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■僕惚れ②『温泉へ行こう!』

気だるい身体1

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 お風呂の中でほんの少しまどろんでから、私は理人りひとに支えられながら何とかお風呂から上がる。

 身体中が鉛のように重くて、一刻も早くベッドに倒れこんでしまいたいという衝動にかられる。

葵咲きさきくさないうちに」

 そう理人に声を掛けられて、指輪を薬指にめてもらう。

「ごめんね、無理させすぎたね」
 言って、彼が私の身体を優しく拭いてくれる。

 着替えだけは恥ずかしさも手伝って自力で頑張れた。残念ながら借りていた浴衣は着られそうになかったので困っていたら、理人が自分の荷物の中からTシャツを一枚貸してくれた。
 理人の服は私にはダボダボで、Tシャツ一枚で太ももの半ばの辺りまでカバーできてしまう。

 まるでミニのワンピースみたい。
 鏡に映った自分の姿を見て、ぼんやりとそんな風に思う。

「そういうのも、何かいいね」
 彼のTシャツを着た私を見て、理人が微笑む。

「座って?」
 そのまま、理人に浴場傍に置かれた丸椅子に座るように促されて、髪の毛にドライヤーを当てられる。
 熱風を当てながら理人が髪の毛にやさしく触れるたび、その柔らかな触れ方にうっとりした。

「眠い?」
 何となくうつらうつらと舟をこぎ始めたところで、彼がそう問いかけてくる。
「ん……」
 何とかうなずきながらそう意思表示すると、理人が仕上げに、と髪の毛をくしけずってから優しく抱き上げてくれた。

「ゆっくりお休み」
 ベッドに寝かされて、布団を掛けてもらう頃には、私は完全に夢の中だった。

 結局あれっきり、理人は私に何もしてこなかったみたいで――。
 目が覚めると、私は理人に後ろから抱きしめられるような格好で眠っていた。
 少し身じろいで理人と向かい合うように身体を動かしてみても、彼は目覚めない。

 目の前に、理人の見慣れない無防備な寝顔があって、思いのほか睫毛まつげが長いな、と気がついた私はドキドキしてしまう。
 ずっと彼の寝姿を見ていたいような気持ちもしたけれど、心臓がうるさくて息が苦しいので断念する。

 理人に注意を払いながらそっと身体を起こすと、私はこっそりベッドを抜け出した。

 時計を見ると午前六時半過ぎ。

 夜は何時ぐらいまで起きていたのか分からないけれど、疲れはすっかり取れていて快調だった。

 昨夜は理人に色々としてもらって眠りに落ちた覚えがある。
 ばっちり覚醒かくせいした頭で思い起こすと、何だかとっても恥ずかしくなってきた。




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