【完結】【R18】つべこべ言わずに僕に惚れろよ

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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■ 彼女の気持ちと僕の不安■オマケ的短編⑤

こだわるキミと、譲れない僕

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 寒いから図書館で待っていたら?と言ったのに、葵咲きさきちゃんは何故か待ち合わせにこだわった。

「一緒に住んでいたら待ち合わせしてデートとかないでしょう? たまにはそういうのもいいじゃない?」
 だったら、と喫茶店を待ち合わせ場所に指定しようとしたのに、それも断られて。

「外でね、待っていたいの」
 寒さに身体を震わせながら、恋人の到着を今か今かと待つ感じがいいのだと葵咲ちゃんは笑った。

(い、言いたいことは分からないではないけどっ!)
 僕は葵咲ちゃんがどこかの街角で、寒さに震えて僕を待ってるとか、耐えられないんだけど!?
 しかも僕が仕事を終えて身支度を整えて駆けつけると……どう足掻いても二十時前後になるわけで。

 冬の日暮れは早い。
 二十時なんて真っ暗じゃないかっ。
 そんな時間に葵咲ちゃんを一人、外になんて置いておけるはずがない。

 そこは僕だって譲れないよ?と彼女を睨んだら、「じゃあ、図書館前に二十時は?」と聞かれた。
 いや、図書館前そこもダメだ。だってうちの図書館は離れになってる分、本館の方に比べて圧倒的に人通りが少ないじゃないか。閉館後ともなるとそれは尚更で。

 葵咲ちゃんと付き合い始める前、彼女が夜に、僕を待って図書館前にいると聞いた時、どれだけ心配したことか。

 僕は少し考えて、本館の入り口前なら、と答えた。
 図書館からは結構離れてしまうけど、図書館前僕の職場前に居たからって、僕が彼女の危機を察知できなければ意味がない。うちの図書館のエントランスは最上階――七階――にあるのだから、どう頑張ったって、下での出来事には気付きにくいじゃないか。

 何かあったら本館建物に入ってすぐの、事務室に駆け込むという約束をして……僕は渋々葵咲ちゃんからの提案を飲んだ。

「待ち合わせ、楽しみだね」
 と微笑む葵咲ちゃんに、僕は今日は何が何でもさっさと仕事を切り上げて、待ち合わせ時間より前に彼女を待てるようにしよう、と心に誓った。


 それなのに――。

 十九時四十五分。
 僕的には結構早く待ち合わせ場所に駆けつけられたと思ったんだけど――。
 葵咲きさきちゃんはすでにそこに来ていて、本館前の街路樹に寄り添うようにして立っていた。
 真っ白な膝丈ひざたけのダッフルコートのフードや袖口そでぐち、それからポケットについたふわふわのファーが、本館から漏れた灯りに照らされてぼんやりと淡く光って見える。
 ブラウンのロングブーツとキャメルのハンドバッグ以外はみんな白で、葵咲ちゃんの艶やかな黒髪がよく映えるコーディネートだな、と思った。

 本当もう、何ていうか……無条件に、可愛いっ! っていうか可愛すぎるっ!
 いや実際、僕の彼女は何を着てても――何なら着てなくても――凶悪に魅力的なんだけどね。

「葵咲っ!」

 走りながら呼び掛けた僕の声に反応して、葵咲ちゃんがこちらを向く。
 僕を見つけて嬉しそうに微笑んでくれる顔が本当に愛らしくて、僕の心臓は高鳴りっぱなしだ。
 正直な話、葵咲ちゃんとなら何度だって恋に落ちられる自信がある。

 駆け寄ってきた葵咲ちゃんを両腕でギュッと抱きしめると、「理人りひとっ、ここ、学校アナタの職場っ!」と心配そうに顔を見上げられた。
 僕はそんな葵咲ちゃんが心の底から愛しくて……大好きで堪らなくて、「別に誰に見られたって構わないよ」と彼女を抱く手を緩めてあげられない。

「身体、冷たくなってるじゃないか」
 待ち合わせ時間を過ぎているわけじゃないのに、この子は一体いつからあそこに立っていたんだろうね?
 ひんやりとした彼女の頬を両手で包み込みながら、僕はそんなことを思う。

「あのね、理人。今日は私、アナタを連れて行きたいところがあるの」
 僕の腕の中で小さく身じろぐと、葵咲ちゃんが潤んだ瞳で僕を仰ぎ見た。
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