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見くびっていてすみません?
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ホテルで修太郎さん、健二さん、佳穂さん、私の四人でお食事をしたあの日から、一ヶ月余りが経過した。
その間ずっと、私と修太郎さんは、全員――先の四人に加えて、私の両親、修太郎さんのご両親――が集まれる日を模索し続けている。
実は修太郎さん側のご両親の調整が難航していて――それは修太郎さんに実質二人のお母様がいらっしゃることに起因しているのだけれど――、私は、改めて家を巻き込むということの過酷さを思い知らされている。
「修太郎さん、大丈夫ですか?」
連日のお仕事に加えて、慣れない生家への日参が、修太郎さんの体力を確実に奪っているように見えて、私は不安でたまらなかった。
「うちの母の方はなんとか説得できたんですけど……宮美さんがご自分には関係ないとおっしゃって」
疲れたように、最悪、僕の方は父と実母――絢乃さん――だけで考えましょう、と嘆息されるのへ、私は彼の疲弊したさまが分かっているくせに、なかなか首を縦に振れない。
この話には、健二さんも絡んでいらっしゃるから……私は健二さんのお母様の宮美さん抜きで、というのはどうしても考えられなくて、頑なになってしまっていた。
***
「健……、高橋さん!」
結局私は休憩時間に高橋さん――健二さん――を呼び止めた。
「あの、少しお時間をいただけますか?」
修太郎さんが離席していらっしゃる間に、彼の目を盗んで健二さんに声をおかけした私は、修太郎さんに申し訳ない気持ちがして、ソワソワと落ち着かない。
「兄さんには内緒の話ですか?」
私の様子にピンときたらしい健二さんが、小声でそう耳打ちしていらっしゃる。
「はい……」
つぶやくように首肯すると、「屋上で待っていて下さい」とおっしゃった。
私は修太郎さんに何も告げないままに都市計画課を空けることにほんの少し抵抗を覚えたけれど、人目につかない場所というとそこくらいしかないか、と思って諦める。
(一臨職の私たちが会議室を占拠するわけにもいかないですもんね)
エレベーターを待ちながら、ふとそう思ってから、過日会議室で起こった修太郎さんとのあれこれを思い出してしまって赤面する。
こんな精神状態でエレベーターを待つのが何となく気恥ずかしくなった私は、階段へ足を向けた。
都市計画課は五階。屋上は七階なので、歩いて上がっても知れている。
その間ずっと、私と修太郎さんは、全員――先の四人に加えて、私の両親、修太郎さんのご両親――が集まれる日を模索し続けている。
実は修太郎さん側のご両親の調整が難航していて――それは修太郎さんに実質二人のお母様がいらっしゃることに起因しているのだけれど――、私は、改めて家を巻き込むということの過酷さを思い知らされている。
「修太郎さん、大丈夫ですか?」
連日のお仕事に加えて、慣れない生家への日参が、修太郎さんの体力を確実に奪っているように見えて、私は不安でたまらなかった。
「うちの母の方はなんとか説得できたんですけど……宮美さんがご自分には関係ないとおっしゃって」
疲れたように、最悪、僕の方は父と実母――絢乃さん――だけで考えましょう、と嘆息されるのへ、私は彼の疲弊したさまが分かっているくせに、なかなか首を縦に振れない。
この話には、健二さんも絡んでいらっしゃるから……私は健二さんのお母様の宮美さん抜きで、というのはどうしても考えられなくて、頑なになってしまっていた。
***
「健……、高橋さん!」
結局私は休憩時間に高橋さん――健二さん――を呼び止めた。
「あの、少しお時間をいただけますか?」
修太郎さんが離席していらっしゃる間に、彼の目を盗んで健二さんに声をおかけした私は、修太郎さんに申し訳ない気持ちがして、ソワソワと落ち着かない。
「兄さんには内緒の話ですか?」
私の様子にピンときたらしい健二さんが、小声でそう耳打ちしていらっしゃる。
「はい……」
つぶやくように首肯すると、「屋上で待っていて下さい」とおっしゃった。
私は修太郎さんに何も告げないままに都市計画課を空けることにほんの少し抵抗を覚えたけれど、人目につかない場所というとそこくらいしかないか、と思って諦める。
(一臨職の私たちが会議室を占拠するわけにもいかないですもんね)
エレベーターを待ちながら、ふとそう思ってから、過日会議室で起こった修太郎さんとのあれこれを思い出してしまって赤面する。
こんな精神状態でエレベーターを待つのが何となく気恥ずかしくなった私は、階段へ足を向けた。
都市計画課は五階。屋上は七階なので、歩いて上がっても知れている。
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