【完結】【R18】キス先① あなたに、キスのその先を。

鷹槻れん(鷹槻うなの)

文字の大きさ
上 下
38 / 233
*不機嫌な修太郎さん

5

しおりを挟む
「あのっ、……お手洗いに……」

 それは自分がまだ先ほどの熱の名残なごりを、身体に残したままだと告白するようで……とても恥ずかしかった。

 それなのに。

「その必要はありません」

 修太郎しゅうたろうさんは私の身体をギュッと抱きしめると、私の求めを無下むげになさる。そればかりか、机に手をついて立つようにうながされて。

「しゅ、修太郎さんっ?」

 その行動に驚いて思わず彼を振り返ると、修太郎さんが少し低めの声で「動かないで?」とおっしゃりながら、私の後ろにひざまずかれたのが見えた。

「な、何を――っ」

 なさるおつもりですか?と聞こうとしたら、刹那お尻に彼の呼気を感じて。

「あ、ゃっ……ん」

 次の瞬間、温かく湿ったものが下半身をってきて、その甘くとろかされるような刺激に、身体が痺れたようにびくりと反応した。

 何が起こっているのか理解が追いつかないその感触に、私はもじもじと足をすり合わせる。
 けれど、太腿ふとももを修太郎さんの両手に押さえられていて、思うようには動けなくて。

 自由のきかないもどかしさが、余計にむずむずとした変な気持ちを呼んでしまう。

「んっ、あ、それ……ダメっ、しゅ、たろぉ、さんっ」

 このままじゃ、さっきみたいにゾクゾクしたのが、きちゃう……。

「や、あんっ」

 思った途端、また下腹部がじゅん、と切なくうずいて……熱い密が吐き出されたのがわかった。
 下着を身につけていない現状であふれ出たぬめりは、肌を伝うしかないはずで。

(どうしよう。私、スカートまで汚してしまったかもしれないのですっ)

 そう思って、恐る恐る背後を振り返ったら――。

 口許くちもとを片手で拭いながら、修太郎さんが立ち上がられるところだった。

「え、うそ……」

 起こったことを認めたくなくて、はからずそんな声がもれる。

 修太郎さんは、私に何をなさったのかはおっしゃらなかったけれど、彼の今し方の行動で、何があったのかを察した私は、恥ずかしさに彼の方を見られなくなる。
 視界の端で、彼が眼鏡を手に取られたのが見えて。何となくその仕草で、これ以上酷いことはされないような、そんな気がした。

 修太郎さんは私の背後に再度かがみ込むと、ご自身のハンカチで、私の太腿ふとももを濡らしている残留物を丁寧に拭ってくださる。

 私は修太郎さんが背後におられる間、どうしていいか分からず、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

 しばらく私が肌をぬぐわれる音と、二人の息遣いだけが部屋の中にあって、どちらも何も喋らない状態が続いて――。

 その沈黙を破ったのは修太郎さんだった。

日織ひおりさん、ごめんなさい……」

 私を清め終わった修太郎さんに、そっと身体の向きを変えられて、彼の方を向かされる。先ほどまでの強気が嘘みたいにどこかおろおろとした様子で頭をお下げになられた修太郎さんを、私はまるで他人ひとごとのようにうつろな心のまま、ぼんやりと見つめた。

 私につむじをお見せになられたまま、
「――僕はただ……」
 とつぶやくようにお続けになる修太郎さんの言葉ひとつひとつを、けれど私はまともに受け取れるような精神状態にはなくて――。

 自分ではそのつもりもなく、気がつけば彼の後頭部からでさえも、視線を伏せるようにしてそらしてしまっていた。

 そんな私の様子に気がついたらしい修太郎さんが、気遣わしげに私の両腕に触れていらっしゃる。

 その感触ですら怖くて、思わずビクッと肩を震わせてしまった私に、修太郎さんはまるでれ物を扱うように、さらに柔らかく触れていらして。

 それが逆に、さっきまでの強引な修太郎さんの触れ方と違いすぎて、私は誰に触れられているのか分からなくて混乱してしまった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

溺愛社長の欲求からは逃れられない

鳴宮鶉子
恋愛
溺愛社長の欲求からは逃れられない

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。

真守 輪
恋愛
年下の恋人を持つ図書館司書のわたし。 地味でメンヘラなわたしに対して、高校生の恋人は顔も頭もイイが、嫉妬深くて性格と愛情表現が歪みまくっている。 ドSな彼に振り回されるわたしの日常。でも、そんな関係も長くは続かない。わたしたちの関係が、彼の学校に知られた時、わたしは断罪されるから……。 イラスト提供 千里さま

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...