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■あなたには敵わない■オマケ的短編③
大雪
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「長引いたら寒くなりそうだね」
我が家の暖房設備は、床暖房と、電気ストーブ、それからエアコンのみ。
石油ストーブとか、そういうのがないから電気が落ちたらアウトだ。
理人は私の頬にチュッと口付けると、「葵咲、温かいうちにごはん、食べてしまおうか。食べ終わったら二人で布団にくるまって暖まろう」と提案してきて。
私はその言葉に頷きながらも何となく照れてしまう。
二人で布団に入ったら……ただ一緒にいる、とかできるのかな?
考えたら耳まで赤くなってしまいそうな気がして、私はフルフルと首を振った。
いや、むしろ――。
逆に何も起こらないように理人の気持ちを逸らしてみたいな、とか思ってしまった。
トレイに、私が用意した朝食を載せて食卓に運んでくれる理人を見ながら、そんな遊び心を胸に抱いて思わず笑みがこぼれた。
***
朝食を済ませてから食器を片した後、二人で寝室に向かう。
まだ電気は復旧していなくて、さっきスマホで確認したら、雪の重さで市内数カ所で電線が断線してしまったらしくて。
「こんなの初めてだね」
理人も私もここで育った。この町での暮らしも十年以上になるけれど、ここまでの大雪は記憶にある中では初体験。
背後からギュッと私を抱きしめてくれる理人に、溜め息混じりにそうつぶやいたら、「そうだね」と耳元に吐息がかかる。
当然のように胸に伸びてくる手をやんわりかわすと、私は声の調子を変えて理人に語りかけた。
「ね、理人。しりとりしない?」
テレビも見られないし。
そう付け加えて、私を抱きしめる理人の手をギュッと握ったら、「しりとり? したいの?」と返ってきて。
「うん、子供の頃に、学校に行きながら二人でよくしたじゃない? 久しぶりにやってみたいなぁって」
ダメ?と背後を振り返って上目遣いで見上げたら、理人は「ダメじゃないよ?」と返してくれた。
うん、理人はやっぱり私に甘い。
きっと私のわざとらしい演技――上目遣い――なんてお見通しのくせに、そんな私に抗えないのもまた理人だから。
「じゃあ、私から行くね。昨夜から大雪のニュースで持ちきりだったから……大雪!と見せかけて……ニュースからスタートね」
言って、悪戯っぽくフフッと笑ったら、理人が一瞬驚いたように瞳を見開いてから、うっとりしたように目を眇めた。
「……好き」
次いで、いつもの調子で甘くそんな言葉を囁いてくるものだから、一瞬口説かれているのかと思ったんだけど。
あ、ニュースのス、からの繋がりだ。
私はハッとして「き、き……」と心の中で復唱する。
「あ、キャビア」
塩辛くてそんなに好きじゃないけれど、なんとなくあの艶々した見た目が綺麗で好き。バケットに乗せたりして食べると少し贅沢な気分になれる不思議な食材。
我が家の暖房設備は、床暖房と、電気ストーブ、それからエアコンのみ。
石油ストーブとか、そういうのがないから電気が落ちたらアウトだ。
理人は私の頬にチュッと口付けると、「葵咲、温かいうちにごはん、食べてしまおうか。食べ終わったら二人で布団にくるまって暖まろう」と提案してきて。
私はその言葉に頷きながらも何となく照れてしまう。
二人で布団に入ったら……ただ一緒にいる、とかできるのかな?
考えたら耳まで赤くなってしまいそうな気がして、私はフルフルと首を振った。
いや、むしろ――。
逆に何も起こらないように理人の気持ちを逸らしてみたいな、とか思ってしまった。
トレイに、私が用意した朝食を載せて食卓に運んでくれる理人を見ながら、そんな遊び心を胸に抱いて思わず笑みがこぼれた。
***
朝食を済ませてから食器を片した後、二人で寝室に向かう。
まだ電気は復旧していなくて、さっきスマホで確認したら、雪の重さで市内数カ所で電線が断線してしまったらしくて。
「こんなの初めてだね」
理人も私もここで育った。この町での暮らしも十年以上になるけれど、ここまでの大雪は記憶にある中では初体験。
背後からギュッと私を抱きしめてくれる理人に、溜め息混じりにそうつぶやいたら、「そうだね」と耳元に吐息がかかる。
当然のように胸に伸びてくる手をやんわりかわすと、私は声の調子を変えて理人に語りかけた。
「ね、理人。しりとりしない?」
テレビも見られないし。
そう付け加えて、私を抱きしめる理人の手をギュッと握ったら、「しりとり? したいの?」と返ってきて。
「うん、子供の頃に、学校に行きながら二人でよくしたじゃない? 久しぶりにやってみたいなぁって」
ダメ?と背後を振り返って上目遣いで見上げたら、理人は「ダメじゃないよ?」と返してくれた。
うん、理人はやっぱり私に甘い。
きっと私のわざとらしい演技――上目遣い――なんてお見通しのくせに、そんな私に抗えないのもまた理人だから。
「じゃあ、私から行くね。昨夜から大雪のニュースで持ちきりだったから……大雪!と見せかけて……ニュースからスタートね」
言って、悪戯っぽくフフッと笑ったら、理人が一瞬驚いたように瞳を見開いてから、うっとりしたように目を眇めた。
「……好き」
次いで、いつもの調子で甘くそんな言葉を囁いてくるものだから、一瞬口説かれているのかと思ったんだけど。
あ、ニュースのス、からの繋がりだ。
私はハッとして「き、き……」と心の中で復唱する。
「あ、キャビア」
塩辛くてそんなに好きじゃないけれど、なんとなくあの艶々した見た目が綺麗で好き。バケットに乗せたりして食べると少し贅沢な気分になれる不思議な食材。
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