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■僕惚れ③『家族が増えました』
意趣返し4
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葵咲を無事に大学へ送り届けた理人は、その足で少しだけ図書館へ顔を出すことにした。
「おはよう」
エントランス正面のエレベーター扉が開くと同時に、カウンターにいる鈴木と目が合ったので、にっこり笑って声をかける。
「あ、おはようございます」
午前中は休むと告げていた自分が来たことに驚いた様子で、鈴木が瞳を見開くのへ、「彼女を送ってきたついでに、ちょっとだけ様子を見に来てみたんだ」と小声で告げる。
バイトの子たちのなかで、唯一鈴木にだけはフィアンセとの惚気話をたまに披露していた理人である。
この子が口が固いことは日頃の仕事ぶりからよく知っていたので、気が付くと気が緩んであれこれ話してしまうのだ。
一応館長とバイトと言う関係ではあるが、年齢的に言うと二十六の自分と学生との間には数歳の開きしかないわけで……。
気をつけないと、友人に接するように話してしまいそうになる。
「何も問題はない?」
聞けば、「大丈夫です」と返る。そりゃそうだ。この子はもちろん、今日のメンバーは優秀なのだから。
「じゃあ、申し訳ないんだけど今日は昼まで僕、抜けさせてもらうね。用事が終わり次第すぐ来るつもりではあるから。もしも何か困ったことがあったらメールくれるかな?」
その言葉に、鈴木がうなずいたのを確認して、理人はカウンターを離れた。
***
家に戻ると、セレが日当たりのよい寝床からむくりと起き出して、伸びをしながらじわじわと理人の元へ歩み寄ってきた。
そっと抱き上げると、陽だまりにいた子猫の身体は太陽の熱を宿してほんわかと温かかった。
「日向ぼっこしてたの?」
聞けば「にゃーん」と返事が返る。何て賢い子なんだろう!と理人は一人ニヤニヤしてしまう。
「トイレはどうかな?」
コンテナボックス内に設置したトイレの中を覗くと、隅に小さなうんちがしてあった。
「トイレ、ばっちりじゃないか。偉いぞー、セレ」
抱っこしたままだったセレを一度床に下ろして頭を優しく撫でてから、小さなジップロックを取って来る。それに便を入れて閉じてから、別のビニール袋にインして口をギュッと結んだ。
要らないかもしれないが、必要ならこれを検便してもらおう。葵咲を送るときにはしていなかったはずだから、このうんちはセレがしてからそれほど時間が経っていないはずだし。
そんなことを思いながら石鹸で手を洗って、昨日葵咲と一緒にホームセンターで買ってきたキャリーを出す。
「セレー、病院行こっかー?」
キャリー内のすのこ下にペットシーツを敷いてから、すのこ上にセレが愛用している寝床の中の毛布を敷くと、足元にまとわり付いているセレを捕まえてそっと中へ入れる。
もう少し大きくなったら洗濯ネットに入れてからキャリーに入れた方が安全かなぁとか考えながら、入り口にロックをしっかりかけると、中から不安そうなか細い鳴き声がした。
「ごめんなー、セレ。ちょっと窮屈だけど辛抱だぞー」
キャリーに向かって優しく声をかけると、理人は車へ向かった。
***
「おはよう」
エントランス正面のエレベーター扉が開くと同時に、カウンターにいる鈴木と目が合ったので、にっこり笑って声をかける。
「あ、おはようございます」
午前中は休むと告げていた自分が来たことに驚いた様子で、鈴木が瞳を見開くのへ、「彼女を送ってきたついでに、ちょっとだけ様子を見に来てみたんだ」と小声で告げる。
バイトの子たちのなかで、唯一鈴木にだけはフィアンセとの惚気話をたまに披露していた理人である。
この子が口が固いことは日頃の仕事ぶりからよく知っていたので、気が付くと気が緩んであれこれ話してしまうのだ。
一応館長とバイトと言う関係ではあるが、年齢的に言うと二十六の自分と学生との間には数歳の開きしかないわけで……。
気をつけないと、友人に接するように話してしまいそうになる。
「何も問題はない?」
聞けば、「大丈夫です」と返る。そりゃそうだ。この子はもちろん、今日のメンバーは優秀なのだから。
「じゃあ、申し訳ないんだけど今日は昼まで僕、抜けさせてもらうね。用事が終わり次第すぐ来るつもりではあるから。もしも何か困ったことがあったらメールくれるかな?」
その言葉に、鈴木がうなずいたのを確認して、理人はカウンターを離れた。
***
家に戻ると、セレが日当たりのよい寝床からむくりと起き出して、伸びをしながらじわじわと理人の元へ歩み寄ってきた。
そっと抱き上げると、陽だまりにいた子猫の身体は太陽の熱を宿してほんわかと温かかった。
「日向ぼっこしてたの?」
聞けば「にゃーん」と返事が返る。何て賢い子なんだろう!と理人は一人ニヤニヤしてしまう。
「トイレはどうかな?」
コンテナボックス内に設置したトイレの中を覗くと、隅に小さなうんちがしてあった。
「トイレ、ばっちりじゃないか。偉いぞー、セレ」
抱っこしたままだったセレを一度床に下ろして頭を優しく撫でてから、小さなジップロックを取って来る。それに便を入れて閉じてから、別のビニール袋にインして口をギュッと結んだ。
要らないかもしれないが、必要ならこれを検便してもらおう。葵咲を送るときにはしていなかったはずだから、このうんちはセレがしてからそれほど時間が経っていないはずだし。
そんなことを思いながら石鹸で手を洗って、昨日葵咲と一緒にホームセンターで買ってきたキャリーを出す。
「セレー、病院行こっかー?」
キャリー内のすのこ下にペットシーツを敷いてから、すのこ上にセレが愛用している寝床の中の毛布を敷くと、足元にまとわり付いているセレを捕まえてそっと中へ入れる。
もう少し大きくなったら洗濯ネットに入れてからキャリーに入れた方が安全かなぁとか考えながら、入り口にロックをしっかりかけると、中から不安そうなか細い鳴き声がした。
「ごめんなー、セレ。ちょっと窮屈だけど辛抱だぞー」
キャリーに向かって優しく声をかけると、理人は車へ向かった。
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