【完結】【R18】キス先① あなたに、キスのその先を。

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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■オマケ/限定品に弱いふたり

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修太郎しゅうたろうさん?」

 つい仄暗い自分の過去に囚われてしまっていた修太郎は、最愛の妻に不安げな顔で瞳を覗き込まれてハッとした。

「お手手洗ってこないと食べませんよ?」

 「食べませんよ」ではなく「食べませんよ」と言い切る辺りに日織ひおりらしさを感じて、修太郎は内心参ったな、と思ってしまう。


 世間ずれなど全く感じさせないふんわりとした空気をまとっていて、その年齢差のままに――いや時にそれ以上に――どこか幼く見える日織。
 だけどそんな彼女は時折こんな風に〝奥さん力〟を発揮して修太郎を戸惑わせるのだ。


 そんな彼女に、修太郎は実のところ全くもって頭が上がらない自分を自覚している。



「すみません。すぐ洗ってきます」

 言って洗面所に向かう修太郎に、日織から「中身、取り出して分けておきますね」とほんわりした春風のような声がかかった。

***

 修太郎しゅうたろうがリビングダイニングに戻ってくると、各々の注文したものをきっちり分け終えた日織ひおりがにっこり微笑んだ。

 ランチョンマットや皿までしっかり出して、綺麗に並べられたハンバーガーやポテトは、何となく脱・ファーストフードの様相を呈していて。

 こういうところも日織らしいな、と思ってしまった修太郎である。

 こんな日織さんが、移動中の車内で我慢できなくてつまみ飲み食いをしたいとおっしゃったのだから相当楽しみにしていらしたんだろうな、と思いつつ。

 それなのに修太郎が手を洗って帰ってくるまで、ソワソワしながらもシェイクに手をつけずに待っていてくれたんだと思うと、何て健気なんだろうと愛しさが募ってしまう。

 ふたりで「いただきます」をしたと同時に日織ひおりがシェイクに手を伸ばして。

 透明なフタをパカリと開ける。

 さすがに修太郎しゅうたろうを待っている間、何もせずにぼんやりしていたわけではないらしい。


「修太郎さん、これ、このスプーンマドラーでぐるぐるよぉ~くかき混ぜてから飲むみたいですっ」


 言われてみれば、容器に巻かれた「まぜるシェイク 獺祭だっさい」という文字の入った青い紙に、そんなことが書かれている。


 透明な容器の底に、半透明な部分が2センチばかりあって、バニラシェイクの層と分かれているのが分かった。

 要はその半透明な部分が獺祭だっさいエキス?で、それをしっかり攪拌かくはんさせないと意味がないということだろう。

 店舗で、「まぜるシェイク」とうたわれていた所以ゆえんか。

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