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■僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
約束を果たしに……1
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「葵咲、この日曜日、ついて来てもらいたいところがあるんだけど……何か予定ある?」
あちらから買って帰った土産類諸々、うちの実家と葵咲ちゃんの実家には帰って来た翌日の夕刻、すぐに渡しに行ってきた。
予め予定を組んでいた葵咲ちゃんはともかく、急遽出立を決めて何も言わずに彼女を追いかけた僕は、当然だけど家の方には何も言っていなくて。
獺祭と、葵咲ちゃんが選んだあちらの銘菓を手土産に久々に顔を見せたら、母親にめちゃくちゃ驚かれてしまった。
「ちょっと理人! 貴方いつの間にあんな本州の端っこまで行ってたの!」
そりゃそうだ。
「本当一人息子だっていうのに薄情なんだから」
言って「息子って本当可愛げないのよ~。葵咲ちゃんに早くうちの娘になって欲しいわ!」と葵咲ちゃんの手を掴む。
うちの母は娘が欲しくて堪らないんだから仕方ない。
「あ、でも理人に葵咲ちゃんはもったいない気もするのよね。この子ってば気が利かないし見栄っ張りだし」
とか……、いっそ口、ふさいでやろうか?
グッとこぶしを握って怒りに震える僕を、葵咲ちゃんが小声でなだめる。
「理人も悪いのよ。お母さまにまめに連絡取らないから」
まぁその通りだから何も言えないんだけどね。
今日みたいに何か用でもない限り親に連絡することなんてないし、ましてや実家に寄るとか近くに住んでいてもほぼ皆無だ。
いや、逆に近過ぎるからいつでも行けるって思ってしまって疎遠になっているというか。
それに比べて葵咲ちゃんは割と頻繁に実家に連絡を入れているようだし、僕みたいに車なんてないにも関わらず、ちょこちょこ顔も出しているみたい。
うちの母親と葵咲ちゃんのお母さんは幼なじみな上に茶飲み友達だから……我が子らの近況交換をしょっちゅうしているんだと思う。
同じ一人っ子なのに何この差?ってなっていても不思議ではない。
「仕方ないだろ。僕は葵咲ちゃんにしか興味ないんだから」
無意識にそうぼやいて、すぐ隣の葵咲ちゃんに真っ赤な顔をされてしまう。
「ねぇ、理人。お母さんもお父さんとの惚気話聞かせてあげようか?」
僕のセリフに、ニヤリとする母親に、「間に合ってるから」と告げて、僕らはうちの実家を辞した。
***
「日曜に行きたいのは前に話した和菓子屋の友達のところなんだけど」
うちの母親と違って馬鹿なことは言わないはずだから、そこは安心していいよ?
先の実家でのあれこれを思い出しながら溜め息まじりに告げたら、「えっと……真咲さん、だっけ?」と声が返る。
「そうそう立花真咲。『たちばな庵』の店主の」
大学の方にも出入りしてるみたいだけど知ってる?と続けたら、葵咲ちゃんが「茶道サークルのお友達から名前だけは聞いたことあるよ」と微笑んだ。
「そこに残ってる1本。真咲に買って来たやつなんだ。キミが旅立った日、たくさん話聞いてもらったからさ。一応、そのお礼……?」
僕の中では本当は土産、今回は真咲だけでもよかったぐらいなんだ。
実家にも買わなきゃダメよ、って葵咲ちゃんが言うから予定外に両親にも買ったけど。
あちらから買って帰った土産類諸々、うちの実家と葵咲ちゃんの実家には帰って来た翌日の夕刻、すぐに渡しに行ってきた。
予め予定を組んでいた葵咲ちゃんはともかく、急遽出立を決めて何も言わずに彼女を追いかけた僕は、当然だけど家の方には何も言っていなくて。
獺祭と、葵咲ちゃんが選んだあちらの銘菓を手土産に久々に顔を見せたら、母親にめちゃくちゃ驚かれてしまった。
「ちょっと理人! 貴方いつの間にあんな本州の端っこまで行ってたの!」
そりゃそうだ。
「本当一人息子だっていうのに薄情なんだから」
言って「息子って本当可愛げないのよ~。葵咲ちゃんに早くうちの娘になって欲しいわ!」と葵咲ちゃんの手を掴む。
うちの母は娘が欲しくて堪らないんだから仕方ない。
「あ、でも理人に葵咲ちゃんはもったいない気もするのよね。この子ってば気が利かないし見栄っ張りだし」
とか……、いっそ口、ふさいでやろうか?
グッとこぶしを握って怒りに震える僕を、葵咲ちゃんが小声でなだめる。
「理人も悪いのよ。お母さまにまめに連絡取らないから」
まぁその通りだから何も言えないんだけどね。
今日みたいに何か用でもない限り親に連絡することなんてないし、ましてや実家に寄るとか近くに住んでいてもほぼ皆無だ。
いや、逆に近過ぎるからいつでも行けるって思ってしまって疎遠になっているというか。
それに比べて葵咲ちゃんは割と頻繁に実家に連絡を入れているようだし、僕みたいに車なんてないにも関わらず、ちょこちょこ顔も出しているみたい。
うちの母親と葵咲ちゃんのお母さんは幼なじみな上に茶飲み友達だから……我が子らの近況交換をしょっちゅうしているんだと思う。
同じ一人っ子なのに何この差?ってなっていても不思議ではない。
「仕方ないだろ。僕は葵咲ちゃんにしか興味ないんだから」
無意識にそうぼやいて、すぐ隣の葵咲ちゃんに真っ赤な顔をされてしまう。
「ねぇ、理人。お母さんもお父さんとの惚気話聞かせてあげようか?」
僕のセリフに、ニヤリとする母親に、「間に合ってるから」と告げて、僕らはうちの実家を辞した。
***
「日曜に行きたいのは前に話した和菓子屋の友達のところなんだけど」
うちの母親と違って馬鹿なことは言わないはずだから、そこは安心していいよ?
先の実家でのあれこれを思い出しながら溜め息まじりに告げたら、「えっと……真咲さん、だっけ?」と声が返る。
「そうそう立花真咲。『たちばな庵』の店主の」
大学の方にも出入りしてるみたいだけど知ってる?と続けたら、葵咲ちゃんが「茶道サークルのお友達から名前だけは聞いたことあるよ」と微笑んだ。
「そこに残ってる1本。真咲に買って来たやつなんだ。キミが旅立った日、たくさん話聞いてもらったからさ。一応、そのお礼……?」
僕の中では本当は土産、今回は真咲だけでもよかったぐらいなんだ。
実家にも買わなきゃダメよ、って葵咲ちゃんが言うから予定外に両親にも買ったけど。
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