【完結】【R18】キス先① あなたに、キスのその先を。

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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連絡先と連絡手段

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「お父様。私、健二けんじさんとお話をしたいのですが……連絡先を教えていただけますか?」

 お風呂で身体をさっぱり清め終えると、私はその足でお父様のところへ行って、そう切り出した。
 今までこういうことを言わずにきたこと自体、おかしいのだと、どうして気付けなかったんだろう。
 私はいつも健二さん相手の方からの連絡待ちで……その連絡にしたっていつもお父様任せ。じかにお話させていただいたのは、先日のお電話が初めてだなんて……。
 そんな状態を、どうして何の疑問も覚えずに、甘んじて受け入れてこられたんだろう?

 私は健二さんを許婚いいなずけと称しながら、そのじつ、彼自身のことを見ようとはしてこなかったんだと思う。

「やぶから棒にどうしたんだい?」

 なんの前置きもせずにそんなことを切り出したものだから、お父様を驚かせてしまったみたい。

「私、市役所の皆さんからお尻を叩かれてしまいました。もう大人なのに……何でもかんでもお父様に頼りすぎてるって。言われるまで気付けなかったのも恥ずかしかったですし、気付かせて頂いたからにはいい加減、自分のことは自分でやらなきゃって反省したのです。だから……健二さんにも私自身が行動して、ちゃんと向き合いたいなって思ったんです」

 たくさんたくさん理由を並べたけれど……その根元となった理由の、好きな人が出来たことは言えなかった。
 でも、それでもいいかなって思ってしまって。

(まずは健二さんとお話させて頂いてからなのです)

 お父様やお母様、そしてあちらのご家族へは健二さんとお話が済んでからでも遅くないはず。


 私の言葉を黙って聞いていらしたお父様が、「わかった」と言って立ち上がられた。
 そうしていつも持ち歩いていらっしゃる手帳を紐解ひもといて、健二さんの連絡先が記された箇所を指し示してくださる。

 私はそれを自分のスケジュール帳のアドレス欄にメモしてから、もうひとつ言わねばならないことがあるのを思い出した。

「あの、お父様……。もうひとつお話が……」

 それを言おうとしたら、健二さんの連絡先をお聞きした時よりも緊張してしまったのは何故だろう。

「なんだい?」

 お父様が穏やかな目で私を見つめてくださって……私はそのことにほんの少し安堵あんどして、思い切って口を開く。

「あの……貯金を少し下ろして携帯電話を契約しても構わないでしょうか?」

 今までお友達が手にしているのを見ても、さして必要性を感じなかったそれを、生まれて初めて欲しいと思ってしまった。

 私も人並みに、修太郎さん好きな人とメールをしたりお話をしたりしてみたい。

 修太郎しゅうたろうさんは特に何もおっしゃらなかったけれど、歓迎会のあったあの日、私に御自身の連絡先を渡してくださってから、私が携帯を持っていないことを知ると、少し驚いていらした。

 そうして「日織さんらしいですね」と微笑まれたのを覚えている。

(私が携帯を持つとお話したら、修太郎さんは驚いたりなさるでしょうか)

 修太郎さんの反応を想像したら、何だかワクワクしてしまった。

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