180 / 324
■僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
会食1
しおりを挟む
とりあえず食事は地元組の二人がお勧めの居酒屋に予約を入れてくれていて、そこへ行くことになった。
居酒屋、と言っても料理もかなり充実しているらしく、何より僕が葵咲ちゃんと泊まるために取ったビジネスホテルから徒歩数分圏内というのが有り難くて。
葵咲ちゃんが、「理人が取ったの、商店街のど真ん中のビジネスホテルだからお店とか考えやすかったみたいよ」と言って淡く微笑んだ。
「――?」
気のせいだろうか。
僕がこっちに到着してからずっと、葵咲ちゃんの笑顔が何となくいつもと違って見える気がするんだ。
こう、何か隠していてよそよそしいというか。心配事を抱えていてソワソワしてる感じというか。
昨夜電話で話した時にはそういう雰囲気は全く受けなかったから、あのあと何かあった?
正直めちゃくちゃ問い質したいけれど、塚田夫妻と今から会食だしな、と考えたらさすがに躊躇われて。
会食後、ホテルに戻って二人きりになれたら、ちゃんと聞こう。
僕はそう心に誓う。
空港駐車場で修太郎氏のアルファードから、葵咲ちゃんの荷物を僕のヴィッツに移し替えた。
「とりあえず葵咲の荷物と僕の荷物、チェックインしてホテルに置いてきます。合流まで、しばし別行動にしませんか?」
僕は塚田夫妻にそう言うと、待ち合わせのお店『ゆかり屋』の場所を修太郎氏から教えてもらって、一旦ふたりとは別々に動くことにする。
あちらも僕らも、少しぐらい恋人とふたりきりの時間を持つことが必要だ。
僕の思惑通り、修太郎氏も同じ想いだったんだろう。すぐに提案を飲んでくれた。
うん、計算通り。
***
「葵咲、僕たちも行こう?」
いつまでも走り去るアルファードの方ばかりを見ている葵咲ちゃんに声を掛けると、ビクッと肩を震わせて。
「――緊張、してる?」
僕がここへ着いてすぐの時、抱きついてくれたことを思うと愚問な気もしたけれど、何となくそう聞かずにはいられない。
「何言ってるの、理人。緊張とか……今更だよ?」
葵咲ちゃんは僕の問いかけに、こちらを振り返ってニコッと笑いかけてくれたけれど、やはり何か違うんだ。視線が微妙にかち合わない。
「葵咲、僕に何か言いたいことあるよね? 会食が終わったら、ちゃんと話そうね? ホントはすぐにでも問い詰めたいところだけど……じっくり聞きたいから今はやめとく。――けど、とりあえずそれまでは気持ち切り替えよう? でないとふたりに悪いだろ?」
――出来るよね?
畳み掛けるようにそう言ったら、葵咲ちゃんがコクン、とうなずいた。
僕に聞きたいことがあるという点については否定しなかったから、何か抱えているのは確かだ。
ヤバイ。
そうと知ったら葵咲ちゃんに普通にしとけって言ったくせに、正直僕自身、かなり気になってきた。
助手席ドアを開けて葵咲ちゃんをシートに座らせると、僕は有無を言わせず彼女の上に覆い被さるようにしてシートベルトを着ける。
「理人っ?」
僕が突然身体を寄せたからだろう。葵咲ちゃんが小さく僕の名を呼んで真っ赤になった。
何これ、可愛すぎるだろ。
本当にシートベルトを着けるだけのつもりだったんだけどな。こんな声出されたら何もするなって方が無理だ。
「葵咲……」
僕は葵咲ちゃんを至近距離からじっと見つめると、瞳を逸らせようとする彼女のあごに手をかけて、小さく低く愛しい女性の名前を呼ぶ。
居酒屋、と言っても料理もかなり充実しているらしく、何より僕が葵咲ちゃんと泊まるために取ったビジネスホテルから徒歩数分圏内というのが有り難くて。
葵咲ちゃんが、「理人が取ったの、商店街のど真ん中のビジネスホテルだからお店とか考えやすかったみたいよ」と言って淡く微笑んだ。
「――?」
気のせいだろうか。
僕がこっちに到着してからずっと、葵咲ちゃんの笑顔が何となくいつもと違って見える気がするんだ。
こう、何か隠していてよそよそしいというか。心配事を抱えていてソワソワしてる感じというか。
昨夜電話で話した時にはそういう雰囲気は全く受けなかったから、あのあと何かあった?
正直めちゃくちゃ問い質したいけれど、塚田夫妻と今から会食だしな、と考えたらさすがに躊躇われて。
会食後、ホテルに戻って二人きりになれたら、ちゃんと聞こう。
僕はそう心に誓う。
空港駐車場で修太郎氏のアルファードから、葵咲ちゃんの荷物を僕のヴィッツに移し替えた。
「とりあえず葵咲の荷物と僕の荷物、チェックインしてホテルに置いてきます。合流まで、しばし別行動にしませんか?」
僕は塚田夫妻にそう言うと、待ち合わせのお店『ゆかり屋』の場所を修太郎氏から教えてもらって、一旦ふたりとは別々に動くことにする。
あちらも僕らも、少しぐらい恋人とふたりきりの時間を持つことが必要だ。
僕の思惑通り、修太郎氏も同じ想いだったんだろう。すぐに提案を飲んでくれた。
うん、計算通り。
***
「葵咲、僕たちも行こう?」
いつまでも走り去るアルファードの方ばかりを見ている葵咲ちゃんに声を掛けると、ビクッと肩を震わせて。
「――緊張、してる?」
僕がここへ着いてすぐの時、抱きついてくれたことを思うと愚問な気もしたけれど、何となくそう聞かずにはいられない。
「何言ってるの、理人。緊張とか……今更だよ?」
葵咲ちゃんは僕の問いかけに、こちらを振り返ってニコッと笑いかけてくれたけれど、やはり何か違うんだ。視線が微妙にかち合わない。
「葵咲、僕に何か言いたいことあるよね? 会食が終わったら、ちゃんと話そうね? ホントはすぐにでも問い詰めたいところだけど……じっくり聞きたいから今はやめとく。――けど、とりあえずそれまでは気持ち切り替えよう? でないとふたりに悪いだろ?」
――出来るよね?
畳み掛けるようにそう言ったら、葵咲ちゃんがコクン、とうなずいた。
僕に聞きたいことがあるという点については否定しなかったから、何か抱えているのは確かだ。
ヤバイ。
そうと知ったら葵咲ちゃんに普通にしとけって言ったくせに、正直僕自身、かなり気になってきた。
助手席ドアを開けて葵咲ちゃんをシートに座らせると、僕は有無を言わせず彼女の上に覆い被さるようにしてシートベルトを着ける。
「理人っ?」
僕が突然身体を寄せたからだろう。葵咲ちゃんが小さく僕の名を呼んで真っ赤になった。
何これ、可愛すぎるだろ。
本当にシートベルトを着けるだけのつもりだったんだけどな。こんな声出されたら何もするなって方が無理だ。
「葵咲……」
僕は葵咲ちゃんを至近距離からじっと見つめると、瞳を逸らせようとする彼女のあごに手をかけて、小さく低く愛しい女性の名前を呼ぶ。
0
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる