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言われてみればそうでした!
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でも、今はっ。
「修太郎さん、とりあえず……着替えましょ?」
スマートフォンを握りしめて固まっておられる修太郎さんの肩に、そっと手を触れて促します。
お腹も空きました。
何か食べる時間は残されているでしょうか? というより佳穂さんはお腹、空いていらっしゃらないでしょうか?
私はいそいそと着替えを抱えて脱衣所にこもると、少し考えて入り口に鍵をかけました。
全部見られてしまった間柄ですが、やはり不意打ちは恥ずかしいので用心します。
私が着替えを終えて脱衣所から出ると、修太郎さんが立っていらして。
修太郎さんも、ちゃんと着替えていらしてホッとしました。
今日の修太郎さんは、レンガ色より少し赤みの強い朱殷色のサマーニットを着ていらして、その裾から白のロング丈のTシャツが見えています。それに黒のスキニーパンツをあわせていらっしゃるのがとてもお洒落で、思わず見惚れてしまうぐらいカッコいいです。
私、修太郎さんというと作業服姿というイメージが定着してしまっているので、私服姿はとても新鮮でドキドキします。
ちゃんと眼鏡もかけておられますが、どこかいつもと雰囲気が違って。それは服装の違いだけじゃない気が……――、って……あっ! そこで、やっと気がつきました。
「ごめんなさいっ。私が洗面所を占拠してたからっ」
そう、雰囲気が違って見えるのは、髪型のためです。
洗面所にスタイリング剤とか置いてありましたので、私のせいです。
「大丈夫ですよ。僕の仕度なんてすぐすみますから。日織さん、今日のお洋服もとてもお似合いです」
修太郎さんに笑顔を向けられて、改めて自分を見返します。
今日は海老色のミモレ丈スカートに、白地にストライプのシャツを着ています。
期せずして修太郎さんのサマーニットと私のスカート、お色が似ていてお揃いみたいで嬉しいですっ。
「そういえば――」
修太郎さんが、髪をセットなさりながら、洗面所からヒョコッと顔を覗けられて、
「――さっき佳穂と少し話しました」
そうおっしゃいました。
「……あ。お電話、通じたんですねっ」
そのお声に、リビングへ向かおうとしていた足を止めてそうお返ししたら、「ええ。――あと十分くらいで着くという一方的な連絡でしたけどね」と返ってきます。
修太郎さんの不機嫌そうな口ぶりから察するに、彼からのコールが通じたのではなく、また佳穂さんから掛かっていらした雰囲気です。
それにしても――十分! これは急いでメイクを頑張っても間に合わないかもしれませんっ。
私がソワソワし始めたのを、ジェスチャーで大丈夫ですよ、と制していらっしゃると、修太郎さんが話を続けてくださいます。
「いきなり来ると言われても、日織さんも僕も朝食がまだだから迷惑だと話して、とりあえず近くのファミレスで待っていてもらうことになりました」
修太郎さんがにっこり笑ってそう言ってくださって、私は正直ホッとします。
佳穂さんに迷惑だと告げていらしたのは感心できませんが、ファミリーレストランなら佳穂さんも珈琲などを飲まれながら時間を潰すことができると思います。
だからといって余りお待たせするわけにはいきませんが、とりあえずメイクの途中で「お久しぶりですっ」となる事態だけは避けられそうです。
「ありがとうございますっ。た、助かりますっ」
素直にそう申し上げたら、修太郎さんが嬉しそうに微笑まれました。
「お役に立てて光栄です」
修太郎さんは、私にとって、やはり最高の男性です!
何も言わなくてもピンチを察して助けてくださるとか……かっこよすぎですっ。
「なるべく早く仕度、整えますね」
ペコリと頭を下げると、私は急いでリビングに戻りました。
メイクと髪の毛のセット、超特急で頑張りますっ!
「修太郎さん、とりあえず……着替えましょ?」
スマートフォンを握りしめて固まっておられる修太郎さんの肩に、そっと手を触れて促します。
お腹も空きました。
何か食べる時間は残されているでしょうか? というより佳穂さんはお腹、空いていらっしゃらないでしょうか?
私はいそいそと着替えを抱えて脱衣所にこもると、少し考えて入り口に鍵をかけました。
全部見られてしまった間柄ですが、やはり不意打ちは恥ずかしいので用心します。
私が着替えを終えて脱衣所から出ると、修太郎さんが立っていらして。
修太郎さんも、ちゃんと着替えていらしてホッとしました。
今日の修太郎さんは、レンガ色より少し赤みの強い朱殷色のサマーニットを着ていらして、その裾から白のロング丈のTシャツが見えています。それに黒のスキニーパンツをあわせていらっしゃるのがとてもお洒落で、思わず見惚れてしまうぐらいカッコいいです。
私、修太郎さんというと作業服姿というイメージが定着してしまっているので、私服姿はとても新鮮でドキドキします。
ちゃんと眼鏡もかけておられますが、どこかいつもと雰囲気が違って。それは服装の違いだけじゃない気が……――、って……あっ! そこで、やっと気がつきました。
「ごめんなさいっ。私が洗面所を占拠してたからっ」
そう、雰囲気が違って見えるのは、髪型のためです。
洗面所にスタイリング剤とか置いてありましたので、私のせいです。
「大丈夫ですよ。僕の仕度なんてすぐすみますから。日織さん、今日のお洋服もとてもお似合いです」
修太郎さんに笑顔を向けられて、改めて自分を見返します。
今日は海老色のミモレ丈スカートに、白地にストライプのシャツを着ています。
期せずして修太郎さんのサマーニットと私のスカート、お色が似ていてお揃いみたいで嬉しいですっ。
「そういえば――」
修太郎さんが、髪をセットなさりながら、洗面所からヒョコッと顔を覗けられて、
「――さっき佳穂と少し話しました」
そうおっしゃいました。
「……あ。お電話、通じたんですねっ」
そのお声に、リビングへ向かおうとしていた足を止めてそうお返ししたら、「ええ。――あと十分くらいで着くという一方的な連絡でしたけどね」と返ってきます。
修太郎さんの不機嫌そうな口ぶりから察するに、彼からのコールが通じたのではなく、また佳穂さんから掛かっていらした雰囲気です。
それにしても――十分! これは急いでメイクを頑張っても間に合わないかもしれませんっ。
私がソワソワし始めたのを、ジェスチャーで大丈夫ですよ、と制していらっしゃると、修太郎さんが話を続けてくださいます。
「いきなり来ると言われても、日織さんも僕も朝食がまだだから迷惑だと話して、とりあえず近くのファミレスで待っていてもらうことになりました」
修太郎さんがにっこり笑ってそう言ってくださって、私は正直ホッとします。
佳穂さんに迷惑だと告げていらしたのは感心できませんが、ファミリーレストランなら佳穂さんも珈琲などを飲まれながら時間を潰すことができると思います。
だからといって余りお待たせするわけにはいきませんが、とりあえずメイクの途中で「お久しぶりですっ」となる事態だけは避けられそうです。
「ありがとうございますっ。た、助かりますっ」
素直にそう申し上げたら、修太郎さんが嬉しそうに微笑まれました。
「お役に立てて光栄です」
修太郎さんは、私にとって、やはり最高の男性です!
何も言わなくてもピンチを察して助けてくださるとか……かっこよすぎですっ。
「なるべく早く仕度、整えますね」
ペコリと頭を下げると、私は急いでリビングに戻りました。
メイクと髪の毛のセット、超特急で頑張りますっ!
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