【完結】【R18】つべこべ言わずに僕に惚れろよ

■僕惚れ③『家族が増えました』

家族の一員だから1

　セレを動物病院に連れて行くと、案外健康優良児で、理人りひとの思ったとおり、月齢は生後三ヶ月くらいの男の子だと言われた。

　心配した寄生虫などもついていなくて、持参した便を見てもらったら、そちらも良好。

　もしかしたら捨てられる前にある程度ケアされていたのかも知れないですね、と獣医師は言った。
　たいていの場合、拾ってきた子猫や子犬は寄生虫に感染していることが多いけれど、セレにそれがなかったのは不幸中の幸いだった。
　先の飼い主？が、そこまでした子猫を捨てたのだとしたら解げせないとも思ったけれど、考えても仕方のないことなのでそれ以上は考えないことにする。

　過去よりこれから、だ。

　そう考えた理人が、予防接種のことを聞いたら、とりあえずまだお迎え直後と言うことで、ほんの少し環境に慣らしてからのほうがいいでしょう、との見立てだった。それには理人も賛成だったので、先生と相談して一回目の予防接種は一週間後をめどにした。

　何につけても、セレのことを最優先して考えてくれるこの獣医師に好感をもった理人は、掛かり付け医はここでいいかな？と思う。

　セレは案外度胸のある子猫なのか、家に連れて帰るとけろっとした様子でトイレに入った。
　排泄を我慢していたらしいその様子に、理人はトイレから出てきたセレを思いっきり褒める。
「ホント、お前はいい子だねー」

　でも、こういういい子は下手をすると排泄を我慢したりして、膀胱炎になりやすいかもしれないので、そこは気をつけるようにしてやろう、と思った。
　葵咲きさきに対して色々考えて先回りする癖は、どうも子猫セレに対しても健在のようで、理人はそれに気付いて内心笑ってしまう。

（あ、そうだ）

　一応セレのことを教えるという約束で入手した直人なおひとの連絡先へ、メッセージを入れておこうとスマホを出すと、ラインに新着通知が届いていた。
　開いてみると、直人からで。病院での待ち時間に出しておいた登録申請が無事に承認されていて、それに一言「よろしくお願いします」と返ってきていただけなのだが、案外直人もマメなところがあるのかな？と思う。
　理人は少し考えてから。お澄まししたセレの愛らしい写真とともに、通院でのあれこれを申し添えて返信しておいた。

　とりあえず約束は果たした。

　理人はセレにさよならを告げると、仕事場へと向かった。

＊＊＊