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健二さん?
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三人で連れ立って歩き始めたけれど、結局私は今もなお、修太郎さんと手を繋いだまま。
私のすぐ右隣に修太郎さん、左のほんの少し前方に健二さん。
歩きながら恐る恐るお二人のお顔を見比べてみたけれど、健二さんは戸惑う私を時折振り返り見ては笑われるばかり。修太郎さんはそんな健二さんとは対照的に、素知らぬ顔で澄ましていらして。でも決して私の手はお放しになられなくて。
こちらを一向に見ようとしてくださらない修太郎さんに焦れて、私はそっと絡められたままの修太郎さんの手を引っ張る。
「あの……しゅ、塚田さん?」
一応健二さんの前ではあるし、何となく職場モードで苗字をお呼びしたら、健二さんにクスクスと笑われてしまう。
そんな健二さんを一瞬睨み付けると、修太郎さんが「日織さん、いつものように修太郎と……」とおっしゃって。
確かにお二人とも私のことを先ほどから下の名前で呼んでおられるし、恐らく今はお仕事中ではないからそれでいいんだとは……思う。思うけれど、やはり高橋さんだとずっと思っていた方の前で――ましてや仮にも許婚である健二さんの前で――その呼び方でいいのかな、とか考えてしまって、私は思い切れずに躊躇する。
さっき、修太郎さんに肩を叩かれたときは、咄嗟のことで思わずお名前を口走ってしまったけれど、あの瞬間、私は健二さんの存在には気付いていなかったのだ。
どうしていいか分からず、思わず立ち止まって、オロオロと視線をさまよわせたら、「日織さん。今更そんな鯱張らなくても大丈夫ですよ。俺、兄さんから聞いてお二人のことは概ね知ってますし。その俺がいいって言ってるんですから堂々と呼んでやればいいんです。貴女がそんなだから兄さんだって俺に対して――」と続けようとしたところへ、修太郎さんが「健二、要らないことは言わなくていい」と遮っていらして。
(私がはっきりしないから、修太郎さんが健二さんに対して何かしてしまっているのでしょうか?)
修太郎さんのお顔を下から見上げてみたけれど、修太郎さんは何もおっしゃらなかった。
***
「ほら、予約の時間が近いですし、あの人は待たせると後が怖いので、急ぎますよ?」
腕時計をちらりと見られた健二さんが、膠着したままの微妙な空気を断ち切るように、そうおっしゃった。
言うなりさっさと歩き出してしまう彼の後に続いて、修太郎さんが「行きましょう」と手を引いてくださる。
私のすぐ右隣に修太郎さん、左のほんの少し前方に健二さん。
歩きながら恐る恐るお二人のお顔を見比べてみたけれど、健二さんは戸惑う私を時折振り返り見ては笑われるばかり。修太郎さんはそんな健二さんとは対照的に、素知らぬ顔で澄ましていらして。でも決して私の手はお放しになられなくて。
こちらを一向に見ようとしてくださらない修太郎さんに焦れて、私はそっと絡められたままの修太郎さんの手を引っ張る。
「あの……しゅ、塚田さん?」
一応健二さんの前ではあるし、何となく職場モードで苗字をお呼びしたら、健二さんにクスクスと笑われてしまう。
そんな健二さんを一瞬睨み付けると、修太郎さんが「日織さん、いつものように修太郎と……」とおっしゃって。
確かにお二人とも私のことを先ほどから下の名前で呼んでおられるし、恐らく今はお仕事中ではないからそれでいいんだとは……思う。思うけれど、やはり高橋さんだとずっと思っていた方の前で――ましてや仮にも許婚である健二さんの前で――その呼び方でいいのかな、とか考えてしまって、私は思い切れずに躊躇する。
さっき、修太郎さんに肩を叩かれたときは、咄嗟のことで思わずお名前を口走ってしまったけれど、あの瞬間、私は健二さんの存在には気付いていなかったのだ。
どうしていいか分からず、思わず立ち止まって、オロオロと視線をさまよわせたら、「日織さん。今更そんな鯱張らなくても大丈夫ですよ。俺、兄さんから聞いてお二人のことは概ね知ってますし。その俺がいいって言ってるんですから堂々と呼んでやればいいんです。貴女がそんなだから兄さんだって俺に対して――」と続けようとしたところへ、修太郎さんが「健二、要らないことは言わなくていい」と遮っていらして。
(私がはっきりしないから、修太郎さんが健二さんに対して何かしてしまっているのでしょうか?)
修太郎さんのお顔を下から見上げてみたけれど、修太郎さんは何もおっしゃらなかった。
***
「ほら、予約の時間が近いですし、あの人は待たせると後が怖いので、急ぎますよ?」
腕時計をちらりと見られた健二さんが、膠着したままの微妙な空気を断ち切るように、そうおっしゃった。
言うなりさっさと歩き出してしまう彼の後に続いて、修太郎さんが「行きましょう」と手を引いてくださる。
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