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一線を越える覚悟
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「……修……太郎、さん」
湯上りで、いつも外出時にはきっちりセットされた修太郎さんの髪の毛が、全体的にゆるりと乱れて下りていました。それだけでも、日頃と随分印象が違っていて、めちゃめちゃドキドキします。
(か、かっこいいですっ)
黒いTシャツに同色のハーフパンツをお召しになられた修太郎さんは、眼鏡をかけていらっしゃいませんでした。
これはあくまでも私の勝手な印象ですが、修太郎さん、きっと視力はそんなに悪くないんだと思います。眼鏡を外しておられるときも、目を眇めたりなさる様子を見たことがありませんし。
私は眼鏡姿の修太郎さんも大好きですが、裸眼姿の彼を拝見した時の方が、静心ない気分になってしまいます。
幼い頃の記憶を刺激されるのもあると思います。でも、それにも増して、修太郎さんが眼鏡を外されると……私に……その……良からぬことをなさるイメージが染み付いてしまっていて――。
私は作戦も忘れて、呆然と突っ立ったまま、しばしそんな彼に見入ってしまいました――。
「……? 日織さん、お着替えですか?」
立ち尽くしたままの私の手元を見た修太郎さんがそう仰って、私はそのお声にハッとして我に返りました。
「あ、あのっ……わた、私っ、少し汗をかいてしまってまして……それで、その……やっぱりお風呂をいただきたいな……と思、うのですが……」
しどろもどろではありますが、ちゃんと言えました。お風呂入りたいです、って。
それなのに。
修太郎さんがすぐにお返事をくださらないので、段々不安になってきました。私は彼の表情を窺い見るようにして、「……ダメ、ですか?」と付け加えました。
(ダメだと言われることは想定していませんでしたが、もしそうなったら……どうしましょう)
そんなことを思いながらソワソワと落ち着かない私をしばらく見つめていらした修太郎さんが、フッと相好を崩されました。
「――ごめんなさい。少し驚いてしまって。もちろん構いませんよ。日織さんのお宅のお風呂とは勝手も違うと思いますし、一通り説明をしますのでこちらへどうぞ」
良かったです。修太郎さん、OKを出してくださいましたっ。
言うなり私に近付いていらした修太郎さんに肩を抱かれました。途端、いつものシプレ系の香りではなく、石鹸の清々しい、どこかフローラルな香りが漂って来てドキッとしました。
見た目のギャップもさることながら、香りのギャップも精神的にグッと迫ってくるようです。
私のそばにいらっしゃるのは修太郎さん……です、よね?
そんな不安を覚えて、私はチラリと彼のお顔を盗み見ました。
湯上りで、いつも外出時にはきっちりセットされた修太郎さんの髪の毛が、全体的にゆるりと乱れて下りていました。それだけでも、日頃と随分印象が違っていて、めちゃめちゃドキドキします。
(か、かっこいいですっ)
黒いTシャツに同色のハーフパンツをお召しになられた修太郎さんは、眼鏡をかけていらっしゃいませんでした。
これはあくまでも私の勝手な印象ですが、修太郎さん、きっと視力はそんなに悪くないんだと思います。眼鏡を外しておられるときも、目を眇めたりなさる様子を見たことがありませんし。
私は眼鏡姿の修太郎さんも大好きですが、裸眼姿の彼を拝見した時の方が、静心ない気分になってしまいます。
幼い頃の記憶を刺激されるのもあると思います。でも、それにも増して、修太郎さんが眼鏡を外されると……私に……その……良からぬことをなさるイメージが染み付いてしまっていて――。
私は作戦も忘れて、呆然と突っ立ったまま、しばしそんな彼に見入ってしまいました――。
「……? 日織さん、お着替えですか?」
立ち尽くしたままの私の手元を見た修太郎さんがそう仰って、私はそのお声にハッとして我に返りました。
「あ、あのっ……わた、私っ、少し汗をかいてしまってまして……それで、その……やっぱりお風呂をいただきたいな……と思、うのですが……」
しどろもどろではありますが、ちゃんと言えました。お風呂入りたいです、って。
それなのに。
修太郎さんがすぐにお返事をくださらないので、段々不安になってきました。私は彼の表情を窺い見るようにして、「……ダメ、ですか?」と付け加えました。
(ダメだと言われることは想定していませんでしたが、もしそうなったら……どうしましょう)
そんなことを思いながらソワソワと落ち着かない私をしばらく見つめていらした修太郎さんが、フッと相好を崩されました。
「――ごめんなさい。少し驚いてしまって。もちろん構いませんよ。日織さんのお宅のお風呂とは勝手も違うと思いますし、一通り説明をしますのでこちらへどうぞ」
良かったです。修太郎さん、OKを出してくださいましたっ。
言うなり私に近付いていらした修太郎さんに肩を抱かれました。途端、いつものシプレ系の香りではなく、石鹸の清々しい、どこかフローラルな香りが漂って来てドキッとしました。
見た目のギャップもさることながら、香りのギャップも精神的にグッと迫ってくるようです。
私のそばにいらっしゃるのは修太郎さん……です、よね?
そんな不安を覚えて、私はチラリと彼のお顔を盗み見ました。
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