【完結】【R18】つべこべ言わずに僕に惚れろよ

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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■僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』

会食1

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 とりあえず食事は地元組の二人がお勧めの居酒屋に予約を入れてくれていて、そこへ行くことになった。
 居酒屋、と言っても料理もかなり充実しているらしく、何より僕が葵咲きさきちゃんと泊まるために取ったビジネスホテルから徒歩数分圏内というのが有り難くて。

 葵咲ちゃんが、「理人りひとが取ったの、商店街のど真ん中のビジネスホテルだからお店とか考えやすかったみたいよ」と言って淡く微笑んだ。
「――?」
 気のせいだろうか。
 僕がこっちに到着してからずっと、葵咲ちゃんの笑顔が何となくいつもと違って見える気がするんだ。
 こう、何か隠していてよそよそしいというか。心配事を抱えていてソワソワしてる感じというか。

 昨夜電話で話した時にはそういう雰囲気は全く受けなかったから、あのあと何かあった?

 正直めちゃくちゃ問いただしたいけれど、塚田夫妻と今から会食だしな、と考えたらさすがに躊躇ためらわれて。

 会食後、ホテルに戻って二人きりになれたら、ちゃんと聞こう。
 僕はそう心に誓う。

 空港駐車場で修太郎しゅうたろう氏のアルファード愛車から、葵咲ちゃんの荷物を僕のヴィッツレンタカーに移し替えた。

「とりあえず葵咲かのじょの荷物と僕の荷物、チェックインしてホテルに置いてきます。合流まで、しばし別行動にしませんか?」

 僕は塚田夫妻にそう言うと、待ち合わせのお店『ゆかり屋』の場所を修太郎氏から教えてもらって、一旦ふたりとは別々に動くことにする。
 あちらも僕らも、少しぐらい恋人とふたりきりの時間を持つことが必要だ。

 僕の思惑通り、修太郎氏彼のほうも同じ想いだったんだろう。すぐに提案を飲んでくれた。

 うん、計算通り。


***

葵咲きさき、僕たちも行こう?」

 いつまでも走り去るアルファードの方ばかりを見ている葵咲ちゃんに声を掛けると、ビクッと肩を震わせて。

「――緊張、してる?」
 僕がここへ着いてすぐの時、抱きついてくれたことを思うと愚問な気もしたけれど、何となくそう聞かずにはいられない。
「何言ってるの、理人りひと。緊張とか……今更だよ?」
 葵咲ちゃんは僕の問いかけに、こちらを振り返ってニコッと笑いかけてくれたけれど、やはり何か違うんだ。視線が微妙にかち合わない。

「葵咲、僕に何か言いたいことあるよね? 会食が終わったら、ちゃんと話そうね? ホントはすぐにでも問い詰めたいところだけど……じっくり聞きたいから今はやめとく。――けど、とりあえずそれまでは気持ち切り替えよう? でないとふたりに悪いだろ?」

 ――出来るよね?

 畳み掛けるようにそう言ったら、葵咲ちゃんがコクン、とうなずいた。

 僕に聞きたいことがあるという点については否定しなかったから、何か抱えているのは確かだ。

 ヤバイ。
 そうと知ったら葵咲ちゃんに普通にしとけって言ったくせに、正直僕自身、かなり気になってきた。

 助手席ドアを開けて葵咲ちゃんをシートに座らせると、僕は有無を言わせず彼女の上に覆い被さるようにしてシートベルトを着ける。
「理人っ?」
 僕が突然身体を寄せたからだろう。葵咲ちゃんが小さく僕の名を呼んで真っ赤になった。

 何これ、可愛すぎるだろ。

 本当にシートベルトを着けるだけのつもりだったんだけどな。こんな声出されたら何もするなって方が無理だ。

「葵咲……」
 僕は葵咲ちゃんを至近距離からじっと見つめると、瞳を逸らせようとする彼女のあごに手をかけて、小さく低く愛しい女性ひとの名前を呼ぶ。
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