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*あなたに、キスのその先を。〜第二夜〜
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「あっ、あのっ、修太郎さ……」
慌てて現状を取り繕おうとしたら、そのまま唇を塞がれてしまいました。
わわわっ。だ、ダメですっ。歯磨きがまだっ。
私は先程食事を済ませたばかりなことを考えてキスに集中できません。
えっと食べたのなぁに?
な、何を食べましたっけ!?
頭の中、パニックです。
あ! 美味しそうだったので見惚れていたら、修太郎さんが無言でカゴに入れてくださった白桃!
そう、食後に食べたあの桃が最後でしたっ。
そういえば、修太郎さんからも甘い桃の香りがします。
これは不幸中の幸いですか?
でも……また桃?
私、このままじゃ、桃の香りを嗅ぐたびにエッチなことを思い出してしまいそうです。
そ、それはちょっと困りますっ。
「ん、はぁ、っ、しゅうたろ、さっ、……待っ」
キスの合間を一生懸命見つけては修太郎さんに待ったをかけますが、彼を押し戻そうと胸についた手も、邪魔だと言うように絡めとられてしまい――。
変に喋ろうとしたせいで、呼吸がうまく出来なくて段々目端が潤んできます。
修太郎さんは私の手から、握ったままだった携帯をそっと抜き取ると、ご自身が外された眼鏡と一緒にソファ前のローテーブルの上に置かれました。
「日織さんの唇はいつも桃の香りです」
私がそうなっては困ると思ったことを、さらりとおっしゃると、修太郎さんが微笑んでいらっしゃいます。
「日織さんが真面目な方だと言うのは存じていましたが……お一人であんなお勉強をなさっていらしたのは、正直驚きです」
修太郎さんがこんなことをわざわざおっしゃるのは、きっといつもの意地悪なのですっ。
私は修太郎さんをじっと見詰め返して、
「わ、私だってやるときはやるのですっ!」
わけのわからない虚勢を張ってしまいました。
「僕の奥さんは本当に頼もしいですね。今日もファミレスで僕を庇ってくださったとき、すごくかっこよかったです」
ぎゅっと私を抱きしめて、修太郎さんが耳朶に直接吹き込むようにそうおっしゃいます。
「あ、あれは……。いらないことまで言ってしまったと……反省して、いますっ……」
健二さんと佳穂さんに、私はエッチ未経験者ですって公言した感じになってしまったのを、ふと思い出して赤面します。
でもあれは私自身のことは告白してしまいましたが、修太郎さんのことは分からなかったと思うので、その点ではセーフです。
「――日織さん」
考え事をしていたら、修太郎さんが切なく掠れた声で私の名前を呼んでいらして。
再度唇が寄せられたのを察知して私は慌てます。
「しゅ、修太郎さんっ。お、お風呂っ。つ、続きはお風呂に入ってからに……しませんか?」
あちこち歩き回りましたし、色々気になってしまいます。
この期に及んで今更な気も致しますが、歯磨きも済ませたいのですっ。
「――ダメ、ですか?」
下から見上げるように上目遣いでそうお伺いしたら、修太郎さんが寸の間考えていらして……。
「どうしても、とおっしゃるのでしたら」
と言ってくださいました。
私は畳み掛けるように「どうしても、ですっ」とお応えします。
修太郎さんは、はぁっと切なげな吐息を漏らされると、「わかりました」と言って引いてくださいました。
私はホッと安堵します。
「御一緒に、と申し上げたいところですが、それはまだハードルが高いでしょう?」
修太郎さんが私の方を仰ぎ見ていらして、私はそのセリフに何度も何度もうなずきます。
私のその様子に修太郎さんがふっと相好を崩されると、
「実際僕自身も、貴女とお風呂に入って、我慢できる自信がありませんので今日のところは諦めます。――僕は少しやることがありますので、日織さん、お先にどうぞ」
修太郎さんにそう言われて、私は再度胸を撫で下ろしました。
慌てて現状を取り繕おうとしたら、そのまま唇を塞がれてしまいました。
わわわっ。だ、ダメですっ。歯磨きがまだっ。
私は先程食事を済ませたばかりなことを考えてキスに集中できません。
えっと食べたのなぁに?
な、何を食べましたっけ!?
頭の中、パニックです。
あ! 美味しそうだったので見惚れていたら、修太郎さんが無言でカゴに入れてくださった白桃!
そう、食後に食べたあの桃が最後でしたっ。
そういえば、修太郎さんからも甘い桃の香りがします。
これは不幸中の幸いですか?
でも……また桃?
私、このままじゃ、桃の香りを嗅ぐたびにエッチなことを思い出してしまいそうです。
そ、それはちょっと困りますっ。
「ん、はぁ、っ、しゅうたろ、さっ、……待っ」
キスの合間を一生懸命見つけては修太郎さんに待ったをかけますが、彼を押し戻そうと胸についた手も、邪魔だと言うように絡めとられてしまい――。
変に喋ろうとしたせいで、呼吸がうまく出来なくて段々目端が潤んできます。
修太郎さんは私の手から、握ったままだった携帯をそっと抜き取ると、ご自身が外された眼鏡と一緒にソファ前のローテーブルの上に置かれました。
「日織さんの唇はいつも桃の香りです」
私がそうなっては困ると思ったことを、さらりとおっしゃると、修太郎さんが微笑んでいらっしゃいます。
「日織さんが真面目な方だと言うのは存じていましたが……お一人であんなお勉強をなさっていらしたのは、正直驚きです」
修太郎さんがこんなことをわざわざおっしゃるのは、きっといつもの意地悪なのですっ。
私は修太郎さんをじっと見詰め返して、
「わ、私だってやるときはやるのですっ!」
わけのわからない虚勢を張ってしまいました。
「僕の奥さんは本当に頼もしいですね。今日もファミレスで僕を庇ってくださったとき、すごくかっこよかったです」
ぎゅっと私を抱きしめて、修太郎さんが耳朶に直接吹き込むようにそうおっしゃいます。
「あ、あれは……。いらないことまで言ってしまったと……反省して、いますっ……」
健二さんと佳穂さんに、私はエッチ未経験者ですって公言した感じになってしまったのを、ふと思い出して赤面します。
でもあれは私自身のことは告白してしまいましたが、修太郎さんのことは分からなかったと思うので、その点ではセーフです。
「――日織さん」
考え事をしていたら、修太郎さんが切なく掠れた声で私の名前を呼んでいらして。
再度唇が寄せられたのを察知して私は慌てます。
「しゅ、修太郎さんっ。お、お風呂っ。つ、続きはお風呂に入ってからに……しませんか?」
あちこち歩き回りましたし、色々気になってしまいます。
この期に及んで今更な気も致しますが、歯磨きも済ませたいのですっ。
「――ダメ、ですか?」
下から見上げるように上目遣いでそうお伺いしたら、修太郎さんが寸の間考えていらして……。
「どうしても、とおっしゃるのでしたら」
と言ってくださいました。
私は畳み掛けるように「どうしても、ですっ」とお応えします。
修太郎さんは、はぁっと切なげな吐息を漏らされると、「わかりました」と言って引いてくださいました。
私はホッと安堵します。
「御一緒に、と申し上げたいところですが、それはまだハードルが高いでしょう?」
修太郎さんが私の方を仰ぎ見ていらして、私はそのセリフに何度も何度もうなずきます。
私のその様子に修太郎さんがふっと相好を崩されると、
「実際僕自身も、貴女とお風呂に入って、我慢できる自信がありませんので今日のところは諦めます。――僕は少しやることがありますので、日織さん、お先にどうぞ」
修太郎さんにそう言われて、私は再度胸を撫で下ろしました。
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