106 / 233
所有印を付けたい
5
しおりを挟む
不安に思いながら修太郎さんを再度見上げたら、溜め息交じりではあるものの、「分かりました」と折れてくださった。
そのことに、私は心底ホッとする。
私が選んだイヤリングを見た修太郎さんが、「日織さん、僕への遠慮でこれを選んだわけではないんですよね?」と念押ししていらっしゃるのへ、「もちろんです」とお応えする。
修太郎さんが店員さんを呼んで、それを包んで頂いている間、私は何でもない日にプレゼントなんて買っていただいていいのかな?と思ってしまう。
ソワソワしながら彼の横に立っていたら、「日織さんは指輪、もう少し悩んでみてくださいね」とショーケースのほうへ連れ戻されてしまった。
うーーー。修太郎さん、手強いですっ。
私は仕方なくショーケースの中をぼんやりと眺めながら、修太郎さんが店員さんとやり取りなさっておられるのを時折ちらちらと盗み見る。
イヤリングだけを包んでくださっているにしては時間が掛かりすぎる気もするけれど、いつも自分用にしかアクセサリーを買ったことがないからそう思うだけかもしれません。プレゼント用にすると、時間がかかるものなのかな?
いくらケースの中を眺めていても、おねだり出来る様な指輪なんてないのです。指輪、自分で買ったのを左手の薬指にしたんじゃダメかしら?とか考えて、それはやっぱり納得していただけるわけないですよね、としゅんとする。
今日が何か特別な日だったら……私はもう少し素直になれたかもしれません。
ごめんなさい、修太郎さん。
折角修太郎さんがご厚意でここへ連れてきてくださったのに、変に遠慮しておねだりできないとか……本当に私は可愛くないです。
そんなこと、自分でも分かっているのに、男性からプレゼントを贈られ慣れていないので、こういうときにどうすべきなのか、私にはよく分からないのです。
「日織さん、お待たせしました」
修太郎さんの声に、ショーケースを見つめたままドツボにはまり込んでしまっていた私は、ハッとさせられる。
「あっ、す、すみませんっ。私……」
ぼんやりしていました、と薄く微笑んだら、「日織さんのことだから、指輪を選べなかったこと、気にしておられるんでしょう? 今回の件は、貴女の性格を分かっていながらそこを失念していた僕のミスです」と頭を撫でられた。
「怒って……いらっしゃらないのですか……?」
折角の厚意を無下にされた、と……自尊心を踏みにじられた、と……そう言われても仕方のないことをしてしまった自覚があるのに、私がそう申し上げたら修太郎さんはきょとんとしたお顔をなさった。
「どうして僕が日織さんに怒ったりするんですか?」
逆に問いかけられてしまって、私は言葉に詰まってしまう。修太郎さんはそんな狭量な方じゃないのに……私のほうこそ修太郎さんの性格を分かっていませんよね。本当にごめんなさいっ。
私がしゅん、としてしまいそうになったのを悟られた修太郎さんが、声の調子を変えていらした。
「そうだ、日織さん。このまま別の場所に移動したいんですが、いかがですか?」
言うなり、私の手を握ってすたすた歩き出される修太郎さんに引っ張られるようにして歩きながら、私は彼の横顔をぼんやりと見つめる。
やはり修太郎さんはとてもかっこいいのです。
私にはもったいないくらいに、素敵なのです。
そのことに、私は心底ホッとする。
私が選んだイヤリングを見た修太郎さんが、「日織さん、僕への遠慮でこれを選んだわけではないんですよね?」と念押ししていらっしゃるのへ、「もちろんです」とお応えする。
修太郎さんが店員さんを呼んで、それを包んで頂いている間、私は何でもない日にプレゼントなんて買っていただいていいのかな?と思ってしまう。
ソワソワしながら彼の横に立っていたら、「日織さんは指輪、もう少し悩んでみてくださいね」とショーケースのほうへ連れ戻されてしまった。
うーーー。修太郎さん、手強いですっ。
私は仕方なくショーケースの中をぼんやりと眺めながら、修太郎さんが店員さんとやり取りなさっておられるのを時折ちらちらと盗み見る。
イヤリングだけを包んでくださっているにしては時間が掛かりすぎる気もするけれど、いつも自分用にしかアクセサリーを買ったことがないからそう思うだけかもしれません。プレゼント用にすると、時間がかかるものなのかな?
いくらケースの中を眺めていても、おねだり出来る様な指輪なんてないのです。指輪、自分で買ったのを左手の薬指にしたんじゃダメかしら?とか考えて、それはやっぱり納得していただけるわけないですよね、としゅんとする。
今日が何か特別な日だったら……私はもう少し素直になれたかもしれません。
ごめんなさい、修太郎さん。
折角修太郎さんがご厚意でここへ連れてきてくださったのに、変に遠慮しておねだりできないとか……本当に私は可愛くないです。
そんなこと、自分でも分かっているのに、男性からプレゼントを贈られ慣れていないので、こういうときにどうすべきなのか、私にはよく分からないのです。
「日織さん、お待たせしました」
修太郎さんの声に、ショーケースを見つめたままドツボにはまり込んでしまっていた私は、ハッとさせられる。
「あっ、す、すみませんっ。私……」
ぼんやりしていました、と薄く微笑んだら、「日織さんのことだから、指輪を選べなかったこと、気にしておられるんでしょう? 今回の件は、貴女の性格を分かっていながらそこを失念していた僕のミスです」と頭を撫でられた。
「怒って……いらっしゃらないのですか……?」
折角の厚意を無下にされた、と……自尊心を踏みにじられた、と……そう言われても仕方のないことをしてしまった自覚があるのに、私がそう申し上げたら修太郎さんはきょとんとしたお顔をなさった。
「どうして僕が日織さんに怒ったりするんですか?」
逆に問いかけられてしまって、私は言葉に詰まってしまう。修太郎さんはそんな狭量な方じゃないのに……私のほうこそ修太郎さんの性格を分かっていませんよね。本当にごめんなさいっ。
私がしゅん、としてしまいそうになったのを悟られた修太郎さんが、声の調子を変えていらした。
「そうだ、日織さん。このまま別の場所に移動したいんですが、いかがですか?」
言うなり、私の手を握ってすたすた歩き出される修太郎さんに引っ張られるようにして歩きながら、私は彼の横顔をぼんやりと見つめる。
やはり修太郎さんはとてもかっこいいのです。
私にはもったいないくらいに、素敵なのです。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
131
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる