【完結】【R18】キス先① あなたに、キスのその先を。

鷹槻れん(鷹槻うなの)

文字の大きさ
上 下
121 / 233
一線を越える覚悟

2

しおりを挟む
 修太郎しゅうたろうさんのお声が耳朶じだを打った瞬間、ゾクゾクとした快感が背中を突き抜けたように感じて、
「んっ、……」
 気がついたら小さく声が漏れていました。
 甘くとろけた自分の声に驚いた私は、思わず口元を両手で覆う。

「――安心しました。日織ひおりさんの身体はそのつもりでいらっしゃるようです」
 私の反応に満足なさったように微笑まれると、修太郎さんがツ……と身を引かれました。
 彼の口調が穏やかになったのと同時に、いつものように「日織」と呼んでいただけたことに私は酷くホッとして。
 目端めはしを赤く染めたまま、力なく修太郎さんを見上げました。

「シャワー、浴びてきますね」
 修太郎さんがそう仰って、私の額に軽くキスを落としていらした途端、張り詰めていた全身の力が抜けました。

(こ、怖かったです……)

 久々に心の底から修太郎さんのことを怖い、と思ってしまいました。

 一人取り残されたリビングの片隅で、小さくうなりを上げるエアコンの音をぼんやりと聞きながら、私は床に両手をつくようにしてへたり込んだまま――。

 こんなんで、キスのその先に進めるでしょうか。
 修太郎さんが仰ったように、私は心のどこかでそのことを薄ら期待していたのに……恥ずかしくて、まるでそんなこと想定していないかのような天邪鬼あまのじゃくな態度を取ってしまいました。
(もちろんお風呂はそういうつもりで入ったわけではなかったですけれどもっ)

 修太郎さんを怒らせてしまったのは当然な気がしました。

 全ての問題が片付いたら……一緒にキスのその先へ進みましょう、と何度も二人でお約束をしたのに。

 私はおバカさんですっ。

 このままは絶対よくないので、修太郎さんが戻っていらっしゃるまでに何をすべきか、一生懸命考えてみます。
 普通、女性はこういう時にどうするものなのでしょうか?
 寝室で裸でお布団にくるまっておくのでしょうか?
 それとも……ベッドに腰掛けて待つものですか? その場合お洋服は?

 お部屋の電気は……いつ切るものなのでしょう?

 そわそわと思いをめぐらせてみるものの、何の名案も浮かんできません。

 そもそも何の予備知識も持たないことを考えつこうとするほうが無理です。

 私はそこで、秘密兵器の存在をふと思い出しました。
「スマートフォン……!」
 さすがに持って大分経ちましたので、使い方も板についてきました。
 私は検索ウィンドウを開いて検索ワードを……打ち込もうとしてまたしても止まってしまいました。
(何と打てばよいのでしょう?)
 キーワードを思いつけなければ、何も調べられません。

 結局スマートフォンを手にしたまま、私は固まってしまいました。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

溺愛社長の欲求からは逃れられない

鳴宮鶉子
恋愛
溺愛社長の欲求からは逃れられない

処理中です...