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お互い様
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「修太郎さん……」
私は、肩に乗せられたままの修太郎さんの頭――髪――にそっと触れました。
その気配に、修太郎さんがほんの少しだけピクッと反応なさいましたが、お顔をお上げになられる気配はありません。
私が変な泣き言を言ってしまったせいで、修太郎さんにすごくすごく気を遣わせてしまったのが分かりました。
男性がそういうことをわざわざ告白なさることが、どれだけ勇気のいることか……。いくら世間知らずの私でも分かります。
ましてや彼は私より十三も年上です。年長者としての矜恃もおありだったでしょう……。なのに、それを捨ててまで私に全てを話してくださった。
修太郎さんは、私が彼に対して、男性経験がないが故に引け目を感じていることを察してくださったんだと思います。だからわざわざご自身のことを。
修太郎さんの優しさが、胸に突き刺さるような気がしました。
「私、馬鹿でした……」
今更ですが、心の底からそう思いました。
「最後まで出来なかったら……私、修太郎さんに捨てられてしまうかもしれないと思って……怖くなってしまったんです。修太郎さんはいつでも嘘偽りなく私を真っすぐに愛してくださっていたのに……。アナタの愛情を疑うような真似をしていることにすら、気付けていませんでした。本当に、ごめんなさい。――私、嫌になるぐらいお馬鹿さんですね……」
言いながら修太郎さんの頭をそっと撫でると、そのたびに指にふわふわと彼の髪の毛が絡まって、それがなんだか凄く愛しいと感じました。
肩に乗せられたままの修太郎さんの頭に顔を近付けて、彼の香りを胸いっぱいに吸い込みます。
私は、やっぱり修太郎さんのことが大好きです。
「――日織……さん?」
その気配に、修太郎さんが私からそっと離れて、初めてこちらを見てくださいました。
私はそんな修太郎さんのお顔を見つめてにっこり笑うと、彼に伝えます。
「私の初めてを修太郎さんにもらっていただけるのも、修太郎さんの初めての相手を私が務めさせていただけるのも……すごくすごく嬉しいです。――なのでっ、……なので、次こそは……その、ふたりで……うまく出来るように……えっと……が、頑張って……みませんか? 私、思ったんですけれど……やっぱりどちらか一方だけが無理をする形は……ダメですっ。だってね、修太郎さん。夫婦の営みはふたりでするもの、なんでしょう?」
私の言葉に、修太郎さんが瞳を見開いていらして。
それから私をギュッと抱きしめてくださいました。
「日織さんっ。本当に貴女って人は……。どこまで僕の心をかき乱せば気が済むんですか……?」
言葉とは裏腹に、彼の声音はとても嬉しそうで……。私も、凄く凄く幸せな気持ちになれました。
私たち、初めて同士なのですから、お互い様なのです。
足りないところは、二人で補い合うのですっ。
ね、修太郎さん。それで、いいですよね?
私は、肩に乗せられたままの修太郎さんの頭――髪――にそっと触れました。
その気配に、修太郎さんがほんの少しだけピクッと反応なさいましたが、お顔をお上げになられる気配はありません。
私が変な泣き言を言ってしまったせいで、修太郎さんにすごくすごく気を遣わせてしまったのが分かりました。
男性がそういうことをわざわざ告白なさることが、どれだけ勇気のいることか……。いくら世間知らずの私でも分かります。
ましてや彼は私より十三も年上です。年長者としての矜恃もおありだったでしょう……。なのに、それを捨ててまで私に全てを話してくださった。
修太郎さんは、私が彼に対して、男性経験がないが故に引け目を感じていることを察してくださったんだと思います。だからわざわざご自身のことを。
修太郎さんの優しさが、胸に突き刺さるような気がしました。
「私、馬鹿でした……」
今更ですが、心の底からそう思いました。
「最後まで出来なかったら……私、修太郎さんに捨てられてしまうかもしれないと思って……怖くなってしまったんです。修太郎さんはいつでも嘘偽りなく私を真っすぐに愛してくださっていたのに……。アナタの愛情を疑うような真似をしていることにすら、気付けていませんでした。本当に、ごめんなさい。――私、嫌になるぐらいお馬鹿さんですね……」
言いながら修太郎さんの頭をそっと撫でると、そのたびに指にふわふわと彼の髪の毛が絡まって、それがなんだか凄く愛しいと感じました。
肩に乗せられたままの修太郎さんの頭に顔を近付けて、彼の香りを胸いっぱいに吸い込みます。
私は、やっぱり修太郎さんのことが大好きです。
「――日織……さん?」
その気配に、修太郎さんが私からそっと離れて、初めてこちらを見てくださいました。
私はそんな修太郎さんのお顔を見つめてにっこり笑うと、彼に伝えます。
「私の初めてを修太郎さんにもらっていただけるのも、修太郎さんの初めての相手を私が務めさせていただけるのも……すごくすごく嬉しいです。――なのでっ、……なので、次こそは……その、ふたりで……うまく出来るように……えっと……が、頑張って……みませんか? 私、思ったんですけれど……やっぱりどちらか一方だけが無理をする形は……ダメですっ。だってね、修太郎さん。夫婦の営みはふたりでするもの、なんでしょう?」
私の言葉に、修太郎さんが瞳を見開いていらして。
それから私をギュッと抱きしめてくださいました。
「日織さんっ。本当に貴女って人は……。どこまで僕の心をかき乱せば気が済むんですか……?」
言葉とは裏腹に、彼の声音はとても嬉しそうで……。私も、凄く凄く幸せな気持ちになれました。
私たち、初めて同士なのですから、お互い様なのです。
足りないところは、二人で補い合うのですっ。
ね、修太郎さん。それで、いいですよね?
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