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■僕惚れ③『家族が増えました』
理人の一番5
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「葵咲、要らないタオルとかあったっけ?」
聞けば、「洗面所の棚の中から古そうなの、使って? 新しいの、たくさんストックしてあるから大丈夫だよー」と返る。
こんなやりとりですら、何だか新婚さんみたいでいいな、と思って理人は思わずニヤニヤしてしまう。絶対、葵咲ちゃんはいい奥さんになると確信して、僕は何て幸せ者なんだろう、と思った。
(まぁ、葵咲ちゃんならそこにいてくれるだけで、僕は大満足なんだけど)
何もしてくれなくてもいい。ただそばにいてくれるだけで理人はこの上なく幸せなのだ。そんなふうに思える相手は、葵咲以外にはいない。
洗面所から一番くたびれていそうなタオルを取ってくると、理人はそれをセレのトイレ前に折りたたんで置いた。
簡易的措置ではあるけれど、トイレの前に一段、ステップができた。これで小さなセレでも余裕で入れるようになったはずだ。
トイレをコンテナ内に入れてしまったことでほんの少し高さができてしまった入り口だったけれど、これで恐らく問題はない。
様子を見ながらまた少し調節すればいいか、と思いながら理人はセレを抱いたままソファに戻ってきた。
「理人はとりあえず洗面所に戻ってドライヤーで頭乾かしてくる! セレはこっち」
途端、葵咲にセレを取り上げられてしまった。
「葵咲ぃ~」
甘えた声を出してみたけれど、ダメだった。
理人は、葵咲のこういうしっかりしているところも好きだから、結局はデレデレしながら洗面所へ向かったのだけれども――。
理人が髪を乾かして帰ってきたとき、食卓には配膳がちゃんと済んでいた。
「一応手、洗ってね?」
理人はトイレを済ませたセレを抱っこしたりしたのだから当然か、と思いながら葵咲の言葉に従う。
セレもご飯をもらったらしく、空っぽの食器前に座って仕切りに毛繕いをしていた。
「セレ、買ってきたごはん、食べた?」
聞けば、缶詰を大匙に2杯ぐらいペロリと平らげたらしい。
欲しい欲しいと催促をしないところを見ると足りたのかな?と思いつつ、理人は「とりあえず僕たちも冷めないうちに食べちゃおうか?」と提案する。
「葵咲、お風呂はご飯の後にするよね?」
「するよね?」と疑問形で聞いてはいるけれど、「しなよ」だな、というのは理人自身にも分かっている。
二人でいただきますをしてご飯を食べながら、理人はそれとなく葵咲から今日のことを聞き出した。
どうやら、山端さんと行き合ったのは偶然らしかった。
葵咲の話からは、隣人が何故葵咲に謝ったのかはわからなかったけれど、理人も今は突っ込んで聞くつもりはない。
***
夕飯を食べ終わって葵咲が風呂に入っている間に、食器などの後片付けを済ませてから、理人はぼんやりとセレを眺める。
(この子は可愛いけど……預かるまでに一体何があったんだ?)
買ってきたベッドではなく、キャットタワーの隠れ家のようになったスペースに入って丸くなってしまったセレを見つめながら、理人は一人溜め息をついた。
葵咲に嫌がられないように彼女の身体を検めなくてはならない。――彼女の色香に溺れることなく、というのも付け加えて考えながら、前半はともかく、後半の課題がしんどそうだな、と思ってしまった。
聞けば、「洗面所の棚の中から古そうなの、使って? 新しいの、たくさんストックしてあるから大丈夫だよー」と返る。
こんなやりとりですら、何だか新婚さんみたいでいいな、と思って理人は思わずニヤニヤしてしまう。絶対、葵咲ちゃんはいい奥さんになると確信して、僕は何て幸せ者なんだろう、と思った。
(まぁ、葵咲ちゃんならそこにいてくれるだけで、僕は大満足なんだけど)
何もしてくれなくてもいい。ただそばにいてくれるだけで理人はこの上なく幸せなのだ。そんなふうに思える相手は、葵咲以外にはいない。
洗面所から一番くたびれていそうなタオルを取ってくると、理人はそれをセレのトイレ前に折りたたんで置いた。
簡易的措置ではあるけれど、トイレの前に一段、ステップができた。これで小さなセレでも余裕で入れるようになったはずだ。
トイレをコンテナ内に入れてしまったことでほんの少し高さができてしまった入り口だったけれど、これで恐らく問題はない。
様子を見ながらまた少し調節すればいいか、と思いながら理人はセレを抱いたままソファに戻ってきた。
「理人はとりあえず洗面所に戻ってドライヤーで頭乾かしてくる! セレはこっち」
途端、葵咲にセレを取り上げられてしまった。
「葵咲ぃ~」
甘えた声を出してみたけれど、ダメだった。
理人は、葵咲のこういうしっかりしているところも好きだから、結局はデレデレしながら洗面所へ向かったのだけれども――。
理人が髪を乾かして帰ってきたとき、食卓には配膳がちゃんと済んでいた。
「一応手、洗ってね?」
理人はトイレを済ませたセレを抱っこしたりしたのだから当然か、と思いながら葵咲の言葉に従う。
セレもご飯をもらったらしく、空っぽの食器前に座って仕切りに毛繕いをしていた。
「セレ、買ってきたごはん、食べた?」
聞けば、缶詰を大匙に2杯ぐらいペロリと平らげたらしい。
欲しい欲しいと催促をしないところを見ると足りたのかな?と思いつつ、理人は「とりあえず僕たちも冷めないうちに食べちゃおうか?」と提案する。
「葵咲、お風呂はご飯の後にするよね?」
「するよね?」と疑問形で聞いてはいるけれど、「しなよ」だな、というのは理人自身にも分かっている。
二人でいただきますをしてご飯を食べながら、理人はそれとなく葵咲から今日のことを聞き出した。
どうやら、山端さんと行き合ったのは偶然らしかった。
葵咲の話からは、隣人が何故葵咲に謝ったのかはわからなかったけれど、理人も今は突っ込んで聞くつもりはない。
***
夕飯を食べ終わって葵咲が風呂に入っている間に、食器などの後片付けを済ませてから、理人はぼんやりとセレを眺める。
(この子は可愛いけど……預かるまでに一体何があったんだ?)
買ってきたベッドではなく、キャットタワーの隠れ家のようになったスペースに入って丸くなってしまったセレを見つめながら、理人は一人溜め息をついた。
葵咲に嫌がられないように彼女の身体を検めなくてはならない。――彼女の色香に溺れることなく、というのも付け加えて考えながら、前半はともかく、後半の課題がしんどそうだな、と思ってしまった。
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