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■僕惚れ③『家族が増えました』
意趣返し1
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結局昨夜――というより今朝方か――、理人は葵咲が意識を失うまで抱き潰してしまった。
今日も朝一から講義がある彼女のことを思えば、良識ある年上の男としては手加減してしかるべきだったのに、自制がきかずに暴走してしまった。
それほどまでに葵咲が他の男に触れられたことは理人にとって一大事で、冷静な判断を鈍らせるには十分で。
いつもなら何もしなくても自分から起きてくる葵咲が、今朝は理人が起こすまで目を覚まさなかった。
泥のように眠る彼女の寝顔を見れば、涙で泣き濡れて目元が赤くなっていて。
意識を失った彼女を風呂できれいにして服を着せかけたのは他ではない、理人自身だ。
抱きかかえたまま湯船に浸かっても目覚めなかった葵咲に、理人は正直本当に不安になった。
さすがにここまで葵咲に無理をさせたのは初めてだったから。
服で見えないけれど、身体中に理人がつけた鬱血の跡が散らばっているのも知っている。
(ヤバイ。マジでやりすぎた)
それで、理人自身はどうかというと、何ともないのが我ながら怖い。というか逆にスッキリしているぐらいで。
(僕は葵咲ちゃんに対して、どれだけ貪欲なんだろう)
いや、貪欲というより――。世ではそれを絶倫というのかもしれない。でも、理人はあえてその言葉は頭から追い払った。
(そもそも――)
一人の女の子に対してだけ発動するこの性欲を、「性豪」だとか「絶倫」だとかで表すのは何か違う気がして。
そう、だからやはり自分は葵咲ちゃんに対してのみ、恐ろしいくらいに貪欲なのだ、と理人は一人納得する。
「葵咲、朝だよ? 起きられる?」
眠る葵咲の額へ、理人が柔らかく口付けて、軽くゆすり起こしたら、大きくて愛らしいアーモンドアイがぼんやりと瞬きを繰り返しながら理人を見つめてきた。
無意識のようにゆっくりと伸ばされてきた腕の袖口からチラリと見えた鬱血の痕。その腕にぎゅっと抱きしめられたのが切なくて、理人は軽く唇を噛んでから、葵咲の身体を優しく抱き起こす。
寝起きの葵咲に求められるまま、再度彼女の唇を塞いだら――。
(……また勃っ……!)
こんな状態だというのに。性懲りもなく葵咲を抱きたくなったことに自分で自分が嫌になる。さすがにこれ以上彼女の身体を貪るわけにはいかない。
理人は理性を総動員して葵咲をベッドから抱き上げると、そのままキッチンへと運んだ。
食卓についてからもぼんやりと眠そうな葵咲が心配で堪らない理人は、オロオロと問いかける。
「葵咲、大丈夫? 学校、行けそう?」
目が覚めるように、と少し濃い目に淹れたホットコーヒーを「熱いから気をつけて」と言い添えて葵咲の前に置くと、キッチンに立つ理人の足元にまとわりついていたセレが、「おいしいものなら自分にもちょうだい」とせがむように「にゃーん」と鳴いて葵咲の膝に載った。
「ひゃっ!」
本当にぼんやりしていたんだろう。セレに爪を立てられて、びっくりしたように、葵咲が視線を自分の太腿へ落とす。
「セレ?」
言いながら葵咲が頭を撫でると、セレは気持ちよさそうに目を細めてゴロゴロと喉を鳴らした。
そうして葵咲の手にしたカップの中を覗き込んでそのにおいを嗅いでから、美味しそうにないと思ったのか、ふいっとそっぽを向いてあっちへ行ってしまった。
今日も朝一から講義がある彼女のことを思えば、良識ある年上の男としては手加減してしかるべきだったのに、自制がきかずに暴走してしまった。
それほどまでに葵咲が他の男に触れられたことは理人にとって一大事で、冷静な判断を鈍らせるには十分で。
いつもなら何もしなくても自分から起きてくる葵咲が、今朝は理人が起こすまで目を覚まさなかった。
泥のように眠る彼女の寝顔を見れば、涙で泣き濡れて目元が赤くなっていて。
意識を失った彼女を風呂できれいにして服を着せかけたのは他ではない、理人自身だ。
抱きかかえたまま湯船に浸かっても目覚めなかった葵咲に、理人は正直本当に不安になった。
さすがにここまで葵咲に無理をさせたのは初めてだったから。
服で見えないけれど、身体中に理人がつけた鬱血の跡が散らばっているのも知っている。
(ヤバイ。マジでやりすぎた)
それで、理人自身はどうかというと、何ともないのが我ながら怖い。というか逆にスッキリしているぐらいで。
(僕は葵咲ちゃんに対して、どれだけ貪欲なんだろう)
いや、貪欲というより――。世ではそれを絶倫というのかもしれない。でも、理人はあえてその言葉は頭から追い払った。
(そもそも――)
一人の女の子に対してだけ発動するこの性欲を、「性豪」だとか「絶倫」だとかで表すのは何か違う気がして。
そう、だからやはり自分は葵咲ちゃんに対してのみ、恐ろしいくらいに貪欲なのだ、と理人は一人納得する。
「葵咲、朝だよ? 起きられる?」
眠る葵咲の額へ、理人が柔らかく口付けて、軽くゆすり起こしたら、大きくて愛らしいアーモンドアイがぼんやりと瞬きを繰り返しながら理人を見つめてきた。
無意識のようにゆっくりと伸ばされてきた腕の袖口からチラリと見えた鬱血の痕。その腕にぎゅっと抱きしめられたのが切なくて、理人は軽く唇を噛んでから、葵咲の身体を優しく抱き起こす。
寝起きの葵咲に求められるまま、再度彼女の唇を塞いだら――。
(……また勃っ……!)
こんな状態だというのに。性懲りもなく葵咲を抱きたくなったことに自分で自分が嫌になる。さすがにこれ以上彼女の身体を貪るわけにはいかない。
理人は理性を総動員して葵咲をベッドから抱き上げると、そのままキッチンへと運んだ。
食卓についてからもぼんやりと眠そうな葵咲が心配で堪らない理人は、オロオロと問いかける。
「葵咲、大丈夫? 学校、行けそう?」
目が覚めるように、と少し濃い目に淹れたホットコーヒーを「熱いから気をつけて」と言い添えて葵咲の前に置くと、キッチンに立つ理人の足元にまとわりついていたセレが、「おいしいものなら自分にもちょうだい」とせがむように「にゃーん」と鳴いて葵咲の膝に載った。
「ひゃっ!」
本当にぼんやりしていたんだろう。セレに爪を立てられて、びっくりしたように、葵咲が視線を自分の太腿へ落とす。
「セレ?」
言いながら葵咲が頭を撫でると、セレは気持ちよさそうに目を細めてゴロゴロと喉を鳴らした。
そうして葵咲の手にしたカップの中を覗き込んでそのにおいを嗅いでから、美味しそうにないと思ったのか、ふいっとそっぽを向いてあっちへ行ってしまった。
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