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■ 彼女の気持ちと僕の不安■オマケ的短編⑤
甘い香りの嘘つきなキミ1
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結局1度出さないと収拾がつかなくて、僕は風呂場でシャワーを浴びながら葵咲ちゃんを思う羽目になってしまった。
でも、そのお陰で気持ちが切り替えられたんだからよしとしよう。
さっき慌てて風呂場へ逃げ込んでしまったから、すっかり替えの下着のことを失念していた。
風呂から上がってタオルを手にしてからそのことに気がついた僕だったけれど、ふと見ると、服のそばにちゃんと新しいものが置かれていて――。
葵咲ちゃんが、僕がシャワーを浴びている間に置いてくれたんだとピンときた。
(あー、これ……。一人でしてたの、バレたかも)
思ったけど、ここは開き直るしかない。
別に今更葵咲ちゃんに自慰がバレたからって恥ずかしがるような間柄じゃないだろ?と自分に言い聞かせる。
(いや、でもやっぱり恥ずかしいなっ?)
服を着替えながら、何度もそんなことを思って悶々としてしまった。
それで、ちょっと出るのが遅くなってしまったわけだけど――。
***
「葵咲、支度できた?」
何とか気持ちを切り替えて脱衣所から出た途端、部屋の中にほのかに甘い香りが漂っているのに気が付いた。
「――この、におい……」
このところ連日のように葵咲ちゃんが身に纏っていたあの甘ったるいやつと一緒だ。
そう気がついたらにわかに不安になって、僕は「葵咲!?」と声を上げていた。
「――理人っ?」
僕の切羽詰まったような声に、葵咲ちゃんが慌てて駆け寄って来てくれる。
「どうしたのっ? 何かあったのっ?」
心配そうに眉根を寄せて僕を見上げる彼女から、シャンプーに紛れてやはりあの甘い香りがしてきて。
僕は、思わず彼女をギュッと腕に抱きしめた。
「……何で今っ、キミからあの甘ったるいにおいがしてくるんだよっ!」
どうにも感情が抑えられなくて、吐き捨てるようにそう言ったら、葵咲ちゃんが僕の腕の中で「え?」とつぶやいて身じろいだ。
「――ねぇ、理人っ。今日っ……バレンタイン!」
続いて必死の様子で告げられたその言葉に、僕は驚いて葵咲ちゃんを抱く腕の力を緩めた。
「ホントに……気付いて……なかったの?」
バレンタインデーにデートに誘った時点で、とっくに思惑には気づかれていると思っていた、と葵咲ちゃんが溜め息をつく。
理人はそういうイベントごと、大好きだから、絶対勘付かれていると思っていた、と。
言われてみれば、今日は二月十四日の金曜日で、この甘い香りもそう思ってみれば――
「チョコ?」
僕が呆然とつぶやくと、葵咲ちゃんが眉根を寄せて僕を見上げた。
「もう、何でそんなに鈍いのっ!」
このところ、連日遅かったのも、女友達数名と料理教室でバレンタイン向けのお菓子作りを習っていたからで……。一度習っただけでうまく出来る自信がなかったから、みんなで友人宅に集まって、順番に作りあいっこしては試食していたからよ?と葵咲ちゃんが告白してくれる。
でも、そのお陰で気持ちが切り替えられたんだからよしとしよう。
さっき慌てて風呂場へ逃げ込んでしまったから、すっかり替えの下着のことを失念していた。
風呂から上がってタオルを手にしてからそのことに気がついた僕だったけれど、ふと見ると、服のそばにちゃんと新しいものが置かれていて――。
葵咲ちゃんが、僕がシャワーを浴びている間に置いてくれたんだとピンときた。
(あー、これ……。一人でしてたの、バレたかも)
思ったけど、ここは開き直るしかない。
別に今更葵咲ちゃんに自慰がバレたからって恥ずかしがるような間柄じゃないだろ?と自分に言い聞かせる。
(いや、でもやっぱり恥ずかしいなっ?)
服を着替えながら、何度もそんなことを思って悶々としてしまった。
それで、ちょっと出るのが遅くなってしまったわけだけど――。
***
「葵咲、支度できた?」
何とか気持ちを切り替えて脱衣所から出た途端、部屋の中にほのかに甘い香りが漂っているのに気が付いた。
「――この、におい……」
このところ連日のように葵咲ちゃんが身に纏っていたあの甘ったるいやつと一緒だ。
そう気がついたらにわかに不安になって、僕は「葵咲!?」と声を上げていた。
「――理人っ?」
僕の切羽詰まったような声に、葵咲ちゃんが慌てて駆け寄って来てくれる。
「どうしたのっ? 何かあったのっ?」
心配そうに眉根を寄せて僕を見上げる彼女から、シャンプーに紛れてやはりあの甘い香りがしてきて。
僕は、思わず彼女をギュッと腕に抱きしめた。
「……何で今っ、キミからあの甘ったるいにおいがしてくるんだよっ!」
どうにも感情が抑えられなくて、吐き捨てるようにそう言ったら、葵咲ちゃんが僕の腕の中で「え?」とつぶやいて身じろいだ。
「――ねぇ、理人っ。今日っ……バレンタイン!」
続いて必死の様子で告げられたその言葉に、僕は驚いて葵咲ちゃんを抱く腕の力を緩めた。
「ホントに……気付いて……なかったの?」
バレンタインデーにデートに誘った時点で、とっくに思惑には気づかれていると思っていた、と葵咲ちゃんが溜め息をつく。
理人はそういうイベントごと、大好きだから、絶対勘付かれていると思っていた、と。
言われてみれば、今日は二月十四日の金曜日で、この甘い香りもそう思ってみれば――
「チョコ?」
僕が呆然とつぶやくと、葵咲ちゃんが眉根を寄せて僕を見上げた。
「もう、何でそんなに鈍いのっ!」
このところ、連日遅かったのも、女友達数名と料理教室でバレンタイン向けのお菓子作りを習っていたからで……。一度習っただけでうまく出来る自信がなかったから、みんなで友人宅に集まって、順番に作りあいっこしては試食していたからよ?と葵咲ちゃんが告白してくれる。
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