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告白

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 ややして、私の前に運ばれてきたピーチサワー。
 ほんのりと桃色に見える液体の中、小さな気泡が次々に上がっていく。

 生まれて初めてのお洒落しゃれなお酒に緊張しながら、ほんの少し口に含んでみる。

 アルコール臭かったり苦かったりするのかな?と勝手に構えていた私は、甘やかな桃の炭酸ジュースのように慣れ親しんだ飲み口に驚いた。

「……美味しい」

 思わず吐息とともにそんな声が漏れてしまうほどに、それは好みのお味で。
 薬膳酒やくぜんしゅのようなトロリと喉に絡みつくしつこさや、薬臭い癖のようなものも微塵もなく、ただただ甘くて美味しい。

「でしょー? お酒飲めない子でも大抵美味しいって言って飲むんっすよ、サワー系」
 はやしさんが、美味しいのはまるで自分の手柄のようにニコニコしながらそう仰った。

「はい、オススメして頂いてよかったです」
 林さんの嬉しそうな表情に、私も釣られて顔がほころんでしまう。

 試しに一口だけ、のつもりで頼んだピーチサワーだったけれど。
 気がつくと、私は全部飲んでしまっていて、グラスの中は氷だけになっていた。

 うー。調子に乗って水分を摂り過ぎてしまった。
 私は何となくトイレに行きたくなってきて、皆さんに会釈えしゃくしてそっと席から立ち上がろうとした。けれど、身体を支えようと机についた手にも、床を踏みしめようと伸ばした足にも、嘘みたいに力が入らなくて驚く。

「あれれぇ?」
 緊急事態のはずなのに、頭にもぼんやりとしたかすみがかかったようで、まるで危機感がわいてこない。
 そればかりか、現状がおかしくなって思わず笑いまでこみ上げてくる始末。


「あ、藤原ふじわらさん、もしかして酔っちゃいました?」
 森重もりしげさんが言うのへ、はやしさんが「あ。彼女のコップ、もうからっぽだ」とおっしゃった。

 それを聞いた塚田つかださんが、無言で席をお立ちになる。
「係長?」
 林さんたちが怪訝そうに声をかけるのへ、
「彼女が酔っ払ったら僕が面倒を見るから大丈夫だって言って飲ませたのは君たちだろう?」

 塚田さんは、言うが早いか立てずに困っていた私に手を差し伸べていらした。


「ほら、つかまって。――っていうか、立てますか?」

 わわわ。信じられないっ。塚田さん、それはもしかして……私に仰ってますか?
 もう、なんだかホント、夢のようです……。

 まるでミュージカルか何かに登場する王子様のように、私に手を差し出しておられる塚田さんを見上げて、私は彼のあまりのカッコ良さにトロンととろけて笑顔になる。

 作業着姿の私の王子様は、そんな私を見て、何故か照れたように一瞬視線をさまよわせた。

 塚田さんが私を見て照れるとか……何てご都合主義なシチュエーションなのっ!
 やっぱりこれは夢ね……。
 だって現実で、こんなこと絶対にありえないもの。

 ドリーマーな私は、きっとお酒を飲んですぐ眠ってしまったんだ。

 でも、そうだ。夢の中なら私、一切のしがらみから解放されて……自由になれるはず。

 そう思った私は、普段なら絶対に言えない言葉を口のに乗せてみた。
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