170 / 233
■私を優しく包み込んで■
シプレ系
しおりを挟む
修太郎さんにくっつくと、彼がつけている香水の香りが私にも移ってくる。
身嗜みのひとつに香りまで取り入れておられる、そういう修太郎さんのお洒落さに、私は大人の男性の色香を垣間見てしまう。
「私、修太郎さんの香り、大好きです」
ともすると、くさいと感じてしまうかもしれない香水を、修太郎さんはほんの少しふわっと香ってくる程度に抑えた上品な使い方をなさる。
お仕事の日でも休日でも、何かの拍子に思い出したように漂ってくる、その柑橘系に近いような、ウッディーで大人なにおいに、私はいつもときめかされてしまう。
香りと言うのは不思議なもので、目には見えないけれど確かにそこに存在していて……しかも凄く存在感がある。
「香水の話ですか?」
腕の中に私を抱きしめたまま、修太郎さんが問いかけていらした。
***
今日は休日で、私は修太郎さんのお宅へお邪魔していた。
ここにくるのはあの飲み会後初めてなので、少し緊張している。
眼鏡を外して裸眼になられた修太郎さんが、ソファに腰掛けて、私においでおいでをなさる。
そんな彼に恐る恐る近づいたら、手を引っ張られて彼の開いた足の間にストン、と座らされてしまった。
斜めに引っ張られたので、背中を彼に向けて座ったわけではなくて、横座りみたいに。
私は座ったはずみで乱れてしまったスカートを慌てて整える。
「こうしていると初めてお会いした日を思い出しますね」
言いながら、「もっともあの日、日織さんは足の間ではなく、僕の腿の上に載っていらしたんですが。――今日もそうなさいますか?」と付け加えてクスクスと笑っていらっしゃる。
「そ、それは恥ずかしいです……」
じかに座れば、彼の肌のぬくもりをより直接的に感じてしまう。それに、何より――。
「日織さんのお尻の感触を味わいたかったのに、残念です」
だっ、だから無理なんですっ。
エッチなことをおっしゃる修太郎さんのほうを見上げて、彼を睨みつけようとしたら、顎を捕らえられてそのまま唇を塞がれた。
「んっ」
未だキスの初動で戸惑ってしまう私に、修太郎さんは優しく角度を変えては浅い口付けを繰り返す。
私が慣れてきたのを見計らったように、彼の舌が口の中に入ってきた。
修太郎さんに翻弄されながら、その感触を追うように彼の求めに応じているうちに、自然と呼吸が出来るようになる。
私はまだまだキスが下手だけれど、それでも苦しくて息を詰まらせることはなくなった。
「お上手です」
私の唇を濡れ光らせる唾液を指先でそっと拭われてから、修太郎さんが満足げに微笑まれた。
***
「私、修太郎さんの香り、大好きです」
照れ隠しのように、彼の笑顔を見つめながらうっとりとそう言うと、「香水の話ですか?」と問いかけられた。
「僕が使っているのはあれです」
修太郎さんが指差された先を見ると、黒い小瓶が見えた。
「ブルー ドゥ シャネル?」
目を凝らして瓶に書かれた文字を追えば、
「よく読めました」
くしゃくしゃと頭を撫でられた。
「もうっ。子ども扱いは……イヤですっ」
ぷぅっと頬を膨らませて抗議したら、
「すみません。では、日織さんのお望み通り、大人の扱いをいたしましょう」
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた修太郎さんに、ソファへ押し倒された。
私を、修太郎さんが纏うシプレ系の香水が包み込んだ。
身嗜みのひとつに香りまで取り入れておられる、そういう修太郎さんのお洒落さに、私は大人の男性の色香を垣間見てしまう。
「私、修太郎さんの香り、大好きです」
ともすると、くさいと感じてしまうかもしれない香水を、修太郎さんはほんの少しふわっと香ってくる程度に抑えた上品な使い方をなさる。
お仕事の日でも休日でも、何かの拍子に思い出したように漂ってくる、その柑橘系に近いような、ウッディーで大人なにおいに、私はいつもときめかされてしまう。
香りと言うのは不思議なもので、目には見えないけれど確かにそこに存在していて……しかも凄く存在感がある。
「香水の話ですか?」
腕の中に私を抱きしめたまま、修太郎さんが問いかけていらした。
***
今日は休日で、私は修太郎さんのお宅へお邪魔していた。
ここにくるのはあの飲み会後初めてなので、少し緊張している。
眼鏡を外して裸眼になられた修太郎さんが、ソファに腰掛けて、私においでおいでをなさる。
そんな彼に恐る恐る近づいたら、手を引っ張られて彼の開いた足の間にストン、と座らされてしまった。
斜めに引っ張られたので、背中を彼に向けて座ったわけではなくて、横座りみたいに。
私は座ったはずみで乱れてしまったスカートを慌てて整える。
「こうしていると初めてお会いした日を思い出しますね」
言いながら、「もっともあの日、日織さんは足の間ではなく、僕の腿の上に載っていらしたんですが。――今日もそうなさいますか?」と付け加えてクスクスと笑っていらっしゃる。
「そ、それは恥ずかしいです……」
じかに座れば、彼の肌のぬくもりをより直接的に感じてしまう。それに、何より――。
「日織さんのお尻の感触を味わいたかったのに、残念です」
だっ、だから無理なんですっ。
エッチなことをおっしゃる修太郎さんのほうを見上げて、彼を睨みつけようとしたら、顎を捕らえられてそのまま唇を塞がれた。
「んっ」
未だキスの初動で戸惑ってしまう私に、修太郎さんは優しく角度を変えては浅い口付けを繰り返す。
私が慣れてきたのを見計らったように、彼の舌が口の中に入ってきた。
修太郎さんに翻弄されながら、その感触を追うように彼の求めに応じているうちに、自然と呼吸が出来るようになる。
私はまだまだキスが下手だけれど、それでも苦しくて息を詰まらせることはなくなった。
「お上手です」
私の唇を濡れ光らせる唾液を指先でそっと拭われてから、修太郎さんが満足げに微笑まれた。
***
「私、修太郎さんの香り、大好きです」
照れ隠しのように、彼の笑顔を見つめながらうっとりとそう言うと、「香水の話ですか?」と問いかけられた。
「僕が使っているのはあれです」
修太郎さんが指差された先を見ると、黒い小瓶が見えた。
「ブルー ドゥ シャネル?」
目を凝らして瓶に書かれた文字を追えば、
「よく読めました」
くしゃくしゃと頭を撫でられた。
「もうっ。子ども扱いは……イヤですっ」
ぷぅっと頬を膨らませて抗議したら、
「すみません。では、日織さんのお望み通り、大人の扱いをいたしましょう」
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた修太郎さんに、ソファへ押し倒された。
私を、修太郎さんが纏うシプレ系の香水が包み込んだ。
0
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。
真守 輪
恋愛
年下の恋人を持つ図書館司書のわたし。
地味でメンヘラなわたしに対して、高校生の恋人は顔も頭もイイが、嫉妬深くて性格と愛情表現が歪みまくっている。
ドSな彼に振り回されるわたしの日常。でも、そんな関係も長くは続かない。わたしたちの関係が、彼の学校に知られた時、わたしは断罪されるから……。
イラスト提供 千里さま
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
日下奈緒
恋愛
課長としてキャリアを積む恭香。
若い恋人とラブラブだったが、その恋人に捨てられた。
40歳までには結婚したい!
婚活を決意した恭香を口説き始めたのは、同期で仲のいい柊真だった。
今更あいつに口説かれても……
性欲のない義父は、愛娘にだけ欲情する
如月あこ
恋愛
「新しい家族が増えるの」と母は言った。
八歳の有希は、母が再婚するものだと思い込んだ――けれど。
内縁の夫として一緒に暮らすことになった片瀬慎一郎は、母を二人目の「偽装結婚」の相手に選んだだけだった。
慎一郎を怒らせないように、母や兄弟は慎一郎にほとんど関わらない。有希だけが唯一、慎一郎の炊事や洗濯などの世話を妬き続けた。
そしてそれから十年以上が過ぎて、兄弟たちは就職を機に家を出て行ってしまった。
物語は、有希が二十歳の誕生日を迎えた日から始まる――。
有希は『いつ頃から、恋をしていたのだろう』と淡い恋心を胸に秘める。慎一郎は『有希は大人の女性になった。彼女はいずれ嫁いで、自分の傍からいなくなってしまうのだ』と知る。
二十五歳の歳の差、養父娘ラブストーリー。
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる