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■全てを熱のせいにして■オマケ的短編⑦

だから言ったのに4

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 僕が病気になってからは、葵咲ちゃんにうつしたくなくて、かたくなに彼女のことを避けてきた。

 キスだって冗談抜きに丸4日はしていない。だから、正直葵咲ちゃんからのおねだりを、僕は飛び上がりそうになるくらい喜んだ。

 それでも葵咲ちゃんの体調をおもんばかって、精一杯我慢して軽く唇が触れるだけのキスを落とすに留めたら、葵咲ちゃんが僕の服の胸元を引っ張って、「そ、んなんじゃ、足、りな……い」って言うんだ。

 マジか!

 葵咲きさきちゃんの、いつもより熱い身体が僕にすがり付いてくるのが堪らなく愛しい。
 鼻先を掠める彼女の吐息も、常より熱を帯びているせいか、一層艶めいて甘露に感じられて。

 僕は葵咲ちゃんに負担にならないよう彼女をそっとベッドに寝かせると、覆い被さるようにして彼女の唇をもう一度奪った。

 微熱はあるけれど、葵咲ちゃんよりはるかに体温の低くなった僕からは、彼女の口中はとても熱く感じられた。
 熱、随分高いに違いない。
 38度代か、下手したら39度を越えているかも?

 余り無茶をさせるわけにはいかないと思うのに、僕がおずおずと差し入れた舌に、葵咲ちゃんが追いすがるように自分のそれを絡めてきて。

「……んっ」

 口付けに隙間が出来たとき、切なく漏らされた吐息が色っぽくて……。

 僕は彼女を抱きたいという衝動を抑えるのに理性を総動員しなくちゃいけなかった。

 なのに――。
「りひ、と……。このまま……続け、ても、い、ぃよ?」
 とか!

 いつもの恥ずかしがり屋の葵咲ちゃんからは到底出ない言葉だ。

 コレ、絶対熱のせいだよね?

 僕は愛しい彼女からの抗いがたい誘惑に屈してしまいそうな自分を力尽くで何とかねじ伏せて、「続き、したかったら元気になって?」って、やっとの思いで告げたんだ。

 こんなにしんどそうなキミを抱くとか……いくら何でも出来ないよ?

「こん、な、に……なってる、のに?」
 なのに葵咲きさきちゃんったら、どうして今日はそんなに攻めてくるんだろうね?

 僕の固く張り詰めた下腹部の熱にやんわり指先を這わせてそう言ってきた彼女の小さな手に、僕は一瞬息を飲んだ。

「き、さき、ダメ……だっ」

 その手をギュッと押さえてそこから離すと、
「僕はいつだってキミが欲しい。だからね、今だってしたくないとは口が裂けても言わない。でも……このまま続けたら葵咲ちゃん、しんどいだけだろ?」

 彼女の目をじっと見つめてそう告げる。

「僕はキミがしんどい思いをするのは絶対に嫌なんだ。……だから葵咲、お願い。早く元気になって? 熱が下がったら……そのときは容赦なんてしないから……。覚悟して?」

 葵咲ちゃんの頭に手のひらを載せてそっと撫でると、今度こそ彼女がおとなしく目を閉じてくれた。

 やっぱり辛いのに無理しようとしてたんだね。困ったお嬢さんめ。
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