【完結】【R18】つべこべ言わずに僕に惚れろよ

■僕惚れ③『家族が増えました』

葵咲、服脱いで？3

　途中もう一度だけ理人りひとを見つめると、彼は葵咲きさきを無言で見つめ返してきた。

　その表情だけで、理人がすごく怒っていると分かった葵咲は、ボタンをウエストの辺りまで外してから、そろそろと袖そでから右肩を抜いた。

　でも、左腕は――。ちゃんと確認はしていないけれど、触れると少し痛むので、もしかしたら逸樹いつきに強く握られた部分が、痣あざになっているのかもしれない。

　もしそうなっていたら――。理人はどういう反応をするんだろう。

　葵咲はそれを知るのが怖くて、左腕をワンピースの袖そでから抜くことができず躊躇ためらってしまう。

　すると、それに焦じれたように理人が「何で左腕、見せてくれないの？　見せられない何かがあるの？」と聞いてきて。

「あ、あの……」
　葵咲はどうしたらいいのか分からなくなって泣きそうになる。

　実際視界が涙で滲んできているのが分かって、葵咲は瞬きを我慢した。

　瞬またたいてしまえば、涙が溢あふれてしまいそうだったから。

「葵咲。僕はキミを泣かせたいわけじゃない」

　ややして、理人はそう言うと、葵咲の目元を指の腹でそっとぬぐった。

　ギリギリのところで堪えていた涙が、理人の指に移って、葵咲の目元を濡らす。

　理人はほぅ、っとひとつ吐息を落とすと、肌を露出したままの葵咲の右腕に、ワンピースを着せ掛けた。そうして寛くつろげられたままのボタンを丁寧に留めてから、「ごめん」と謝った。

　そのあと、もう一度葵咲に先程とは違って優しくついばむように口付けると、「セレのもの、買いにこう。あの子が眠っているうちに」

　彼女の耳元で、そう囁いた。