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■僕惚れ③『家族が増えました』
*許せない4
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「けど……どうしてすぐに言ってくれなかったの? キミの婚約者として、葵咲に頼りにされてないみたいで、僕はすごく悲しかったんだけどな?」
葵咲の左手を持ち上げて、薬指――婚約指輪――にキスを落とす。そのまま視線をずらしていくと、必然的に見えてくる皮膚の変色に、理人は腸が煮え繰り返りそうになる。
こんな痛々しい痣を付けられておきながら、なぜ何も話してくれなかったんだ?と思ってしまった。
いや、そればかりか、葵咲は理人から痣を隠そうとしたのだ。
葵咲の性格を思えば、そうするのは至極当たり前なのだと頭では分かっていても、それでもやはり言って欲しかったんだよ、僕は!と思ってしまって。
「これ、やられたとき、怖かっただろ?」
痣に唇を寄せてツ……と舌を這わせてから、理人は葵咲をじっと見つめる。
――と、彼女は一瞬瞳を大きく見開いてから、躊躇いがちにこくりとうなずいた。
その拍子、葵咲の瞳に溜まっていた涙がポロリと理人の腕に落ちて弾ける。
葵咲が泣いてしまった原因は、恐らく怖かったことを思い出したからではない。
ただ単に、今、理人が問い詰めたことで感情が昂ぶって出てしまった、生理的な涙だ。
分かっていても、理人にはそう思えなくて。
理人がそばにいないときに起きたこととはいえ、自分が葵咲を守ってやれなかったのはまぎれもない事実だ。
そう思うと、胸の奥がチクリと痛んだ。
「……ごめん、葵咲」
理人はなおも葵咲の頬を濡らす涙の痕を指の腹でそっとこすると、彼女に謝罪する。
「ね、葵咲。これ、やったの山端さん?」
分かっているけれど、それだけは確認しておかねばならない。
理人の問いかけに、葵咲が寸の間逡巡して、それでも理人の目の前で逸樹から謝罪されたこともあり、隠しきれないと思ったんだろう。こくんと首肯した。
理人は葵咲が頷いたのを見て、舌打ちしたくなるのをグッと堪えた。
逸樹に腹を立てての態度だとしても、今そばにいるのはあの男ではない。理人にとっては何よりも大事な葵咲なのだ。
これ以上彼女を怖がらせるわけにはいかない。
あの謝罪から判ずるに、隣人も悪いことをしたという認識はあるんだろう。多分、自分が同じことをされたんだとしたら、理人は禍根なく水に流せたと思う。
でも――。
葵咲にされたとなると、話は別なのだ。
理人は逸樹に、どう落とし前をつけさるべきかと考えながら、葵咲の頭を優しく撫でる。
「ね、葵咲、続き、しよっか?」
理人は逸樹が葵咲につけた痣を、自らの痕跡で上書きしたい、と強く思った。
葵咲の左手を持ち上げて、薬指――婚約指輪――にキスを落とす。そのまま視線をずらしていくと、必然的に見えてくる皮膚の変色に、理人は腸が煮え繰り返りそうになる。
こんな痛々しい痣を付けられておきながら、なぜ何も話してくれなかったんだ?と思ってしまった。
いや、そればかりか、葵咲は理人から痣を隠そうとしたのだ。
葵咲の性格を思えば、そうするのは至極当たり前なのだと頭では分かっていても、それでもやはり言って欲しかったんだよ、僕は!と思ってしまって。
「これ、やられたとき、怖かっただろ?」
痣に唇を寄せてツ……と舌を這わせてから、理人は葵咲をじっと見つめる。
――と、彼女は一瞬瞳を大きく見開いてから、躊躇いがちにこくりとうなずいた。
その拍子、葵咲の瞳に溜まっていた涙がポロリと理人の腕に落ちて弾ける。
葵咲が泣いてしまった原因は、恐らく怖かったことを思い出したからではない。
ただ単に、今、理人が問い詰めたことで感情が昂ぶって出てしまった、生理的な涙だ。
分かっていても、理人にはそう思えなくて。
理人がそばにいないときに起きたこととはいえ、自分が葵咲を守ってやれなかったのはまぎれもない事実だ。
そう思うと、胸の奥がチクリと痛んだ。
「……ごめん、葵咲」
理人はなおも葵咲の頬を濡らす涙の痕を指の腹でそっとこすると、彼女に謝罪する。
「ね、葵咲。これ、やったの山端さん?」
分かっているけれど、それだけは確認しておかねばならない。
理人の問いかけに、葵咲が寸の間逡巡して、それでも理人の目の前で逸樹から謝罪されたこともあり、隠しきれないと思ったんだろう。こくんと首肯した。
理人は葵咲が頷いたのを見て、舌打ちしたくなるのをグッと堪えた。
逸樹に腹を立てての態度だとしても、今そばにいるのはあの男ではない。理人にとっては何よりも大事な葵咲なのだ。
これ以上彼女を怖がらせるわけにはいかない。
あの謝罪から判ずるに、隣人も悪いことをしたという認識はあるんだろう。多分、自分が同じことをされたんだとしたら、理人は禍根なく水に流せたと思う。
でも――。
葵咲にされたとなると、話は別なのだ。
理人は逸樹に、どう落とし前をつけさるべきかと考えながら、葵咲の頭を優しく撫でる。
「ね、葵咲、続き、しよっか?」
理人は逸樹が葵咲につけた痣を、自らの痕跡で上書きしたい、と強く思った。
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