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■オマケ/限定品に弱いふたり
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と、そんな修太郎に向かって、
「私たちは夫婦なのですから、そんなにうちの両親に気を遣う必要はないのです」
日織がプーっと頬を膨らませて。
ついでのように両親にも「お父様もお母様も修太郎さんに色々バラしちゃうの、禁止なのですっ。恥ずかしいじゃないですかっ」と眉根を寄せて見せる。
それすらも修太郎にとっては本当に愛らしくて。
きっと両親の前でなければ、日織のことをギュッと抱きしめていただろう。
「――それではお嬢さんをお預かりします」
藤原夫妻へ綺麗なお辞儀とともに告げられた修太郎の言葉に、
「修太郎さんと一緒にお夕飯、久しぶりでとっても楽しみなのですっ!」
修太郎とのディナーデートに浮き足立った日織が、修太郎の腕に触れながらにっこり笑ってそう言った。
両親に、お出かけを楽しみにしてソワソワしていたのを修太郎にはバラさないで欲しかった、と唇をとがらせたのと同じ口で、結局は自らが嬉しくて堪らないと告白してしまう日織。
そんなところもまた、修太郎には堪らなく愛しく思えるのだ。
***
ネット注文していた甲斐があって、ふたりが店内カウンターでその旨を告げると、さして待たされることもなく希望の品が揃った。
会計時、「私もっ」とお財布を出そうとする日織を押し留めて修太郎が支払いを済ませたのだけれど。
「修太郎さん、私のわがままを聞いて頂いたのに申し訳ないのですっ」
商品を受け取って車に戻るなり、日織がお財布を手に眉根を寄せる。
「僕と日織さんは夫婦でしょう? 妻の食事代を夫が出すのは当然です」
言って、修太郎が日織の頭をそっと撫でた。
「ですがどうしても気になるとおっしゃるのでしたら――」
そこでチョンチョン、と自分の唇をつついて見せる修太郎に、日織がキョトンとする。
「ここにキスをお願いします」
修太郎の言葉に、日織が恥ずかしそうに車の行き交う窓外をソワソワと気にしてから、意を決したようにセンターコンソールに手をついて身を乗り出した。
そうしてそのまま修太郎の頬へチュッとかすめるようなキスを落とす。
「お、お口はっ……、修太郎さんの家についた後で許して頂きたいのです……っ」
ゴニョゴニョと語尾が消え入るような小声で告げると恥ずかしそうにうつむいてしまう。
そんな日織を見て修太郎は「仕方ないですね」と微笑んだ。
本音を言うと、指定した位置こそ違えど、今のキスだけでも修太郎には十分幸せだったのだけれど、まだしていただけると言うのならお願いしようかな、とか思ったりして。
自分は大概ずるい男だなと内心苦笑の修太郎だったのだけれど、両頬に手を当ててひゃーひゃー言っている日織は知るよしもなかった。
「私たちは夫婦なのですから、そんなにうちの両親に気を遣う必要はないのです」
日織がプーっと頬を膨らませて。
ついでのように両親にも「お父様もお母様も修太郎さんに色々バラしちゃうの、禁止なのですっ。恥ずかしいじゃないですかっ」と眉根を寄せて見せる。
それすらも修太郎にとっては本当に愛らしくて。
きっと両親の前でなければ、日織のことをギュッと抱きしめていただろう。
「――それではお嬢さんをお預かりします」
藤原夫妻へ綺麗なお辞儀とともに告げられた修太郎の言葉に、
「修太郎さんと一緒にお夕飯、久しぶりでとっても楽しみなのですっ!」
修太郎とのディナーデートに浮き足立った日織が、修太郎の腕に触れながらにっこり笑ってそう言った。
両親に、お出かけを楽しみにしてソワソワしていたのを修太郎にはバラさないで欲しかった、と唇をとがらせたのと同じ口で、結局は自らが嬉しくて堪らないと告白してしまう日織。
そんなところもまた、修太郎には堪らなく愛しく思えるのだ。
***
ネット注文していた甲斐があって、ふたりが店内カウンターでその旨を告げると、さして待たされることもなく希望の品が揃った。
会計時、「私もっ」とお財布を出そうとする日織を押し留めて修太郎が支払いを済ませたのだけれど。
「修太郎さん、私のわがままを聞いて頂いたのに申し訳ないのですっ」
商品を受け取って車に戻るなり、日織がお財布を手に眉根を寄せる。
「僕と日織さんは夫婦でしょう? 妻の食事代を夫が出すのは当然です」
言って、修太郎が日織の頭をそっと撫でた。
「ですがどうしても気になるとおっしゃるのでしたら――」
そこでチョンチョン、と自分の唇をつついて見せる修太郎に、日織がキョトンとする。
「ここにキスをお願いします」
修太郎の言葉に、日織が恥ずかしそうに車の行き交う窓外をソワソワと気にしてから、意を決したようにセンターコンソールに手をついて身を乗り出した。
そうしてそのまま修太郎の頬へチュッとかすめるようなキスを落とす。
「お、お口はっ……、修太郎さんの家についた後で許して頂きたいのです……っ」
ゴニョゴニョと語尾が消え入るような小声で告げると恥ずかしそうにうつむいてしまう。
そんな日織を見て修太郎は「仕方ないですね」と微笑んだ。
本音を言うと、指定した位置こそ違えど、今のキスだけでも修太郎には十分幸せだったのだけれど、まだしていただけると言うのならお願いしようかな、とか思ったりして。
自分は大概ずるい男だなと内心苦笑の修太郎だったのだけれど、両頬に手を当ててひゃーひゃー言っている日織は知るよしもなかった。
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