【完結】【R18】つべこべ言わずに僕に惚れろよ

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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■『今日はハグの日』■ハグの日にちなんだ短編です

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「ね、葵咲きさき、今日はハグの日なんだって。知ってた?」

 葵咲ちゃんがお風呂に入っている間、見るとはなしにぼんやりとテレビを観ていたら、コメンテーターがそんなことを言っていた。


 そんな素敵な日。口実にしない手はないよね?


 僕はお風呂から上がってきた葵咲ちゃんを、背後からギュッと抱きしめて腕の中に収めるなり、そう耳元でささやいた。

「もぉ、理人りひとっ。私っお風呂から上がったばかり、だよっ?」

 だから暑いのだと言外に含ませて抗議する葵咲ちゃんに、「うん、汗かいてるね」と答えながらも僕はお構いなしだ。

 葵咲ちゃんを腕の中に閉じ込めたまま、リビングのテーブルに置いてある扇風機のリモコンを手に取ると、スイッチを入れる。

 エアコンの程良く効いた室内。
 扇風機が送り出してくる風も、ひんやりと冷たくて心地よい。


「これで解決だね~♪」

 言いながらリモコンをテーブルの上に戻して葵咲ちゃんのパジャマの裾から両手を差し入れると、ナイトブラを下からたくし上げるようにしてふんわりとやわらかな彼女の胸に手を這わせる。

「やっ。理人の手っ、あつい、っ」

 葵咲ちゃんが服の中に差し入れた僕の手を、上からギュッと掴むようにして抗議してきて。
 僕はそれを素知らぬふりをしてスルーすると、「葵咲の肌も……いつもより体温高い」とはぐらかすように言って耳元でくすくす笑うんだ。

 もちろん、葵咲ちゃんの耳と首筋に吐息が掛かるように計算して。


 手のひらに心地よい弾力を伝えてくる葵咲きさきちゃんのやわ肌は、暑いと訴える彼女の言葉の通りしっとりと汗ばんでいた。
 それがまた、手のひらに吸い付いてくるみたいでたまらない。


「大好きな女の子のやわらかな胸を、好きなときに好きなだけ触らせてもらえるのって……何て幸せなんだろう」

 うっとりとつぶやけば、「私、そんなの許可してない……」と小さく抗議の声が落とされる。

 だからと言って全力で拒否してこないのは、葵咲ちゃんも僕に触れられることを本気で嫌がってない証拠サインだ。

 葵咲ちゃんは言葉裏腹な女の子だから。


「ね、葵咲、このままベッド行こっか」

 甘えるように誘ったら「な、んで?」って返ってくるのも、想定の範囲内。


「何で?って。さっき僕、ちゃんと言ったと思うんだけどな? 今日はハグの日だよって」


 だから裸で抱きしめ合うのは

 もちろん、僕は何でもない日だって、何だかんだと理由をつけてキミに欠かさず触れるんだけどね。


 けどさ。年に1回。今日ぐらいは「ハグの日」のせいにして、思う存分甘えても構わないよね?


「――葵咲、愛してる」

 葵咲ちゃんの小さな身体を、柔らかな胸ごとギュッと抱きしめながら、僕は彼女の真っ赤になった耳元に愛の言葉をささやいた。


     END(2021/08/09)
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