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佳穂さん
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とりあえず食事をしながら話しましょう、ということになって。
私は目の前のご馳走に視線を転じる。
パンもスープも鴨肉もみんな美味しそうで。
ついでに言うと、よく冷えた炭酸水もとても美味しかった。
「あ、あの、修太郎さん。グラス……」
そこでふとグラスが手許にないのを思い出した私は、お水が飲みたいです、と先程取り上げられたままのグラスを指差す。修太郎さんは私の言葉を受けて「あ」という顔をなさった。
「ごめんなさい」
私にグラスを返してくださいながら、申し訳なさそうにしゅんとなさるのがとても愛しくて。
愛しいと思ってもいいのだと……その気持ちを隠さなくてもいいのだと言われたことがとても嬉しくて。
私は思わず笑みを浮かべてしまった。
「日織さん?」
修太郎さんがそんな私の笑顔を目ざとく見付けて声をかけて下さるから、私は彼のほうへ唇を寄せて「修太郎さんのこと、大好きだなって思って……。それを隠さなくてもいいんだって気が付いたら、凄く凄く幸せな気持ちになってしまったのです」と耳打ちする。
私の言葉をお聞きになった修太郎さんが、照れたように微笑まれてから、「僕も大好きです」と返してくださった。
「兄さんはずっと日織さん一筋でしたから」
私たちの様子をご覧になられていた健二さんが、意味深な笑みを浮かべて口を開かれた。
「ずっと?」
そういえば今までも要所要所で「ずっと」と言われ続けていた気がする。
そこまで深く考えてこなかったけれど、ずっと、ってどのくらいの期間なのかな?
私が修太郎さんと初めて出会ったのは、市役所に勤め始めた四月からだから……実質、まだ二ヶ月余り。
ずっとって…出会ってからの期間のことを指すんでいいのかな?
以前修太郎さんに「日織さん以外の女性を自分のそばに置くことなど、貴女と出会った日からずっと、一度も考えたことはありません」と言われたことがある。
あれにしても、たかだか一月余りの時間を指すには不自然な言い回しだったような気が。
どう取るのが正解……?
パンをお皿の上で一口大に千切って食べようとしていた私は、思わずその手を止めて健二さんを見つめた。
「兄さん、もしかして……まだ話してないんですか?」
私の視線を受けた健二さんが、修太郎さんに視線を流されてから、彼の反応をご覧になられて「マジか」とおっしゃった。
「てっきりもう話してるんだと思ってましたよ」
呆れ顔で言いいながら、鴨肉を一切れ口に運ばれる。
それを飲み込んでから、炭酸水で口を潤されると、健二さんは私をじっと見つめていらした。
私は目の前のご馳走に視線を転じる。
パンもスープも鴨肉もみんな美味しそうで。
ついでに言うと、よく冷えた炭酸水もとても美味しかった。
「あ、あの、修太郎さん。グラス……」
そこでふとグラスが手許にないのを思い出した私は、お水が飲みたいです、と先程取り上げられたままのグラスを指差す。修太郎さんは私の言葉を受けて「あ」という顔をなさった。
「ごめんなさい」
私にグラスを返してくださいながら、申し訳なさそうにしゅんとなさるのがとても愛しくて。
愛しいと思ってもいいのだと……その気持ちを隠さなくてもいいのだと言われたことがとても嬉しくて。
私は思わず笑みを浮かべてしまった。
「日織さん?」
修太郎さんがそんな私の笑顔を目ざとく見付けて声をかけて下さるから、私は彼のほうへ唇を寄せて「修太郎さんのこと、大好きだなって思って……。それを隠さなくてもいいんだって気が付いたら、凄く凄く幸せな気持ちになってしまったのです」と耳打ちする。
私の言葉をお聞きになった修太郎さんが、照れたように微笑まれてから、「僕も大好きです」と返してくださった。
「兄さんはずっと日織さん一筋でしたから」
私たちの様子をご覧になられていた健二さんが、意味深な笑みを浮かべて口を開かれた。
「ずっと?」
そういえば今までも要所要所で「ずっと」と言われ続けていた気がする。
そこまで深く考えてこなかったけれど、ずっと、ってどのくらいの期間なのかな?
私が修太郎さんと初めて出会ったのは、市役所に勤め始めた四月からだから……実質、まだ二ヶ月余り。
ずっとって…出会ってからの期間のことを指すんでいいのかな?
以前修太郎さんに「日織さん以外の女性を自分のそばに置くことなど、貴女と出会った日からずっと、一度も考えたことはありません」と言われたことがある。
あれにしても、たかだか一月余りの時間を指すには不自然な言い回しだったような気が。
どう取るのが正解……?
パンをお皿の上で一口大に千切って食べようとしていた私は、思わずその手を止めて健二さんを見つめた。
「兄さん、もしかして……まだ話してないんですか?」
私の視線を受けた健二さんが、修太郎さんに視線を流されてから、彼の反応をご覧になられて「マジか」とおっしゃった。
「てっきりもう話してるんだと思ってましたよ」
呆れ顔で言いいながら、鴨肉を一切れ口に運ばれる。
それを飲み込んでから、炭酸水で口を潤されると、健二さんは私をじっと見つめていらした。
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