【完結】【R18】キス先① あなたに、キスのその先を。

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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■タイミングが合わないのですっ!■

ズレているふたり5

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 言ったら、
「あなたに最高の状態で結婚式に望んでいただきたいからに決まっているじゃないですか。妊娠してしまったら……ドレス、好きなの着られなくなるかもしれませんよ? つわりが酷かったら美味しいお料理が出てきても、きっと楽しめませんよ?」

 もっともなことを言われて、私、グッと言葉に詰まりました。

「あの……もしかして……お父様が同棲に反対なさってるのって――」

「もちろん、日織ひおりさんがそうなってしまうことを防ぐためです。僕があなたに対して人並外れて貪欲なこと、お義父とうさんにはバレバレなんですよ。――それこそ……下手したら日織さんご自身よりご存知かもしれません」

 って――。
 私……やっぱり世間知らずのおバカさんでしたっ。

 お父様が入籍を済ませた私たちをかたくなに一緒に住まわせてくださらなかった理由が、まさかおめでたを回避するためだったなんてっ!
 私、思いもよらなかったのですっ。
 何ならその思いを踏みにじろうとしていたくらいの、親不孝者の不良娘だったとかっ。

「しゅ……たろぉ、さん」

 私は恐る恐る修太郎しゅうたろうさんを見つめます。

「はい」

 その視線をすぐ間近で受け止めてくださる修太郎さんにホッとしながら、私、言いました。

「赤ちゃんは……今は諦めます……。でも……ギュッてしていただくタイミングに関しては……私……諦めたくないのです」

 そこまで言って、私の胸元のボタンに掛かったままの修太郎さんの手にそっと手を重ねます。

 そうしてはっきりと言いました。

「だからそれに関しては……今度から2人でちゃんとお互いの気持ちをすり合わせて……タイミングを合わせていきましょう。よろしいですよね?」

 途端修太郎さんが大きく瞳を見開かれたのが分かりました。

 そうしてややしてから、
「し、気持ちって……」
 そうつぶやいてお顔を軽く覆っていらしてから、
「僕は時々日織ひおりさんの“恥ずかしいの基準”が分からなくなります」
 と小さく吐き出していらして。

「今の発言より、一緒にお風呂に入りましょう、の方が恥ずかしくない、とか思ったりなさいませんか?」
 って問いかけていらっしゃるのです。

 修太郎さんのそのお言葉に、私は「ん?」って小首をかしげたのですけれど……。

 どう考えても、恥ずかしいのはお風呂の打診の方……です、よ、ね?

 ん? ん? ん?

 ズレているのは私?
 それとも修太郎さん?

 あの……どっちですか――?


   END(2020/10/16~10/17)

 
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