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根回しがお上手ですね
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あまりに他が気になりすぎて、私、彼の〝あの時も〟という不自然な付け加えに反応できていなかった。
後で考えたら、まさにそれこそが御神本さんの私への〝餌付け〟の原点だったみたいなのに。
***
自分で言うのも何だけど、私、そんな人様から一目惚れしていただけるような恵まれた容姿はしていないと思うの。
性格だってこの通りガサツで食いしん坊だし、とてもじゃないけど御神本さんクラスのハイスペック男性に好かれる要素は皆無だと思う。
なのに――。
「第一は顔だな。俺は自分自身が思っているより、ずっと強くキミの見た目が気に入っているらしい」
え!?
嘘でしょう!?
人の好みは十人十色って言うけれど、御神本さんは随分と奇特な目をお持ちのようです。
「あとは……やっぱりその食いっぷりだな。考えてみればあの時もそうだったが、何でも美味そうに食べてくれるし、何を食わせても幸せそうな顔をする。見ていて実に清々しいよ。顔のつくりもさることながら、いまの俺はそっちに強く惹かれているな」
って……うそ! そこ!? そこなの!?
だからですかっ? 次々に美味しいもので私を誘惑してくるのはっ!
でも……。
ということは……安心して美味しい思いをしてもいいってこと!?
「わーい!」と心の中で諸手を上げて喜んでから「あ!」と思い至る。
ダメだっ。
御神本さんから離れたいなら、餌付けに歓喜して、彼の性癖を満たしたらいけないんだ!
「たっ、食べるの……やめ……」
――ておきます。
そっと、今いただいたばかりの羊羹を御神本さんに差し戻そうとして……艶々と濡れ光った目で私を見てくる?羊羹と見つめ合って?、惜しみがかかる。
結果、言葉尻が濁って最後まで言えなかったの。
なのに。
「ん? さすがにお腹一杯になってしまったかな?」
御神本さんの手がスッと伸びてきて、さっきもらったばかりのお皿を私の前から引き取ろうとして――。
「あっ、待っ……」
思わず御神本さんの手ごとお皿を引き止めてしまって、何て大胆なことをしてしまったの!とぶわりと顔が熱くなった。
「ごめ、なさっ」
慌てて手を引っ込めようとしたら、その手の上に御神本さんがもう一方の手を重ねてきて、押さえられてしまう。
「あ、あの……」
羊羹の載ったお皿を掴んだ御神本さんの右手の上に私の右手が、その私の右手の上に御神本さんの左手が……。
何この「親亀の背中に子亀を乗せて、子亀の背中に孫亀乗せて、孫亀の背中にひい孫亀乗せて、親亀こけたら、子亀孫亀ひい孫亀こけた」みたいな状態。
あ、私、左手も乗せないとダメ?
ん? ん?
ドキドキしながら御神本さんの手の上に、今や1本のみ取り残されて?仲間外れになってしまった?左手を乗せようとして、「あ、でもこれ乗せたらみんなひっくり返っちゃう!」と思って躊躇する。
と、御神本さんがクククッと喉を鳴らして笑うの。
後で考えたら、まさにそれこそが御神本さんの私への〝餌付け〟の原点だったみたいなのに。
***
自分で言うのも何だけど、私、そんな人様から一目惚れしていただけるような恵まれた容姿はしていないと思うの。
性格だってこの通りガサツで食いしん坊だし、とてもじゃないけど御神本さんクラスのハイスペック男性に好かれる要素は皆無だと思う。
なのに――。
「第一は顔だな。俺は自分自身が思っているより、ずっと強くキミの見た目が気に入っているらしい」
え!?
嘘でしょう!?
人の好みは十人十色って言うけれど、御神本さんは随分と奇特な目をお持ちのようです。
「あとは……やっぱりその食いっぷりだな。考えてみればあの時もそうだったが、何でも美味そうに食べてくれるし、何を食わせても幸せそうな顔をする。見ていて実に清々しいよ。顔のつくりもさることながら、いまの俺はそっちに強く惹かれているな」
って……うそ! そこ!? そこなの!?
だからですかっ? 次々に美味しいもので私を誘惑してくるのはっ!
でも……。
ということは……安心して美味しい思いをしてもいいってこと!?
「わーい!」と心の中で諸手を上げて喜んでから「あ!」と思い至る。
ダメだっ。
御神本さんから離れたいなら、餌付けに歓喜して、彼の性癖を満たしたらいけないんだ!
「たっ、食べるの……やめ……」
――ておきます。
そっと、今いただいたばかりの羊羹を御神本さんに差し戻そうとして……艶々と濡れ光った目で私を見てくる?羊羹と見つめ合って?、惜しみがかかる。
結果、言葉尻が濁って最後まで言えなかったの。
なのに。
「ん? さすがにお腹一杯になってしまったかな?」
御神本さんの手がスッと伸びてきて、さっきもらったばかりのお皿を私の前から引き取ろうとして――。
「あっ、待っ……」
思わず御神本さんの手ごとお皿を引き止めてしまって、何て大胆なことをしてしまったの!とぶわりと顔が熱くなった。
「ごめ、なさっ」
慌てて手を引っ込めようとしたら、その手の上に御神本さんがもう一方の手を重ねてきて、押さえられてしまう。
「あ、あの……」
羊羹の載ったお皿を掴んだ御神本さんの右手の上に私の右手が、その私の右手の上に御神本さんの左手が……。
何この「親亀の背中に子亀を乗せて、子亀の背中に孫亀乗せて、孫亀の背中にひい孫亀乗せて、親亀こけたら、子亀孫亀ひい孫亀こけた」みたいな状態。
あ、私、左手も乗せないとダメ?
ん? ん?
ドキドキしながら御神本さんの手の上に、今や1本のみ取り残されて?仲間外れになってしまった?左手を乗せようとして、「あ、でもこれ乗せたらみんなひっくり返っちゃう!」と思って躊躇する。
と、御神本さんがクククッと喉を鳴らして笑うの。
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