158 / 324
■僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
幼なじみからの連絡2
しおりを挟む
***
「でね、理人。私、久しぶりに彼女に会いに行きたいの」
調べてみたら、私たちの住んでいるところから、彼女の住む本州の端っこの県まで、車で十時間前後、新幹線で五時間ちょっと、飛行機で一時間半みたいで。
それを話して、
「さすがに行くなら時間的に車はないかな?って思ってて……」
と言った。
そうなると、交通費ももったいないし、今回は一人で。
そういうつもりで恐る恐る数日間不在になる可能性を示唆しつつ、「飛行機で行こうかな?って思ってるんだけど……」と切り出したのだけれど。
「飛行機だと一人片道二万くらいだっけ?」
とあっさり返ってきて、一人当たりを聞くってことは……とハッとする。
「あっ、あのね、あのね。さすがにすごく経費がかさむし……私向こうへ行ったらひおちゃん家にお泊まりさせていただく予定だし……今回は一人で行こうかな?って」
思ってるんだけど……。
ゴニョゴニョなりながらそう言ったら、理人がすごく悲しそうな顔をした。
いや、ちょっ、何でっ。
子供じゃないんだからたまには別行動もいいんじゃないかしら?
「ほら、私がいない間に理人も……えっと……。そうだ! お友達と飲みに出たり……そういうの、してみたらどうかな?」
言うと、理人が「友達……」とつぶやいて。
「そうそう」
畳み掛けるように言ったら、「そういえば大学時代の同期が結構近くに住んでたんだよね」と言った。
長いこと連絡を取っていなかったらしいんだけど、先日たまたま入った和菓子屋さんで、在学中に割と懇意にしていた友人の立花真咲さんと再会したらしくて。
「立花さんって……女性?」
真咲さんという名前が中性的に感じられたのと、和菓子屋さんで、というところがふと気になって、思わずそう尋ねたら、ニヤリとされた。
「真咲と葵咲。何となく名前が似てるよね。真咲ちゃん、すごく綺麗な女性だよって言ったら、葵咲、ヤキモチ妬いてくれる?」
嬉しそうに理人が言うのへ、何となく悔しくなってしまう。
理人が言う通り、女性だったら絶対に嫌だって思ってしまった。会いに行って欲しくない。
「理人……、やっぱりっ!」
私が不在中にお友達と会うのはやめて?って言いそうになったところで、
「大丈夫だよ。真咲は男だから」
理人がそう言って、不安に押しつぶされそうな私をギュッと抱きしめてくれた。私は思わず「本当?」とつぶやいてしまって、慌てて口を押さえる。……ヤダ、さっきから私、恥ずかしいっ。
「うん。真咲はれっきとした男で、和菓子屋の店主だ。なんなら今度一緒にお店に行こうか? 本人に直接会えば安心できるよね?」
僕も真咲に僕の彼女を自慢したいし――。
そんなことをつぶやく理人を見て、心が少しずつ穏やかになってくる。
真咲さんは、ほかの同性の友人達のように、理人を客寄せパンダ的に合コンに誘ったりしなかったから一緒にいて居心地よかったんだ、と理人が笑う。
「僕は正直キミにしか興味なかったし、女の子が集まるところに連れて行かれても全然楽しくなかったからさ。
真咲も何かあんまり女の子にがっついていないと言うか。正直こいつ、女の子に興味ないのかな?とか思ってた時期もあったんだけど……。
再会した時に、和菓子屋の婿養子に入って、子宝にも恵まれたって話してくれてね……ああ、別に異性に興味ないわけじゃなかったんだ、ってちょっとホッとしたというか」
楽しそうに理人が話すのを聞きながら、本当に仲良しだったんだなって思った。それと同時に、同期ってことは理人と同い年周りだよね、とぼんやり思う。
理人と同年代のその人はもう結婚してて……お子さんもいらっしゃるんだ。
私とひとつしか違わないひおちゃんも、入籍したって言ってた。
じゃあ私と理人は……?
理人からもらった、左手薬指の婚約指輪を無意識に撫でながら、私は何となくモヤモヤとした気落ちが湧いてくるのを止められなくなってしまう。
なんだろう、この気持ち……。
ねえ、理人、教えてよ。
「でね、理人。私、久しぶりに彼女に会いに行きたいの」
調べてみたら、私たちの住んでいるところから、彼女の住む本州の端っこの県まで、車で十時間前後、新幹線で五時間ちょっと、飛行機で一時間半みたいで。
それを話して、
「さすがに行くなら時間的に車はないかな?って思ってて……」
と言った。
そうなると、交通費ももったいないし、今回は一人で。
そういうつもりで恐る恐る数日間不在になる可能性を示唆しつつ、「飛行機で行こうかな?って思ってるんだけど……」と切り出したのだけれど。
「飛行機だと一人片道二万くらいだっけ?」
とあっさり返ってきて、一人当たりを聞くってことは……とハッとする。
「あっ、あのね、あのね。さすがにすごく経費がかさむし……私向こうへ行ったらひおちゃん家にお泊まりさせていただく予定だし……今回は一人で行こうかな?って」
思ってるんだけど……。
ゴニョゴニョなりながらそう言ったら、理人がすごく悲しそうな顔をした。
いや、ちょっ、何でっ。
子供じゃないんだからたまには別行動もいいんじゃないかしら?
「ほら、私がいない間に理人も……えっと……。そうだ! お友達と飲みに出たり……そういうの、してみたらどうかな?」
言うと、理人が「友達……」とつぶやいて。
「そうそう」
畳み掛けるように言ったら、「そういえば大学時代の同期が結構近くに住んでたんだよね」と言った。
長いこと連絡を取っていなかったらしいんだけど、先日たまたま入った和菓子屋さんで、在学中に割と懇意にしていた友人の立花真咲さんと再会したらしくて。
「立花さんって……女性?」
真咲さんという名前が中性的に感じられたのと、和菓子屋さんで、というところがふと気になって、思わずそう尋ねたら、ニヤリとされた。
「真咲と葵咲。何となく名前が似てるよね。真咲ちゃん、すごく綺麗な女性だよって言ったら、葵咲、ヤキモチ妬いてくれる?」
嬉しそうに理人が言うのへ、何となく悔しくなってしまう。
理人が言う通り、女性だったら絶対に嫌だって思ってしまった。会いに行って欲しくない。
「理人……、やっぱりっ!」
私が不在中にお友達と会うのはやめて?って言いそうになったところで、
「大丈夫だよ。真咲は男だから」
理人がそう言って、不安に押しつぶされそうな私をギュッと抱きしめてくれた。私は思わず「本当?」とつぶやいてしまって、慌てて口を押さえる。……ヤダ、さっきから私、恥ずかしいっ。
「うん。真咲はれっきとした男で、和菓子屋の店主だ。なんなら今度一緒にお店に行こうか? 本人に直接会えば安心できるよね?」
僕も真咲に僕の彼女を自慢したいし――。
そんなことをつぶやく理人を見て、心が少しずつ穏やかになってくる。
真咲さんは、ほかの同性の友人達のように、理人を客寄せパンダ的に合コンに誘ったりしなかったから一緒にいて居心地よかったんだ、と理人が笑う。
「僕は正直キミにしか興味なかったし、女の子が集まるところに連れて行かれても全然楽しくなかったからさ。
真咲も何かあんまり女の子にがっついていないと言うか。正直こいつ、女の子に興味ないのかな?とか思ってた時期もあったんだけど……。
再会した時に、和菓子屋の婿養子に入って、子宝にも恵まれたって話してくれてね……ああ、別に異性に興味ないわけじゃなかったんだ、ってちょっとホッとしたというか」
楽しそうに理人が話すのを聞きながら、本当に仲良しだったんだなって思った。それと同時に、同期ってことは理人と同い年周りだよね、とぼんやり思う。
理人と同年代のその人はもう結婚してて……お子さんもいらっしゃるんだ。
私とひとつしか違わないひおちゃんも、入籍したって言ってた。
じゃあ私と理人は……?
理人からもらった、左手薬指の婚約指輪を無意識に撫でながら、私は何となくモヤモヤとした気落ちが湧いてくるのを止められなくなってしまう。
なんだろう、この気持ち……。
ねえ、理人、教えてよ。
0
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる