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■私を、食べて?■2021.バレンタイン書き下ろし
続きはベッドで
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***
睨んだ通り、仕事をして帰ってくる僕のために、ちゃんと湯張りを済ませてくれていた葵咲ちゃんに感謝しつつ……僕は彼女の服を一枚一枚丁寧に剥ぎ取っていく。
「り、ひとも……スーツ、チョコついちゃってる」
自分だけ脱がされるのは恥ずかしいんだろう。
葵咲ちゃんが、僕の大好きなアーモンドアイを伏せ目がちにしてポツンとつぶやいた。
「あ、本当だ。悪いけど葵咲、脱がせてくれる?」
小さく笑みを含ませた声で優しく強請れば、葵咲ちゃんが小さくコクンと首肯して。
小さな手で、ジャケットとを脱がせて、ズボンのベルトを外してくれた。
そうしてフロントホックに手をかけたところで、
「っ‼︎」
僕のたかぶりに気がついて、慌てて手を引っ込めるんだ。
「あ、あとは……自分でっ」
とか、目を逸らしながら真っ赤になるの、可愛いなぁ、本当。
キミのそう言う恥ずかしがり屋なところが、僕はたまらなく大好きなんだ。
下着姿の葵咲ちゃんを抱き寄せて、舌を擦り合わせるような口付けを落としながら、僕は自分の服を少しずつ脱ぎ落としていく。
ゴムはこう言うことを想定して、洗面台にいくつか置いてあったはずだ。
いつもと違ってまだ夕方だし、時間はたっぷりあるよね。
隠してあるのだけで足りるかな?
うっとりと僕にしがみついてくる葵咲ちゃんを抱きしめながら、僕はそんなことを考えた。
***
「あの、そういえば理人……」
湯船の中。
ふと何かを思い出したように僕を見上げてくるアーモンドアイの瞳が可愛くて。
既に数回彼女の――というよりゴムの中で果てた僕だったけれど、そんな風に上目遣いで見上げられるとまたしたくなる。
「……今日は誰かからチョコ」
そんな僕の欲望なんて知らぬげに、葵咲ちゃんがそう言って、ソワソワと僕を見つめてくる。
僕は葵咲ちゃんの言葉にドキッとさせられて、あのチョコのことを言うべきか否か逡巡した。
「バイトの子達から、みんなで食べる用の大きなのをひとつだけ」
実のところ、同僚や学生からいくつか差し出されたけれど、受け取ったのは結局それだけだ。
言葉を選びながらそう答えたら、「何か悔しいな」って。どう言うこと?
「理人がモテないわけないの、私知ってる」
ポツンとそうつぶやいて、まるでその先を言うのが恥ずかしいみたいに、葵咲ちゃんがお湯に口元を半分沈み込ませてと、ブクブクと泡を吐き出す。
「たくさん貰ってこない理人に、何で?って思うのと同じぐらい……よかったって思ってる」
ややして観念したようにそうこぼした葵咲ちゃんが愛しすぎて。
「僕が受け取りたいって思えるチョコは……キミからのものだけだよ?」
言ったら、「でも……失敗しちゃったから」って声を震わせる。
「失敗? 僕的には美味しくいただけて万々歳だったんだけどな?」
葵咲ちゃんのアゴを掴んで仰向かせると、ポロリと涙がこぼれ落ちて胸がギュッと締め付けられる。
僕は葵咲ちゃんに「大丈夫だよ」って気持ちを込めながら、やんわりと口付けを落とした。
そうしてこぼれ落ちた涙を舌先で舐めとって。
途端、先程までの全身を舐め回すようなあれこれを思い出したらしい葵咲ちゃんが、
「バカ……」
とつぶやいて、くるりと向きを変えると僕にしがみついてくるんだ。
「さすがにこのままだとのぼせちゃいそうだし、続きはベッドでしようか?」
ダメ元でそう言ったら、こくん、と小さくうなずいてくれるとか……マジか!
いつもなら「まだ、するの?」なところなんだけどな。
「失敗しちゃったチョコの代わりに私を……」
――食べて?
そんな言葉が聞こえたような気がしたのは、きっと気のせいじゃないはずだ。
END(2021/02/13)
睨んだ通り、仕事をして帰ってくる僕のために、ちゃんと湯張りを済ませてくれていた葵咲ちゃんに感謝しつつ……僕は彼女の服を一枚一枚丁寧に剥ぎ取っていく。
「り、ひとも……スーツ、チョコついちゃってる」
自分だけ脱がされるのは恥ずかしいんだろう。
葵咲ちゃんが、僕の大好きなアーモンドアイを伏せ目がちにしてポツンとつぶやいた。
「あ、本当だ。悪いけど葵咲、脱がせてくれる?」
小さく笑みを含ませた声で優しく強請れば、葵咲ちゃんが小さくコクンと首肯して。
小さな手で、ジャケットとを脱がせて、ズボンのベルトを外してくれた。
そうしてフロントホックに手をかけたところで、
「っ‼︎」
僕のたかぶりに気がついて、慌てて手を引っ込めるんだ。
「あ、あとは……自分でっ」
とか、目を逸らしながら真っ赤になるの、可愛いなぁ、本当。
キミのそう言う恥ずかしがり屋なところが、僕はたまらなく大好きなんだ。
下着姿の葵咲ちゃんを抱き寄せて、舌を擦り合わせるような口付けを落としながら、僕は自分の服を少しずつ脱ぎ落としていく。
ゴムはこう言うことを想定して、洗面台にいくつか置いてあったはずだ。
いつもと違ってまだ夕方だし、時間はたっぷりあるよね。
隠してあるのだけで足りるかな?
うっとりと僕にしがみついてくる葵咲ちゃんを抱きしめながら、僕はそんなことを考えた。
***
「あの、そういえば理人……」
湯船の中。
ふと何かを思い出したように僕を見上げてくるアーモンドアイの瞳が可愛くて。
既に数回彼女の――というよりゴムの中で果てた僕だったけれど、そんな風に上目遣いで見上げられるとまたしたくなる。
「……今日は誰かからチョコ」
そんな僕の欲望なんて知らぬげに、葵咲ちゃんがそう言って、ソワソワと僕を見つめてくる。
僕は葵咲ちゃんの言葉にドキッとさせられて、あのチョコのことを言うべきか否か逡巡した。
「バイトの子達から、みんなで食べる用の大きなのをひとつだけ」
実のところ、同僚や学生からいくつか差し出されたけれど、受け取ったのは結局それだけだ。
言葉を選びながらそう答えたら、「何か悔しいな」って。どう言うこと?
「理人がモテないわけないの、私知ってる」
ポツンとそうつぶやいて、まるでその先を言うのが恥ずかしいみたいに、葵咲ちゃんがお湯に口元を半分沈み込ませてと、ブクブクと泡を吐き出す。
「たくさん貰ってこない理人に、何で?って思うのと同じぐらい……よかったって思ってる」
ややして観念したようにそうこぼした葵咲ちゃんが愛しすぎて。
「僕が受け取りたいって思えるチョコは……キミからのものだけだよ?」
言ったら、「でも……失敗しちゃったから」って声を震わせる。
「失敗? 僕的には美味しくいただけて万々歳だったんだけどな?」
葵咲ちゃんのアゴを掴んで仰向かせると、ポロリと涙がこぼれ落ちて胸がギュッと締め付けられる。
僕は葵咲ちゃんに「大丈夫だよ」って気持ちを込めながら、やんわりと口付けを落とした。
そうしてこぼれ落ちた涙を舌先で舐めとって。
途端、先程までの全身を舐め回すようなあれこれを思い出したらしい葵咲ちゃんが、
「バカ……」
とつぶやいて、くるりと向きを変えると僕にしがみついてくるんだ。
「さすがにこのままだとのぼせちゃいそうだし、続きはベッドでしようか?」
ダメ元でそう言ったら、こくん、と小さくうなずいてくれるとか……マジか!
いつもなら「まだ、するの?」なところなんだけどな。
「失敗しちゃったチョコの代わりに私を……」
――食べて?
そんな言葉が聞こえたような気がしたのは、きっと気のせいじゃないはずだ。
END(2021/02/13)
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