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■『いなくならないでね?』■エブ4万スターお礼企画
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葵咲ちゃんが毎週楽しみにしているドラマがある。
僕はさして興味はないのだけれど、ドラマに一喜一憂する葵咲ちゃんを見たくて一緒に観ている感じ。
その中で、まさかまさかの展開。
ヒロインの恋人の男が死んじゃった!
当然葵咲ちゃんははらはらと涙を落としてさめざめと泣いて。
それを見ている僕もキュッと胸が苦しくなった。
――誰だよ、こんなクソみたいな脚本書いたやつ!
誰よりも大好きで、何よりも大事で、いつも笑顔で居て欲しい葵咲ちゃんを泣かせるなんて、例え絵空事でだって許せない。
僕は心の中でそのドラマの作り手達を口汚く罵った。
作品自体はしつこすぎるくらいに濃厚な恋愛ものだったけれど、そんなの無視してファンタジージャンルに放り込んで、死んだ恋人を生き返らせてやりたい!
葵咲ちゃんのために!
頭の中では馬鹿なことを考えている僕だったけれど、顔には微塵も出さずに葵咲ちゃんの顔を覗き込む。
「葵咲、大丈夫?」
そっと葵咲ちゃんを労るように、ひとり静かに泣き続ける彼女の背中に腕を回したら、葵咲ちゃんが無言でギュッとしがみついてきた。
こんな反応、基本ツンな葵咲ちゃんには珍しい。
ホント、なんて事してくれるんだよ、クソドラマめ!
***
あれから数日。
葵咲ちゃんがやたらと僕のそばを離れたがらない気がして……嬉しい反面、何か悩み事でもあるのかな?ととても心配になる。
「ねぇ葵咲ちゃん。何か気に病んでる事とかある?」
あえて「どうしてそんなに僕から離れないの?」とは聞かずに婉曲的にそう問いかけたら、葵咲ちゃんがゆらゆらと揺らめくアーモンドアイで、僕をじっと見上げてくるんだ。
「ん?」
その視線にそっと先を促すと、葵咲ちゃんがポツンとつぶやいた。
「理人がいなくならないように見張ってるの」
あのドラマ。
いつも幸せそうに笑い合っていた、仲良しの2人が、彼氏の事故死で突然引き裂かれてしまった。
ドラマはまだ続いていて、ネットで拾い読みした感じだと、残された彼女は、亡くした彼氏に似た別の男性と恋に落ちる段取りが見え見えで。
でも――。
「バカだな、葵咲。僕がキミを置いて居なくなったりするはずないじゃないか」
僕が先に死んで、葵咲ちゃんが別の誰かと結ばれるだなんて――。
例えそれが僕と似た男だと言われたって、全然嬉しくなんかない。
だってそれは僕じゃないんだから。
「僕が死ぬときは、葵咲ちゃんと一緒だよ」
そっと彼女の耳元で優しくつぶやいて。
だけどその言葉が孕む狂気に、僕はちゃんと気付いている。
――僕ひとりでは死なないし、葵咲ちゃんひとりでは死なせない。
僕がそんなことを思っているだなんて知ったら、葵咲ちゃんは怖がるかな。
だけど僕は……キミが僕のいない世界で生きていくことを想像できないし、逆も然りなんだ。
「ねぇ葵咲。ずっとずっと一緒だよ?」
ギュッと葵咲ちゃんを腕の中に閉じ込めながら、僕は自分の中の狂おしいほどに彼女を求めてやまない気持ちが少しだけ怖くなる。
どうか僕が彼女の後を追って逝ける結末になりますように。
どんな形であれ、僕に葵咲ちゃんを殺させないで?
END(2021/04/27)
僕はさして興味はないのだけれど、ドラマに一喜一憂する葵咲ちゃんを見たくて一緒に観ている感じ。
その中で、まさかまさかの展開。
ヒロインの恋人の男が死んじゃった!
当然葵咲ちゃんははらはらと涙を落としてさめざめと泣いて。
それを見ている僕もキュッと胸が苦しくなった。
――誰だよ、こんなクソみたいな脚本書いたやつ!
誰よりも大好きで、何よりも大事で、いつも笑顔で居て欲しい葵咲ちゃんを泣かせるなんて、例え絵空事でだって許せない。
僕は心の中でそのドラマの作り手達を口汚く罵った。
作品自体はしつこすぎるくらいに濃厚な恋愛ものだったけれど、そんなの無視してファンタジージャンルに放り込んで、死んだ恋人を生き返らせてやりたい!
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頭の中では馬鹿なことを考えている僕だったけれど、顔には微塵も出さずに葵咲ちゃんの顔を覗き込む。
「葵咲、大丈夫?」
そっと葵咲ちゃんを労るように、ひとり静かに泣き続ける彼女の背中に腕を回したら、葵咲ちゃんが無言でギュッとしがみついてきた。
こんな反応、基本ツンな葵咲ちゃんには珍しい。
ホント、なんて事してくれるんだよ、クソドラマめ!
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葵咲ちゃんがやたらと僕のそばを離れたがらない気がして……嬉しい反面、何か悩み事でもあるのかな?ととても心配になる。
「ねぇ葵咲ちゃん。何か気に病んでる事とかある?」
あえて「どうしてそんなに僕から離れないの?」とは聞かずに婉曲的にそう問いかけたら、葵咲ちゃんがゆらゆらと揺らめくアーモンドアイで、僕をじっと見上げてくるんだ。
「ん?」
その視線にそっと先を促すと、葵咲ちゃんがポツンとつぶやいた。
「理人がいなくならないように見張ってるの」
あのドラマ。
いつも幸せそうに笑い合っていた、仲良しの2人が、彼氏の事故死で突然引き裂かれてしまった。
ドラマはまだ続いていて、ネットで拾い読みした感じだと、残された彼女は、亡くした彼氏に似た別の男性と恋に落ちる段取りが見え見えで。
でも――。
「バカだな、葵咲。僕がキミを置いて居なくなったりするはずないじゃないか」
僕が先に死んで、葵咲ちゃんが別の誰かと結ばれるだなんて――。
例えそれが僕と似た男だと言われたって、全然嬉しくなんかない。
だってそれは僕じゃないんだから。
「僕が死ぬときは、葵咲ちゃんと一緒だよ」
そっと彼女の耳元で優しくつぶやいて。
だけどその言葉が孕む狂気に、僕はちゃんと気付いている。
――僕ひとりでは死なないし、葵咲ちゃんひとりでは死なせない。
僕がそんなことを思っているだなんて知ったら、葵咲ちゃんは怖がるかな。
だけど僕は……キミが僕のいない世界で生きていくことを想像できないし、逆も然りなんだ。
「ねぇ葵咲。ずっとずっと一緒だよ?」
ギュッと葵咲ちゃんを腕の中に閉じ込めながら、僕は自分の中の狂おしいほどに彼女を求めてやまない気持ちが少しだけ怖くなる。
どうか僕が彼女の後を追って逝ける結末になりますように。
どんな形であれ、僕に葵咲ちゃんを殺させないで?
END(2021/04/27)
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