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タダ飯ほど怖いものはないので
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どう見ても私、ピンチだと思うのに八千代さんってば「では私はそろそろお休みさせていただきます。お風呂の始末は頼綱坊ちゃまからお聞きしていただいて……よろしくお願いしますね」とスタスタと立ち去ってしまおうとするの!
ああ、待って! 八千代さん!!
行かないでっ。助けてぇぇぇーっ!
私は眉根を寄せて、八千代さんの後ろ姿に向かって必死で叫んだ。
「八千代さんっ!! とっ、鶏肉のミンチはありますかーっ!?」
――明朝使いたいのでっ。
あ、あれ、違う!!
叫ぶべきはそれじゃない。
そう思ったけれど、言った言葉は取り消せないの。
私の声に立ち止まって振り返っていらした八千代さんが、いきなり何事かときょとんとしたお顔をなさったあとで、
「――大丈夫ですよ。あったと思います。ではお休みなさい、花々里さん」
にっこり笑って立ち去ってしまった。
あああ。
私のバカ!
何でここでひき肉!
いや、もちろん材料確保も大事だけど、現状を打開した後でよかったじゃないっ。
結局、自力でどうにかするしかなくなってしまった。
「あ、あのっ。よ、り、つな、手……」
言ったら、何を思ったのかグイッと引っ張られて、彼の腕の中にスッポリ収められてしまう。
「ああ、花々里っ! ここでひき肉の心配とか! そんなに〝たけのこの鶏そぼろあん〟が食べたかったの? キミのそういうところ! 本当、最ッ高に可愛いよっ! ――大好きだ!」
なんか、今の八千代さんとのズレまくりなやり取りを気に入られてしまったみたい!?
だとしたら、みき、……よ、頼綱も大概感覚おかしいですよ!?
「いやっ、あのっ。そ、そういうのっ、正直いま、どうでもよくて……! それより何より私、手をっ! 手を離して欲しいんですっ!」
やたら感極まった様子の頼……綱……から、しれっと「大好きだ!」とか小っ恥ずかしい告白を受けた気がしなくもないけれど、この際スパーンとみんな「どうでもいい」ことに入れ込んで流してしまえっ!
そわそわしながら、腕の中で必死に彼を見上げてみるけれど、この人にはそういうのは通じないんだった。
さっきの呼び名に関しての察しのよさから考えると、わざと知らんぷりを決め込んでいるんじゃないかと言う疑惑もあるのだけれど。
「け、結婚の、お話……はとりあえずっ、ほ、保留になったはずですっ」
なのでこういうのは……。
そう続けたいのに、とても大事なものを扱うみたいに優しくギュッと力を込め直されて、何だか言えなくなってしまう。
だんだん心臓もバクバクしてくるし。なにこれ、ホント、よろしくない兆候です……よ?
おまけにあの香り。
頼綱……が動くたびに時折漂っては私を惑わせていた?、例のすごく爽やかないい匂いが身体を包み込んでくるから。
私、毒気を抜かれたみたいに力が抜けてしまったの。
お父さんを小さいころに亡くしているから、かな。
こんな風に優しく男の人に抱きしめられた経験がない私は、とにかくこういうのに耐性がないんだと、思う……。
「――お風呂、行こうか?」
だからかな。何の脈絡もなくポツンとそう言われた時、私ってばぼんやりした頭で「ん……」とうなずいてしまったの。
ああ、待って! 八千代さん!!
行かないでっ。助けてぇぇぇーっ!
私は眉根を寄せて、八千代さんの後ろ姿に向かって必死で叫んだ。
「八千代さんっ!! とっ、鶏肉のミンチはありますかーっ!?」
――明朝使いたいのでっ。
あ、あれ、違う!!
叫ぶべきはそれじゃない。
そう思ったけれど、言った言葉は取り消せないの。
私の声に立ち止まって振り返っていらした八千代さんが、いきなり何事かときょとんとしたお顔をなさったあとで、
「――大丈夫ですよ。あったと思います。ではお休みなさい、花々里さん」
にっこり笑って立ち去ってしまった。
あああ。
私のバカ!
何でここでひき肉!
いや、もちろん材料確保も大事だけど、現状を打開した後でよかったじゃないっ。
結局、自力でどうにかするしかなくなってしまった。
「あ、あのっ。よ、り、つな、手……」
言ったら、何を思ったのかグイッと引っ張られて、彼の腕の中にスッポリ収められてしまう。
「ああ、花々里っ! ここでひき肉の心配とか! そんなに〝たけのこの鶏そぼろあん〟が食べたかったの? キミのそういうところ! 本当、最ッ高に可愛いよっ! ――大好きだ!」
なんか、今の八千代さんとのズレまくりなやり取りを気に入られてしまったみたい!?
だとしたら、みき、……よ、頼綱も大概感覚おかしいですよ!?
「いやっ、あのっ。そ、そういうのっ、正直いま、どうでもよくて……! それより何より私、手をっ! 手を離して欲しいんですっ!」
やたら感極まった様子の頼……綱……から、しれっと「大好きだ!」とか小っ恥ずかしい告白を受けた気がしなくもないけれど、この際スパーンとみんな「どうでもいい」ことに入れ込んで流してしまえっ!
そわそわしながら、腕の中で必死に彼を見上げてみるけれど、この人にはそういうのは通じないんだった。
さっきの呼び名に関しての察しのよさから考えると、わざと知らんぷりを決め込んでいるんじゃないかと言う疑惑もあるのだけれど。
「け、結婚の、お話……はとりあえずっ、ほ、保留になったはずですっ」
なのでこういうのは……。
そう続けたいのに、とても大事なものを扱うみたいに優しくギュッと力を込め直されて、何だか言えなくなってしまう。
だんだん心臓もバクバクしてくるし。なにこれ、ホント、よろしくない兆候です……よ?
おまけにあの香り。
頼綱……が動くたびに時折漂っては私を惑わせていた?、例のすごく爽やかないい匂いが身体を包み込んでくるから。
私、毒気を抜かれたみたいに力が抜けてしまったの。
お父さんを小さいころに亡くしているから、かな。
こんな風に優しく男の人に抱きしめられた経験がない私は、とにかくこういうのに耐性がないんだと、思う……。
「――お風呂、行こうか?」
だからかな。何の脈絡もなくポツンとそう言われた時、私ってばぼんやりした頭で「ん……」とうなずいてしまったの。
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