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それぞれの報告

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 会合には修太郎しゅうたろうさんと健二けんじさんの実父の神崎かんざき天馬てんまさん、修太郎さんの実母の塚田つかだ絢乃あやのさん、健二さんの実母の神崎宮美みやびさん、私の両親である藤原ふじわら日之進にちのしん織子おりこ夫妻、健二さん、佳穂かほさん、修太郎さん、私の九人が集まりました。

 佳穂さんのご両親も交えたかったのですけれど、彼女のご両親は数年前に交通事故で他界なさっていらして、お呼びすることは叶わなくて。

 佳穂さんが一人ぼっちになってしまった時、健二さんが彼女を気にして色々尽くしていらしたことが、正式にお付き合いを始めるにいたったきっかけだったとお聞きした私は、お二人の絆のようなものを深く感じてしまいました。

 佳穂さんが、健二さんのことをとても優しい目で見つめながら、「あの時、健二がいてくれなかったら今の私はいないと思う」とポツンとつぶやいていらしたのがとても印象的でした。

 もちろん、修太郎さんも佳穂さんをいたわって下さったらしいのですけれど、健二さんほど親密には関わっていらっしゃらなかったらしくて。

 それをお聞きした時、修太郎さんはとても優しい方だけれど、すごく真面目で四角四面なところもある方なので、これ以上は踏み込まない、という一種の線引きのようなものをしていらしたのではないかな、と思ってしまいました。


(私の勝手な想像なんですが)

 佳穂さんが、ご両親のことを話してくださった際、「修太郎は優しいけれど、少し冷たいところもあるの。――って言っても、日織ひおりちゃんにはそんなことないと思うんだけどね」と言っていらして……。そうなんじゃないかな?という思いは半ば確信に変わってしまった。

 私にとっての修太郎さんは、ある意味過保護すぎるぐらい過保護で、まるでもう一人のお父様のように感じてしまうこともあるのだけれど……他の方へそこまで踏み込んでおられる彼を見たことはないですし。

(私は修太郎さんにとって“特別”な存在なのだと自惚うぬぼれても許されますか?)

 私の正面に座っていらっしゃる修太郎さんの凛々しいお顔をそっと見やりながら、ふとそんなことを思ってしまって。

 実際にはちょっぴりでも多く、そんなよすがのような気持ちをかき集めておかないと、緊張で今にも倒れてしまいそうだったから。
 本当は修太郎さんに手を握って頂けたらこんな不安はすぐさま吹き飛んでしまうのですけれど、さすがにこんなかしこまった席でそのような甘えたことは頼めません。そもそも距離もあります。

 今日のために選んだ、清楚に見えるネイビーのワンピースのすそをほんのちょっとギュッと握って、心細さにグッと耐えながら、
(上に羽織ったベージュのジャケット、おかしくないかな)
 とか思うのは、なんだか不安で押しつぶされそうだからでしょうか。
 お父様とお母様は見方になってくださると昨夜確約してくださいましたが、それでも神崎さんを前に、私は身がすくむ思いでいます。
 
 場所は料亭やホテルなどではなく、神崎家かんざきけの大広間で……、私は初めて修太郎さんが幼少期をお過ごしになられたお家にお邪魔しています。
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