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■いただいちゃっても、いいですか?■
待ち合わせ
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バレンタインデー当日。
僕は日織さんを、僕の家にお泊めする許可をちゃんとご両親から取り付けることができた。
今回は一泊だけ、と念押しされてしまって、金曜の夜に一泊なさった日織さんを、土曜の夜までにはご自宅へお返ししなくてはならない。
戸籍の上では僕の妻なのに、と思うと何とももどかしい思いが込み上げるけれど、こればっかりは入籍を急がせていただいた際の絶対条件のひとつだから我慢するしかない。
早く先方のご両親の譲れない挙式――日織さんの花嫁姿のお披露目――をすませてしまいたい、と思う程度には僕は現状に焦燥感を覚えている。
だってそうだろう?
「修太郎さんっ!」
そう、僕の名を呼びながら駆けてくる日織さんの愛らしさと言ったら!
今日の日織さんは、ダークグレイのジャンパースカートを、首元がスカラップ・ネックになった白いニットに合わせていらした。頭には雪うさぎみたいなふわふわのベレー帽。それに、もこもことしたボア素材の上着を着ていらっしゃるのが、小動物みたいな愛らしさを添えていて凶悪に愛しくて。足元がカジュアルなスニーカーなのも、小さな彼女をさらに小ぢんまりと見せていて、思わず抱きしめたくなる可憐さだった。
服装もさることながら、どこか隙だらけで危なっかしい雰囲気が相まって、僕は日織さんから片時も目が離せなくなる。
名ばかりの入籍だけで彼女を縛っておけるとは、僕には到底思えない。
一日も早く自分のそばに置いて、僕がいない間は部屋から出られないように閉じ込めてしまいたい、とさえ思ってしまう。そうしなければ、すぐに悪い虫がついてしまいそうだ。
よく今まで誰にも手をつけられることなく、無事でいられたな、と思う。
そう考えると、彼女を守り育ててくださったご両親に、心の底から感謝の念が溢れた。
***
今日はご自宅までお迎えにあがります、とお伝えしたのに、少し離れた公園前で待ち合わせがしたいです、ダメですか?と可愛くごねられてしまった。
結局根負けしてしまう形で渋々OKを出したのだけれど。こんな風に僕を見て嬉しそうに走り寄って来られたりしたら、外での待ち合わせも悪くないな、と思ってしまうじゃないか。
本当は彼女を一人で外に出すのは嫌なのに、この相反する気持ちはどう折り合いをつけたらいいのだろう。
だが、確実に言えるのは、日織さんのご実家へお迎えに伺ったのでは、ここまで弾けた嬉しそうな様子は見ることは敵わなかった、ということだ。
天真爛漫にしか見えない彼女も、一応、ご両親の前では甘えにセーブをかけていらっしゃるらしい。
「日織さん、今日も本当に素敵です」
日織さんを両腕に抱きしめながら、僕は幸せすぎて心臓がギュッ、と苦しくなる。
と、ふと甘い香りが鼻先を掠めて、僕は彼女のそばですんすんと鼻を鳴らした。
「もぉー、修太郎さんったら、ワンちゃんみたいですよ?」
途端、日織さんにたしなめられてしまう。それでもどうしても気になるこの美味しそうな香り。
如何にも私を食べて?と言われているみたいな魅惑の香りに、僕は釘付けだ。
「日織さんから、甘くて美味しそうな香りがします」
素直にそう言ったら、日織さんが真っ赤になっていらして。
本当になんて愛らしいんだろう。
ここが公道でなければ、今すぐにでも食べてしまいたいところだ。
「日織さん、早く家に帰りましょう」
僕ははやる気持ちを抑えながら、彼女を車に誘った。
僕は日織さんを、僕の家にお泊めする許可をちゃんとご両親から取り付けることができた。
今回は一泊だけ、と念押しされてしまって、金曜の夜に一泊なさった日織さんを、土曜の夜までにはご自宅へお返ししなくてはならない。
戸籍の上では僕の妻なのに、と思うと何とももどかしい思いが込み上げるけれど、こればっかりは入籍を急がせていただいた際の絶対条件のひとつだから我慢するしかない。
早く先方のご両親の譲れない挙式――日織さんの花嫁姿のお披露目――をすませてしまいたい、と思う程度には僕は現状に焦燥感を覚えている。
だってそうだろう?
「修太郎さんっ!」
そう、僕の名を呼びながら駆けてくる日織さんの愛らしさと言ったら!
今日の日織さんは、ダークグレイのジャンパースカートを、首元がスカラップ・ネックになった白いニットに合わせていらした。頭には雪うさぎみたいなふわふわのベレー帽。それに、もこもことしたボア素材の上着を着ていらっしゃるのが、小動物みたいな愛らしさを添えていて凶悪に愛しくて。足元がカジュアルなスニーカーなのも、小さな彼女をさらに小ぢんまりと見せていて、思わず抱きしめたくなる可憐さだった。
服装もさることながら、どこか隙だらけで危なっかしい雰囲気が相まって、僕は日織さんから片時も目が離せなくなる。
名ばかりの入籍だけで彼女を縛っておけるとは、僕には到底思えない。
一日も早く自分のそばに置いて、僕がいない間は部屋から出られないように閉じ込めてしまいたい、とさえ思ってしまう。そうしなければ、すぐに悪い虫がついてしまいそうだ。
よく今まで誰にも手をつけられることなく、無事でいられたな、と思う。
そう考えると、彼女を守り育ててくださったご両親に、心の底から感謝の念が溢れた。
***
今日はご自宅までお迎えにあがります、とお伝えしたのに、少し離れた公園前で待ち合わせがしたいです、ダメですか?と可愛くごねられてしまった。
結局根負けしてしまう形で渋々OKを出したのだけれど。こんな風に僕を見て嬉しそうに走り寄って来られたりしたら、外での待ち合わせも悪くないな、と思ってしまうじゃないか。
本当は彼女を一人で外に出すのは嫌なのに、この相反する気持ちはどう折り合いをつけたらいいのだろう。
だが、確実に言えるのは、日織さんのご実家へお迎えに伺ったのでは、ここまで弾けた嬉しそうな様子は見ることは敵わなかった、ということだ。
天真爛漫にしか見えない彼女も、一応、ご両親の前では甘えにセーブをかけていらっしゃるらしい。
「日織さん、今日も本当に素敵です」
日織さんを両腕に抱きしめながら、僕は幸せすぎて心臓がギュッ、と苦しくなる。
と、ふと甘い香りが鼻先を掠めて、僕は彼女のそばですんすんと鼻を鳴らした。
「もぉー、修太郎さんったら、ワンちゃんみたいですよ?」
途端、日織さんにたしなめられてしまう。それでもどうしても気になるこの美味しそうな香り。
如何にも私を食べて?と言われているみたいな魅惑の香りに、僕は釘付けだ。
「日織さんから、甘くて美味しそうな香りがします」
素直にそう言ったら、日織さんが真っ赤になっていらして。
本当になんて愛らしいんだろう。
ここが公道でなければ、今すぐにでも食べてしまいたいところだ。
「日織さん、早く家に帰りましょう」
僕ははやる気持ちを抑えながら、彼女を車に誘った。
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