」

 腐敗したら臭そうだ。そんなので身体を洗うとか考えただけでゾッとする。

「いたむような組織ところは予め腐敗そうさせて綺麗に洗浄してね、残った組織がコレらしいよ?」

 言われて、何となく手に取るのが怖くなって、恐る恐る頼綱が差し出してきた海綿に鼻を近付けて嗅いでみたら、石けんのいい香りしかしなかった。

花々里かがり
 と、不意に名前を呼ばれて鼻の頭を濡れた指先でそっとこすられて――。
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