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管理係の中本さん

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「――あの、それで……荷物はどこに置けば……」
 深呼吸をした後に、本来ここへ来た目的に戻すべく、恐る恐るそう切り出すと、中本さんが荒々しくひとつのロッカーをバン!と叩いた。

「ここ! 空きになってるから好きに使っていいわ。鍵もかかるけど、その鍵を失くしたら開かなくなるから気をつけて。鍵にキーホールダーやリボンをつけて目立つようにするのもお勧めよ。……ロッカーには後で名前、テプラで作って付けといてあげるから、安心して入れて」

 言いながら、一応確認、とばかりにロッカーの扉を開けて中を一瞥すると、中本さんは一歩下がって私に場所をあけてくれた。

 つい今しがた、宣戦布告をしたくせに、仕事のことになるとちゃんと私に対する気遣いを忘れないでいてくれる中本さんの言動に、私はほんの少し驚いた。

 この人は、意地悪なだけの女性ではないのかもしれない。
 もし……私が恋敵ライバルとして姿を現さなければ、あるいは仲良くなれていたのかも?


 女子中、女子高、女子大……と思春期を過ぎてからはずっと同性のなかで過ごしてきた私は、もっと性格のきつい人とも机を並べてきた。
 それに比べると、中本さんからは根っこの部分に凄く優しいものを感じてしまう。

(いつか、中本さんと一緒にお昼とか食べられたらいいなぁ……)
 暖かな日差しの中で、手作りのお弁当を二人で持ち寄って、おかずを交換したりして……。
 うっとりとそんなことを夢想していたら……。
「何よっ?」
 またしても束の間ドリーマーになっていた私は、中本さんの声でハッとした。
「あ、ご……ごめんなさい。中本さん、お優しいなって思って、ほんわかしてしまいました」
 私のその言葉に、中本さんがきょとんとする。

「アンタ、それ本気で言ってるの?」
 さっき、散々酷いことを言ったのに……正気?
 私から視線をそらしてブツブツと不平を言う彼女の横顔が、ほんのり赤くなっているように見えた。

 塚田さんが、中本さんを信頼してお願いごとをなさった理由が、何となく分かった気がした。
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