上 下
148 / 233
言われてみればそうでした!

7

しおりを挟む
日織ひおりさん、まだ名目上は許婚いいなずけだった頃に俺、言いましたよね? 俺の言いなりになってばかりで自分を持っていない貴女が、俺は嫌いだったって」

「……はい」

 自然、声が小さくなってしまいます。

 これでは……怒られてしまっても仕方ない、と思いました。

「今の貴女は、依存する対象が俺から兄さんに移ったってだけで……あの頃とちっとも変わっていないです」
 違いますか?と畳み掛けられて、私はますます縮こまってしまいました。

 確かに、おっしゃる通りなのです。

 私、自分の人生に関わることなのに、修太郎しゅうたろうさんの言動に、何ら疑問を抱かずに入籍をしてしまいました。

「日織ちゃん、本当はね、その時にバカにすんな!って修太郎を殴っても良かったと思うのよ? 記念日だか何だか知らないけど、そんなの勝手に押し付けないで!って。何で相談もなくそんな大切なこと、勝手に決めちゃうの?って」

 言いながら、佳穂かほさんが、うなだれる私の頭をそっと優しく撫でてくださいました。

 修太郎さんは、そんな私の肩にずっと手を載せてくださっていますが、目の前で繰り広げられる私たちのやり取りに、ご自身も何か思われたみたいで。

 何も口を挟んでいらっしゃらないのがその証拠に思えました。

「さて、修太郎――」
 佳穂さんが私の頭からスッと手を離されると、声のトーンをひとつ下げられました。

「今の私たちのやり取りを聞いて、何も思わなかったとは言わせないわよ? ――アナタは日織ちゃんをどうしたいの?」

 修太郎さんは私をどうしたいのか?と佳穂さんが私の大事な旦那様を睨んでいらっしゃいます。
 そうです、修太郎さんは私の夫ですっ!
 何かもう、そう思ったら彼のことを好き勝手言われるのが段々腹立たしくなってきました。
 私は何にも言い返さない修太郎さんを、ソワソワした気持ちで見つめます。

「修太郎、今のままじゃ、貴女は日織ちゃんを自分のいいように動かしてしまう暴君になってしまうわ」

 佳穂さんが言葉を連ねていらっしゃいますが、修太郎さんはやっぱり何も反論なさらなくて。
 そればかりか明らかに落ち込んでいらっしゃるのが分かります。

 私は、その状態にとうとう耐えられなくなりました。
 私が叱られるのは仕方ないです。だってその通りでしたもの。全然考えてませんでしたし、正直流されまくりでした。
 でも……でもっ! 私の大切な修太郎さんが私のせいで責められるのは黙っていられません!

 そう思ったら、思わず「そんなことありませんっ!」と口を挟んでしまっていました。

 私のその声に、固まってしまっていたように見えた修太郎さんが、ビクッとして私を見つめていらっしゃいました。

 すみません、修太郎さん。日織は今から出過ぎた真似をいたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R-18】私を乱す彼の指~お隣のイケメンマッサージ師くんに溺愛されています~【完結】

衣草 薫
恋愛
朋美が酔った勢いで注文した吸うタイプのアダルトグッズが、お隣の爽やかイケメン蓮の部屋に誤配されて大ピンチ。 でも蓮はそれを肩こり用のマッサージ器だと誤解して、マッサージ器を落として壊してしまったお詫びに朋美の肩をマッサージしたいと申し出る。 実は蓮は幼少期に朋美に恋して彼女を忘れられず、大人になって朋美を探し出してお隣に引っ越してきたのだった。 マッサージ師である蓮は大好きな朋美の体を施術と称して愛撫し、過去のトラウマから男性恐怖症であった朋美も蓮を相手に恐怖症を克服していくが……。 セックスシーンには※、 ハレンチなシーンには☆をつけています。

【R18】優しい嘘と甘い枷~もう一度あなたと~

イチニ
恋愛
高校三年生の冬。『お嬢様』だった波奈の日常は、両親の死により一変する。 幼なじみで婚約者の彩人と別れなければならなくなった波奈は、どうしても別れる前に、一度だけ想い出が欲しくて、嘘を吐き、彼を騙して一夜をともにする。 六年後、波奈は彩人と再会するのだが……。 ※別サイトに投稿していたものに性描写を入れ、ストーリーを少し改変したものになります。性描写のある話には◆マークをつけてます。

【R18】男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。

夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
真田(さなだ)ホールディングスで専務秘書を務めている香坂 杏珠(こうさか あんじゅ)は凛とした美人で26歳。社内外問わずモテるものの、男に冷たく当たることから『男性嫌いではないか』と噂されている。 しかし、実際は違う。杏珠は自分の理想を妥協することが出来ず、結果的に彼氏いない歴=年齢を貫いている、いわば拗らせ女なのだ。 そんな杏珠はある日社長から副社長として本社に来てもらう甥っ子の専属秘書になってほしいと打診された。 渋々といった風に了承した杏珠。 そして、出逢った男性――丞(たすく)は、まさかまさかで杏珠の好みぴったりの『筋肉男子』だった。 挙句、気が付いたら二人でベッドにいて……。 しかも、過去についてしまった『とある嘘』が原因で、杏珠は危機に陥る。 後継者と名高いエリート副社長×凛とした美人秘書(拗らせ女)の身体から始まる現代ラブ。 ▼掲載先→エブリスタ、ベリーズカフェ、アルファポリス(性描写多め版)

私を犯してください♡ 爽やかイケメンに狂う人妻

花野りら
恋愛
人妻がじわじわと乱れていくのは必読です♡

若妻シリーズ

笹椰かな
恋愛
とある事情により中年男性・飛龍(ひりゅう)の妻となった18歳の愛実(めぐみ)。 気の進まない結婚だったが、優しく接してくれる夫に愛実の気持ちは傾いていく。これはそんな二人の夜(または昼)の営みの話。 乳首責め/クリ責め/潮吹き ※表紙の作成/かんたん表紙メーカー様 ※使用画像/SplitShire様

【完結】【R18】男色疑惑のある公爵様の契約妻となりましたが、気がついたら愛されているんですけれど!?

夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
「俺と結婚してくれたら、衣食住完全補償。なんだったら、キミの実家に支援させてもらうよ」 「え、じゃあ結婚します!」 メラーズ王国に住まう子爵令嬢マーガレットは悩んでいた。 というのも、元々借金まみれだった家の財政状況がさらに悪化し、ついには没落か夜逃げかという二択を迫られていたのだ。 そんな中、父に「頼むからいい男を捕まえてこい!」と送り出された舞踏会にて、マーガレットは王国の二大公爵家の一つオルブルヒ家の当主クローヴィスと出逢う。 彼はマーガレットの話を聞くと、何を思ったのか「俺と契約結婚しない?」と言ってくる。 しかし、マーガレットはためらう。何故ならば……彼には男色家だといううわさがあったのだ。つまり、形だけの結婚になるのは目に見えている。 そう思ったものの、彼が提示してきた条件にマーガレットは飛びついた。 そして、マーガレットはクローヴィスの(契約)妻となった。 男色家疑惑のある自由気ままな公爵様×貧乏性で現金な子爵令嬢。 二人がなんやかんやありながらも両想いになる勘違い話。 ◆hotランキング 10位ありがとうございます……! ―― ◆掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ、エブリスタ

【R18・完結】蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない〜

花室 芽苳
恋愛
契約結婚しませんか?貴方は確かにそう言ったのに。気付けば貴方の冷たい瞳に炎が宿ってー?ねえ、これは大人の恋なんですか? どこにいても誰といても冷静沈着。 二階堂 柚瑠木《にかいどう ゆるぎ》は二階堂財閥の御曹司 そんな彼が契約結婚の相手として選んだのは 十条コーポレーションのお嬢様 十条 月菜《じゅうじょう つきな》 真面目で努力家の月菜は、そんな柚瑠木の申し出を受ける。 「契約結婚でも、私は柚瑠木さんの妻として頑張ります!」 「余計な事はしなくていい、貴女はお飾りの妻に過ぎないんですから」 しかし、挫けず頑張る月菜の姿に柚瑠木は徐々に心を動かされて――――? 冷徹御曹司 二階堂 柚瑠木 185㎝ 33歳 努力家妻  十条 月菜   150㎝ 24歳

【R18】国王陛下はずっとご執心です〜我慢して何も得られないのなら、どんな手を使ってでも愛する人を手に入れよう〜

まさかの
恋愛
濃厚な甘々えっちシーンばかりですので閲覧注意してください! 題名の☆マークがえっちシーンありです。 王位を内乱勝ち取った国王ジルダールは護衛騎士のクラリスのことを愛していた。 しかし彼女はその気持ちに気付きながらも、自分にはその資格が無いとジルダールの愛を拒み続ける。 肌を重ねても去ってしまう彼女の居ない日々を過ごしていたが、実の兄のクーデターによって命の危険に晒される。 彼はやっと理解した。 我慢した先に何もないことを。 ジルダールは彼女の愛を手に入れるために我慢しないことにした。 小説家になろう、アルファポリスで投稿しています。

処理中です...