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言われてみればそうでした!
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「お?」
「……お腹がっ」
言うと同時にキュルルッと小さくお腹の虫が鳴いて、修太郎さんに笑われてしまいました。
「これは大変ですね。このまま続けていたら、僕の可愛い奥さんが餓死してしまいそうです」
修太郎さんのお声に、頬がブワッと熱くなります。私はあんまり恥ずかしくて、彼の腕をすり抜けるようにしてベッドから逃げ出しました。
そうして照れ隠しにプーっと頬をふくらませると、
「修太郎さんはベッドの中だと意地悪ですっ。――だから……早くそこから出てくださいっ!」
言いながら寝室のカーテンを開けて、ベッドに朝日を当ててやります。
修太郎さんが、眩しさに驚いて目を眇められたのを拝見して、少しだけ溜飲が下がりました。
と、突然ベッドの宮棚に置かれていた修太郎さんの携帯電話がブーッブーッと振動して。
私は突如鳴り響いたその音に、思わずビクッと肩を震わせます。
寝室の掛け時計を見やると、時刻は午前十時を回っていました。
夜遅くまで起きていたので、少しお寝坊さんをしてしまったようです。
修太郎さんが着信中の画面を一瞥なさった後、私に仕草でごめん、と謝っていらしてから、「もしもし?」と電話をお受けになられました。
私はそのままそこにいていいものか迷ってから、聞き耳を立てるようになってはいけないと立ち去ろうとして――。ベッドサイドに腰かけた修太郎さんにグイッと手を引かれて、彼のすぐ横に座らされてしまいました。
そうなさってから、修太郎さんは「今、日織さんも一緒だからスピーカーに切り替えるぞ」と前置きなさってからハンズフリーになさいました。
「あ、あのっ、私も会話をお聞きしてよろしいのですかっ?」
戸惑いながら修太郎さんにそう問いかけたら――。
『その声は……日織ちゃん!? 貴女、まさかもう修太郎と一緒に住んでるのっ!?』
スマートフォンから女性の声が弾けます。
「か……佳穂……さん?」
聞きお覚えのあるハキハキとしたそのお声に、私は恐る恐る呼びかけました。
『そう、佳穂よ。――ね、日織ちゃん、さっき健二から聞いたんだけど、修太郎と入籍したって本当なのっ?』
「あ、はい、昨日……」
私がそうお答えすると、電話口から溜め息が聞こえてきて。
『日織ちゃん、入籍、ちゃんと納得してしたの? 修太郎に流されちゃったんじゃないっ?』
佳穂さんは怒っていらっしゃるみたいです。何故でしょう?
私は修太郎さんのお顔を見つめて首を傾げました。
『あー、もう、電話じゃやっぱりダメね! 今から修太郎ん家行くから! 外出とかしないで待ってて!』
「えっ? あ、オイっ!」
修太郎さんが慌てて電話に呼びかけられましたが、すでに通話は切れていて、スピーカーからは無情にもツーツーという音が聞こえてきます。
「あ、あの……修太郎さん?」
私も戸惑いましたが、修太郎さんも困惑していらっしゃるみたいです。
「佳穂さん、何分ぐらいでお着きになられるでしょうか?」
とりあえずパジャマ姿のままは良くないです。お着替えしてお化粧もっ。
そう思ってベッドから立ち上がった私ですが、修太郎さんは諦めきれないみたいで、佳穂さんにリダイヤルしておられます。でも、出ていらっしゃらないみたいです。――というより。
「あいつ、電源切りやがったっ!」
修太郎さんがそんな言葉を使われるなんて意外ですっ。
私は、ここへ佳穂さんがいらっしゃるという焦りより、修太郎さんの新たな一面が見られたことが嬉しくなって、思わず修太郎さんのお顔をマジマジと見つめてしまいました。
いつか、私にもあんな乱暴な言葉を投げかけてくださる日がくるでしょうか? 考えただけでワクワクします。
「……お腹がっ」
言うと同時にキュルルッと小さくお腹の虫が鳴いて、修太郎さんに笑われてしまいました。
「これは大変ですね。このまま続けていたら、僕の可愛い奥さんが餓死してしまいそうです」
修太郎さんのお声に、頬がブワッと熱くなります。私はあんまり恥ずかしくて、彼の腕をすり抜けるようにしてベッドから逃げ出しました。
そうして照れ隠しにプーっと頬をふくらませると、
「修太郎さんはベッドの中だと意地悪ですっ。――だから……早くそこから出てくださいっ!」
言いながら寝室のカーテンを開けて、ベッドに朝日を当ててやります。
修太郎さんが、眩しさに驚いて目を眇められたのを拝見して、少しだけ溜飲が下がりました。
と、突然ベッドの宮棚に置かれていた修太郎さんの携帯電話がブーッブーッと振動して。
私は突如鳴り響いたその音に、思わずビクッと肩を震わせます。
寝室の掛け時計を見やると、時刻は午前十時を回っていました。
夜遅くまで起きていたので、少しお寝坊さんをしてしまったようです。
修太郎さんが着信中の画面を一瞥なさった後、私に仕草でごめん、と謝っていらしてから、「もしもし?」と電話をお受けになられました。
私はそのままそこにいていいものか迷ってから、聞き耳を立てるようになってはいけないと立ち去ろうとして――。ベッドサイドに腰かけた修太郎さんにグイッと手を引かれて、彼のすぐ横に座らされてしまいました。
そうなさってから、修太郎さんは「今、日織さんも一緒だからスピーカーに切り替えるぞ」と前置きなさってからハンズフリーになさいました。
「あ、あのっ、私も会話をお聞きしてよろしいのですかっ?」
戸惑いながら修太郎さんにそう問いかけたら――。
『その声は……日織ちゃん!? 貴女、まさかもう修太郎と一緒に住んでるのっ!?』
スマートフォンから女性の声が弾けます。
「か……佳穂……さん?」
聞きお覚えのあるハキハキとしたそのお声に、私は恐る恐る呼びかけました。
『そう、佳穂よ。――ね、日織ちゃん、さっき健二から聞いたんだけど、修太郎と入籍したって本当なのっ?』
「あ、はい、昨日……」
私がそうお答えすると、電話口から溜め息が聞こえてきて。
『日織ちゃん、入籍、ちゃんと納得してしたの? 修太郎に流されちゃったんじゃないっ?』
佳穂さんは怒っていらっしゃるみたいです。何故でしょう?
私は修太郎さんのお顔を見つめて首を傾げました。
『あー、もう、電話じゃやっぱりダメね! 今から修太郎ん家行くから! 外出とかしないで待ってて!』
「えっ? あ、オイっ!」
修太郎さんが慌てて電話に呼びかけられましたが、すでに通話は切れていて、スピーカーからは無情にもツーツーという音が聞こえてきます。
「あ、あの……修太郎さん?」
私も戸惑いましたが、修太郎さんも困惑していらっしゃるみたいです。
「佳穂さん、何分ぐらいでお着きになられるでしょうか?」
とりあえずパジャマ姿のままは良くないです。お着替えしてお化粧もっ。
そう思ってベッドから立ち上がった私ですが、修太郎さんは諦めきれないみたいで、佳穂さんにリダイヤルしておられます。でも、出ていらっしゃらないみたいです。――というより。
「あいつ、電源切りやがったっ!」
修太郎さんがそんな言葉を使われるなんて意外ですっ。
私は、ここへ佳穂さんがいらっしゃるという焦りより、修太郎さんの新たな一面が見られたことが嬉しくなって、思わず修太郎さんのお顔をマジマジと見つめてしまいました。
いつか、私にもあんな乱暴な言葉を投げかけてくださる日がくるでしょうか? 考えただけでワクワクします。
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