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言われてみればそうでした!

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日織ひおりさん、まだ名目上は許婚いいなずけだった頃に俺、言いましたよね? 俺の言いなりになってばかりで自分を持っていない貴女が、俺は嫌いだったって」

「……はい」

 自然、声が小さくなってしまいます。

 これでは……怒られてしまっても仕方ない、と思いました。

「今の貴女は、依存する対象が俺から兄さんに移ったってだけで……あの頃とちっとも変わっていないです」
 違いますか?と畳み掛けられて、私はますます縮こまってしまいました。

 確かに、おっしゃる通りなのです。

 私、自分の人生に関わることなのに、修太郎しゅうたろうさんの言動に、何ら疑問を抱かずに入籍をしてしまいました。

「日織ちゃん、本当はね、その時にバカにすんな!って修太郎を殴っても良かったと思うのよ? 記念日だか何だか知らないけど、そんなの勝手に押し付けないで!って。何で相談もなくそんな大切なこと、勝手に決めちゃうの?って」

 言いながら、佳穂かほさんが、うなだれる私の頭をそっと優しく撫でてくださいました。

 修太郎さんは、そんな私の肩にずっと手を載せてくださっていますが、目の前で繰り広げられる私たちのやり取りに、ご自身も何か思われたみたいで。

 何も口を挟んでいらっしゃらないのがその証拠に思えました。

「さて、修太郎――」
 佳穂さんが私の頭からスッと手を離されると、声のトーンをひとつ下げられました。

「今の私たちのやり取りを聞いて、何も思わなかったとは言わせないわよ? ――アナタは日織ちゃんをどうしたいの?」

 修太郎さんは私をどうしたいのか?と佳穂さんが私の大事な旦那様を睨んでいらっしゃいます。
 そうです、修太郎さんは私の夫ですっ!
 何かもう、そう思ったら彼のことを好き勝手言われるのが段々腹立たしくなってきました。
 私は何にも言い返さない修太郎さんを、ソワソワした気持ちで見つめます。

「修太郎、今のままじゃ、貴女は日織ちゃんを自分のいいように動かしてしまう暴君になってしまうわ」

 佳穂さんが言葉を連ねていらっしゃいますが、修太郎さんはやっぱり何も反論なさらなくて。
 そればかりか明らかに落ち込んでいらっしゃるのが分かります。

 私は、その状態にとうとう耐えられなくなりました。
 私が叱られるのは仕方ないです。だってその通りでしたもの。全然考えてませんでしたし、正直流されまくりでした。
 でも……でもっ! 私の大切な修太郎さんが私のせいで責められるのは黙っていられません!

 そう思ったら、思わず「そんなことありませんっ!」と口を挟んでしまっていました。

 私のその声に、固まってしまっていたように見えた修太郎さんが、ビクッとして私を見つめていらっしゃいました。

 すみません、修太郎さん。日織は今から出過ぎた真似をいたします。
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