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言われてみればそうでした!
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私は食事をしながら時折佳穂さんをちらちらと見遣りましたが、佳穂さんは目を合わせてくださいません。
助けを求めるように健二さんに視線を転じてみましたが、彼にも目を逸らされてしまいました。
そのことに、ますます緊張してきた私は、無意識に修太郎さんにピッタリとくっ付いてしまって。
修太郎さんが、そんな私の手を握ってくださいます。
そのおかげで、私は何とか逃げ出さずにいられます。
「で? 一体何の話だ、佳穂?」
修太郎さんが佳穂さんをじっと見据えてそうおっしゃった時、私は心臓がドクン!と跳ね上がるのを感じました。
「――何の話か分からないところに問題があるのよ」
対する佳穂さんも、修太郎さんに負けず劣らずピリピリしていらっしゃいます。
私はオロオロとお二人を見比べました。と、佳穂さんとバッチリ目が合ってしまって。
ひゃー、なんだか佳穂さん、怖いですっ。
「日織ちゃん、電話でも言いかけたけど……貴女、本当にちゃんと納得して修太郎と入籍したの?」
それでも修太郎さんにお話される時よりは幾分穏やかな口調で問いかけてくださって、私はほんの少し肩の力を抜くことができました。
「……納得……かどうかはよく分からないのですが……あの、た、例えば……その……イヤではなかった、って言うのじゃ……ダメでしょうか?」
恐る恐るそうお答えしたら、佳穂さんがバンッとテーブルを叩いていらして。
私は今度こそビクッと飛び上がりました。
「そこよ! それがダメなのよ、日織ちゃん! 分かる!?」
突然響いた大きな音に、周りから視線が集まってしまって――。
「お、おい、佳穂。お前ちょっと落ち着けって」
健二さんが慌てて佳穂さんをなだめます。
修太郎さんが、佳穂さんの剣幕に押されて縮こまる私の肩に腕を回すと、ギュッと抱き寄せてくださいました。
「佳穂、お前いい加減に――」
修太郎さんが怒りを抑えた声音で佳穂さんを牽制しようとなさったら、健二さんがまるで佳穂さんを庇うようにそれを制していらして、逆に修太郎さんを睨まれました。
「兄さんはちょっと黙っててください。俺も佳穂もまずは日織さんの気持ちを確認したいんです。――兄さんとの話はその後です」
静かですが、思わず修太郎さんが口をつぐんでしまう程度には、威圧感のある声音でした。
ふと、お二人のお父様でいらっしゃる天馬氏を彷彿とさせられて、私は息を呑みました。
「――日織さん、貴女が兄さんのことを好きなのは俺も佳穂も分かってます。二人が相思相愛なのは誰の目にも明らかでしたし、実際貴女たちは婚約なさってました。だから俺たちも、近い将来、二人は結婚するんだろうな、とは思ってましたよ。でもね――」
助けを求めるように健二さんに視線を転じてみましたが、彼にも目を逸らされてしまいました。
そのことに、ますます緊張してきた私は、無意識に修太郎さんにピッタリとくっ付いてしまって。
修太郎さんが、そんな私の手を握ってくださいます。
そのおかげで、私は何とか逃げ出さずにいられます。
「で? 一体何の話だ、佳穂?」
修太郎さんが佳穂さんをじっと見据えてそうおっしゃった時、私は心臓がドクン!と跳ね上がるのを感じました。
「――何の話か分からないところに問題があるのよ」
対する佳穂さんも、修太郎さんに負けず劣らずピリピリしていらっしゃいます。
私はオロオロとお二人を見比べました。と、佳穂さんとバッチリ目が合ってしまって。
ひゃー、なんだか佳穂さん、怖いですっ。
「日織ちゃん、電話でも言いかけたけど……貴女、本当にちゃんと納得して修太郎と入籍したの?」
それでも修太郎さんにお話される時よりは幾分穏やかな口調で問いかけてくださって、私はほんの少し肩の力を抜くことができました。
「……納得……かどうかはよく分からないのですが……あの、た、例えば……その……イヤではなかった、って言うのじゃ……ダメでしょうか?」
恐る恐るそうお答えしたら、佳穂さんがバンッとテーブルを叩いていらして。
私は今度こそビクッと飛び上がりました。
「そこよ! それがダメなのよ、日織ちゃん! 分かる!?」
突然響いた大きな音に、周りから視線が集まってしまって――。
「お、おい、佳穂。お前ちょっと落ち着けって」
健二さんが慌てて佳穂さんをなだめます。
修太郎さんが、佳穂さんの剣幕に押されて縮こまる私の肩に腕を回すと、ギュッと抱き寄せてくださいました。
「佳穂、お前いい加減に――」
修太郎さんが怒りを抑えた声音で佳穂さんを牽制しようとなさったら、健二さんがまるで佳穂さんを庇うようにそれを制していらして、逆に修太郎さんを睨まれました。
「兄さんはちょっと黙っててください。俺も佳穂もまずは日織さんの気持ちを確認したいんです。――兄さんとの話はその後です」
静かですが、思わず修太郎さんが口をつぐんでしまう程度には、威圧感のある声音でした。
ふと、お二人のお父様でいらっしゃる天馬氏を彷彿とさせられて、私は息を呑みました。
「――日織さん、貴女が兄さんのことを好きなのは俺も佳穂も分かってます。二人が相思相愛なのは誰の目にも明らかでしたし、実際貴女たちは婚約なさってました。だから俺たちも、近い将来、二人は結婚するんだろうな、とは思ってましたよ。でもね――」
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