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■僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
出立の日3
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塚田さんは白いTシャツの上に黒の半そでパーカーを羽織って、下はひおちゃんのワンピースに合わせていらしたのかな。唐紅のスキニーパンツを履いていた。
とても優しそうな物腰の男性で、ひおちゃんを溺愛しているのが、彼女を見つめる視線からダダ漏れている。
「初めまして、塚田修太郎です。えっと……」
そこで困ったように止まる塚田さんを見て、私は慌てて名乗った。
「は、初めまして。丸山葵咲と言います。その、ひおちゃんとは……小さいころに離れ離れになってしまったんですが、ずっと連絡は取り合っていたので……。えっと……お、幼なじみみたいなものです」
言って、ひおちゃんにそうだよね?と同意を求めたら「幼なじみなのですっ」とギュッと手を握ってくれた。
「そうなんですね。――丸山さん、いつも日織と仲良くしてくださって有難うございます」
言って、私の足元のスーツケースに視線を転じると、荷物、お持ちしましょう……とおっしゃった。
それに慌てて「あ。でも重いですし!」と言ったら、二人に笑われてしまった。
「重いのでしたら、尚のこと男の僕がお持ちしないと」
塚田さんの手がすっと伸びてきて、スーツケースを軽々と持ち上げられてしまう。
そういえばあっちでは理人がずっと持ってくれたっけ……。
そう思ったら、胸の奥が切なく疼いて、私は小さく吐息を漏らした。
そんな私に気付いたのか、ひおちゃんが私の耳元で囁く。
「ごめんね、ききちゃん。本当は私一人でお迎えに来る予定だったのです。でも……」
「彼がついてくるって聞かなかった?」
塚田さんの背中を見つめながら小声で言うと、「何で分かったのですか?」と驚いた顔をされて。
私は淡く微笑みながら、「うちもね、彼がついて来たいっていうの、なだめるの大変だったから」と答える。
出発の直前までごねていた理人の顔を思い出して、途端、無性にそんな彼が恋しくなった。
「それで――結局、ききちゃんの彼氏さんはお留守番してらっしゃるのですか?」
ひおちゃんがきょとんとするのへ、
「うん。無理矢理……置いてきちゃった……」
つぶやくように返したら、鼻の奥がつんとした。
「ききちゃん、一緒に来なかったこと、後悔してるのですね」
頭を撫で撫でされて、私はびっくりしてしまう。
「ひおちゃん……」
そんなのされたら泣いちゃうよ……。
私はジワッと浮かんできそうになった涙を、うつむきながら瞬きを少なくして、何とか溢れさせないように頑張る。
「私、いつかお会いしてみたいのですっ」
不意に声の調子を変えてひおちゃんが言ったので、私は思わず彼女のほうを見た。
途端ぽとっと涙が落ちてしまって、「あ」と思う。
「いつも凛としたききちゃんを、こんな風にしょんぼりさせてしまえる人ですっ。きっと素敵な人に違いないのですっ」
ひおちゃんがニコッと笑って差し出したハンカチで目元を拭ってくれて、私はつられて泣き笑いになった。
「夜になったら、たくさんたくさんお話を聞かせてくださいねっ」
楽しみなのですっ。
可愛らしい顔をして、ガッツポーズをするひおちゃんに、私は思わずクスッと笑ってしまった。
ギャップ萌えっていうのかな、こういうの。
多分、後方を歩く私たちをちらちらと気にしながら歩く塚田さんは、ひおちゃんのそういう不思議な魅力も含めて愛しておられるんだろうな。
理人は――私のどこを好きになってくれたんだろう。
ふと、そんなことを思った。
とても優しそうな物腰の男性で、ひおちゃんを溺愛しているのが、彼女を見つめる視線からダダ漏れている。
「初めまして、塚田修太郎です。えっと……」
そこで困ったように止まる塚田さんを見て、私は慌てて名乗った。
「は、初めまして。丸山葵咲と言います。その、ひおちゃんとは……小さいころに離れ離れになってしまったんですが、ずっと連絡は取り合っていたので……。えっと……お、幼なじみみたいなものです」
言って、ひおちゃんにそうだよね?と同意を求めたら「幼なじみなのですっ」とギュッと手を握ってくれた。
「そうなんですね。――丸山さん、いつも日織と仲良くしてくださって有難うございます」
言って、私の足元のスーツケースに視線を転じると、荷物、お持ちしましょう……とおっしゃった。
それに慌てて「あ。でも重いですし!」と言ったら、二人に笑われてしまった。
「重いのでしたら、尚のこと男の僕がお持ちしないと」
塚田さんの手がすっと伸びてきて、スーツケースを軽々と持ち上げられてしまう。
そういえばあっちでは理人がずっと持ってくれたっけ……。
そう思ったら、胸の奥が切なく疼いて、私は小さく吐息を漏らした。
そんな私に気付いたのか、ひおちゃんが私の耳元で囁く。
「ごめんね、ききちゃん。本当は私一人でお迎えに来る予定だったのです。でも……」
「彼がついてくるって聞かなかった?」
塚田さんの背中を見つめながら小声で言うと、「何で分かったのですか?」と驚いた顔をされて。
私は淡く微笑みながら、「うちもね、彼がついて来たいっていうの、なだめるの大変だったから」と答える。
出発の直前までごねていた理人の顔を思い出して、途端、無性にそんな彼が恋しくなった。
「それで――結局、ききちゃんの彼氏さんはお留守番してらっしゃるのですか?」
ひおちゃんがきょとんとするのへ、
「うん。無理矢理……置いてきちゃった……」
つぶやくように返したら、鼻の奥がつんとした。
「ききちゃん、一緒に来なかったこと、後悔してるのですね」
頭を撫で撫でされて、私はびっくりしてしまう。
「ひおちゃん……」
そんなのされたら泣いちゃうよ……。
私はジワッと浮かんできそうになった涙を、うつむきながら瞬きを少なくして、何とか溢れさせないように頑張る。
「私、いつかお会いしてみたいのですっ」
不意に声の調子を変えてひおちゃんが言ったので、私は思わず彼女のほうを見た。
途端ぽとっと涙が落ちてしまって、「あ」と思う。
「いつも凛としたききちゃんを、こんな風にしょんぼりさせてしまえる人ですっ。きっと素敵な人に違いないのですっ」
ひおちゃんがニコッと笑って差し出したハンカチで目元を拭ってくれて、私はつられて泣き笑いになった。
「夜になったら、たくさんたくさんお話を聞かせてくださいねっ」
楽しみなのですっ。
可愛らしい顔をして、ガッツポーズをするひおちゃんに、私は思わずクスッと笑ってしまった。
ギャップ萌えっていうのかな、こういうの。
多分、後方を歩く私たちをちらちらと気にしながら歩く塚田さんは、ひおちゃんのそういう不思議な魅力も含めて愛しておられるんだろうな。
理人は――私のどこを好きになってくれたんだろう。
ふと、そんなことを思った。
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