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所有印を付けたい

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 ショッピングモールの立体駐車場。

 薄暗い駐車場内の、しかも車の影とはいえ、どこに人目があるかもしれないのに。
 頭ではそんなこと分かっているはずなのに、私には修太郎しゅうたろうさんしか見えなくなっていて……差し入れられた舌をいとも容易く甘受かんじゅしてしまう。それどころか、もっとその先が欲しくなってしまって……。

 それなのに。

 思いのほかあっさりと離れていく修太郎さんの唇を、名残なごりしそうに追いすがって背伸びしかけてから、足に力が入らなくて我にかえった。それと同時に、自分が今しようとしていたことに驚いてハッとする。

日織ひおりさん、この続きは落ち着いた場所でまた後日、ゆっくりと……にしましょう」
 修太郎さんが少し私から視線をらすようにしてぽつんとつぶやかれたのを見て、私はどうしても確認したくなってしまった。

「あ、あのっ、修太郎さん……!」
 私は恐る恐る修太郎さんに問いかける。
「なんでしょう?」
 修太郎さんが冷静な声でそう聞き返していらしたのが何だか悲しくて、未だ熱っぽくうるんだままの私は一人取り残されたような気持ちになった。

「私、今、もっと、って思ってしまいました……。もっと修太郎さんと、その……キ、キス、したいなって。修太郎さんも……少しは……その、同じように、思ってくださったり……なさいましたか?」

 真っ赤になりながら、それでもどうしてもお聞きしたい、と思ってしまったのです。余りにもあっさりと修太郎さんに唇を離されてしまったことが寂しくて……。もっと、と思ってしまったのは私だけでしょうか?って。

 すぐ前に立っていらっしゃる修太郎さんの作業服のすそをちょん、とつまんで……どうしてもそれだけはお応えいただきたいのです、と意思表示をしたら、ややして、
「日織さん、それ、本気でおっしゃってますか?」

 修太郎さんがギュッと私を抱きしめると、大きく息を吐きながら少し怒ったような声音でそう問いかけていらした。

 その声に驚いて身じろぐと、修太郎さんが許さない、とでも言うように腕に力を込めていらっしゃる。それは、少し苦しいくらいに強い力で。

「――大好きな日織さんあなたが僕を求めてくださっているのが分かっていて……それ以上を望みたいと……この僕が思わないわけがないでしょう?」

 それでも、今日は絶対に指輪を買うのだ、と心に決めてきたから、だから理性を総動員して我慢しているんです。お願いですから決意を揺るがせないでください、と懇願こんがんするように、修太郎さんはおっしゃった。

 私は……そのお言葉をお聞きして、ふっと肩の力が抜けたようにホッとする。
 よかったです、私だけでは……ありませんでした。
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