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■僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
会食8
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「池本さんのところは?」
そこでふいっと水を向けられて、僕は何故かドキッとする。
「あ、うちは5つです」
鶏レバーのたまり漬けを口に放り込んでから、視線の先に葵咲ちゃんをおさめる。
かぐや姫に唇を寄せられて耳元に何かを囁かれてから、2人で顔を見合わせてクスクス笑う葵咲ちゃんを見て、僕の彼女は本当可愛いな……と口の端が緩む。
「小6の時に新1年生としてうちの地区に入ってきた彼女の面倒を見ることになりましてね、正直面倒だって思いながら待ち合わせ場所に行ったんですけど……。一目惚れでした」
ホロホロと口溶けのよい、レバーのくさみが微塵も感じられないたまり漬けを味わいながら、ビールをひとくち口に含む。
旨い。
「――僕も……。僕も初めて出会った瞬間、日織に一目惚れしたと言ったら……やはり引きますか?」
え?と思った。
彼のセリフに思考が一瞬追いつかなくて、つまんだはずのだし巻き玉子がポロリと皿に落ちる。
慌ててそれを取り直してから、自分の取り皿に移すと僕は修太郎氏を見つめた。
滅茶苦茶真剣な顔。
「――想像してみたんですけど……僕と葵咲ちゃんが修太郎さんと奥さんぐらい年齢が離れていたとして――」
そこで一旦言葉を止めると、葵咲ちゃんの方をちらりと見て、確信を持って言葉を続ける。
「僕も年齢差関係なく彼女に落とされる自信があります」
――だから引いたりしませんよ。
そう付け加えてから、「だし巻き玉子、うまいですよ?」と修太郎氏に皿を指差した。
彼は言われるままにそれをひとつ取ると、取り皿を手にしたまま僕をじっと見つめてくる。
「修太郎さん、まだ分かりませんか? 僕とアナタは同じ穴のムジナなんですよ」
ひとりの女の子のことが堪らなく大好きで、その気持ちは理屈じゃなくて。
常識とか一般論とか糞食らえだと思ってしまう。
彼女のことになると何も見えなくなって、見境なく彼女を求めてしまうし、嫉妬心も半端ない。
そんな感じでしょ?
ほぼ空になったグラス越しにニヤリと笑ったら、修太郎氏がふっと肩の力を抜いた。
「おっしゃる……通りです」
修太郎氏の眼鏡越しの視線が柔らかくなって、自分の隣に座る奥さんに注がれるのを見て、僕は何となく嬉しくなる。
でも、次の瞬間修太郎氏から問いかけられた言葉に、僕は胸の奥がギュッと苦しくなったんだ。
「僕にとって日織は何もかもが初めての相手なんです。彼女以外の女性に対して性的欲求が微塵も湧いてこないとか……実際男としてどうなんだろうって悩んだこともありました。ですが、今はそれでよかったと思っています。第一……どんな状況であれ、他の女性を抱ける気なんてしませんし、それは日織に対して不義理かな?とも思うので。――池本さんも、ですよね?」
運命の女性に出会った年齢が僕より低いのだから、他にいきようなんてなかったですよね、愚問でした、と言葉を重ねられて、僕は言葉に詰まる。
だって僕は――。
過去に一度だけ葵咲ちゃん以外の女性を抱いたことが、あるのだから。
そこでふいっと水を向けられて、僕は何故かドキッとする。
「あ、うちは5つです」
鶏レバーのたまり漬けを口に放り込んでから、視線の先に葵咲ちゃんをおさめる。
かぐや姫に唇を寄せられて耳元に何かを囁かれてから、2人で顔を見合わせてクスクス笑う葵咲ちゃんを見て、僕の彼女は本当可愛いな……と口の端が緩む。
「小6の時に新1年生としてうちの地区に入ってきた彼女の面倒を見ることになりましてね、正直面倒だって思いながら待ち合わせ場所に行ったんですけど……。一目惚れでした」
ホロホロと口溶けのよい、レバーのくさみが微塵も感じられないたまり漬けを味わいながら、ビールをひとくち口に含む。
旨い。
「――僕も……。僕も初めて出会った瞬間、日織に一目惚れしたと言ったら……やはり引きますか?」
え?と思った。
彼のセリフに思考が一瞬追いつかなくて、つまんだはずのだし巻き玉子がポロリと皿に落ちる。
慌ててそれを取り直してから、自分の取り皿に移すと僕は修太郎氏を見つめた。
滅茶苦茶真剣な顔。
「――想像してみたんですけど……僕と葵咲ちゃんが修太郎さんと奥さんぐらい年齢が離れていたとして――」
そこで一旦言葉を止めると、葵咲ちゃんの方をちらりと見て、確信を持って言葉を続ける。
「僕も年齢差関係なく彼女に落とされる自信があります」
――だから引いたりしませんよ。
そう付け加えてから、「だし巻き玉子、うまいですよ?」と修太郎氏に皿を指差した。
彼は言われるままにそれをひとつ取ると、取り皿を手にしたまま僕をじっと見つめてくる。
「修太郎さん、まだ分かりませんか? 僕とアナタは同じ穴のムジナなんですよ」
ひとりの女の子のことが堪らなく大好きで、その気持ちは理屈じゃなくて。
常識とか一般論とか糞食らえだと思ってしまう。
彼女のことになると何も見えなくなって、見境なく彼女を求めてしまうし、嫉妬心も半端ない。
そんな感じでしょ?
ほぼ空になったグラス越しにニヤリと笑ったら、修太郎氏がふっと肩の力を抜いた。
「おっしゃる……通りです」
修太郎氏の眼鏡越しの視線が柔らかくなって、自分の隣に座る奥さんに注がれるのを見て、僕は何となく嬉しくなる。
でも、次の瞬間修太郎氏から問いかけられた言葉に、僕は胸の奥がギュッと苦しくなったんだ。
「僕にとって日織は何もかもが初めての相手なんです。彼女以外の女性に対して性的欲求が微塵も湧いてこないとか……実際男としてどうなんだろうって悩んだこともありました。ですが、今はそれでよかったと思っています。第一……どんな状況であれ、他の女性を抱ける気なんてしませんし、それは日織に対して不義理かな?とも思うので。――池本さんも、ですよね?」
運命の女性に出会った年齢が僕より低いのだから、他にいきようなんてなかったですよね、愚問でした、と言葉を重ねられて、僕は言葉に詰まる。
だって僕は――。
過去に一度だけ葵咲ちゃん以外の女性を抱いたことが、あるのだから。
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