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■タイミングが合わないのですっ!■

磨りガラス越しの会話1

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 挙式をすませるまでは私、修太郎しゅうたろうさんと一緒に暮らすことはできないのだと言われてしまいました。

 お父様がそれだけは絶対にダメだとおっしゃって、決して許してくださらないのです。
 入籍はお許しくださったのに、変なお父様。

 修太郎さんは私との入籍の条件だったこともあって、得心がいったご様子でお父様に逆らったりなさいませんが、私はひとり納得がいかないのです。

 夫婦なのに別々に暮らしているのって変じゃないですか?

 お式さえすませれば、こんなチグハグな夫婦生活にも終止符ピリオドが打てるらしいのですが、私の誕生日にほど近い6月の挙式予定日まではまだ間があって。
 修太郎さんと2人、準備は着々と進めてはいますが、待ち遠しくてたまらないのです。

 いっそのこと赤ちゃんでもできてしまえばお父様だって同居を認めざるを得ないのでは?と思うのですが、修太郎さんはそれだけはダメだとおっしゃって。
 さっぱり意味がわからないのですっ!

 でもお父様も鬼じゃありません。

 修太郎さんがお願いすれば、ちゃんと私、彼のお家にお泊まりに来られます。

 でも――。

***

 何故なのでしょう! 今日もタイミングが合わなかったのですっ!

 湯船に口元まで浸かって、怒ったカニみたいにブクブクと泡を吐き出しながら、私は懸命に敗因を模索します。

 だって、今日こそはって思っていたのです。

 それで、わざわざお家からお気に入りの桃の香りのボディソープや、シャンプー、コンディショナーを持参して……。
 なのになんで! 私はその香りに包まれているのでしょう!

「修太郎さんはおバカさんなのです……」

 水の中、ブクブク混じりにつぶやいたら、脱衣所から声がかかりました。

日織ひおりさん、何かおっしゃいましたか?」

 それと同時に磨りガラスに修太郎さんのシルエットが映って、私はお湯の中でパシャリと飛び跳ねました。

「ひゃっ。な、何でもないのですっ。お、お気になさらないでくださいっ」

 言ってはみたものの、今にも扉が開くのではないかというドキドキに、視線が薄らぼんやりとした修太郎さんのひとかげから外せなくて。

 何度肌を重ねても、私はやっぱり彼とお風呂というハードルは未だ越えられずにいるのです。
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